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    ランニングに関するコラムやイベントの特集記事を掲載します。
    ドクター六花のランニング賛歌

    (45)山を走るマナー、トレイルランの心得

    • 雄大な富士山に見守られながら駆ける「富士忍野高原トレイルレース」
      雄大な富士山に見守られながら駆ける「富士忍野高原トレイルレース」

     「山を走る」トレイルランとは、北米やヨーロッパで昔から盛んに行われてきた伝統的なスポーツです。

     日本での歴史はまだ浅く、僕が山を走り始めた2003年当時、“トレイルラン”と()う言葉は日本国内ではほとんど知られておりませんでした。

     当時は競技人口も少なく、「山を走る」といえばきわめて特殊で過酷なスポーツと思われたりもしたものでした。

     山を走り始めて4年()った2007年、僕は「富士山麓トレイルラン」と云うレースをプロデューサーとして立ち上げました。その時点でもトレイルランはまだまだ黎明(れいめい)期で、国内で開催されていたトレイルレースは(わず)か30大会ほどであったと記憶しています。

     2010年頃からトレイルランに熱中するランナーが増え始め、現在トレイルランを愛好する日本人は20~30万人にも及び、300を超えるトレイルレースが国内で開催されています。

     マイナー競技がメジャー化する過程においては、様々な問題や軋轢(あつれき)が生じることがあるのですが、トレイルランは今まさに様々な問題に直面しています。トレイルランナーとして山を走る際のマナーについて、今一度キチンと確認しておく必要があるでしょう。

    登山、ハイキングで有名な山は走らない

     山に来るヒトのほとんどは、「走る」のではなく山を歩きます。トレイルラン以前に、山には自然を愛する多くのハイカーがたくさんいます。山における新参者であるトレイルランナーが、ハイカーの皆さんの山を歩く(よろこ)びを妨げることは決してあってはなりません。そのためには登山、ハイキングで有名な山を走ることは慎まなくてはなりません。

    • 富士山のまわりをグルリと1周走るウルトラトレイル・マウントフジ
      富士山のまわりをグルリと1周走るウルトラトレイル・マウントフジ
    • 白馬国際トレイルラン。ランナーたちとにっこり
      白馬国際トレイルラン。ランナーたちとにっこり

     日本は国土の70%以上が山であり、登山者のほとんど居ない、走るのに絶好の山はいくらでもあります。そう云った場所を見つけだすのもトレイルランの醍醐(だいご)味ではないでしょうか。

     トレイルランの最中にハイカーに遭遇した際は、走るのをやめ声を掛けてから、すれ違ったり、追い越したりしましょう。また10人以上の集団で走る行為も、ハイカーには脅威を与えてしまうので十分に注意する必要があります。

    登山道からはみ出したり、植物を踏みつけたりしない

     ヒトが山に入ると云う行為は、本来の自然を損ねてしまう可能性があることを十分に認識する必要があります。「歩く」ことと「走る」ことで、環境に与えるインパクトに差があるとは思いませんが、勢い余って登山道からはみ出したり、植物を手折ったり踏みつけたりする行為は環境破壊です。トレイルランナーはハイカーよりスピードがある分、視野が狭くなっており、十分に注意する必要があるでしょう。

    • 富士山麓でトレイルランのコースを整備
      富士山麓でトレイルランのコースを整備
    • 福井・若狭路トレイルランでも、しっかりコースを整える
      福井・若狭路トレイルランでも、しっかりコースを整える

     トレイルの複線化や拡幅と云う問題があります。脆弱(せいじゃく)な土壌の登山道では、たくさんのヒトが歩く(走る)ことにより、踏圧により登山道が掘れてしまいます。えぐれてしまった登山道は歩きにくく、雨水などがたまると今度はその場所を避けて歩く(走る)ことにより別の場所に新しいトレイルが出来てしまいます。

     こういった行為が積み重なることにより、登山道が(ひろ)がってしまえば、自然の森はそれだけ損傷を受けるのです。

     登山道とは貴重な自然のなかで、入ることを許された限られた場所であり、そこをはみ出したり拡げたりすることは決してあってはならない行為なのです。

    許認可手続きをとらないゲリラ的なレース開催はダメ

     登山道は自然を愛するヒト達のものなのですが、それとは別に管理者が存在します。国立公園、国定公園、国有林、県有林、財産区、私有地など、さまざまな管理者(所有者)が自然と安全の管理を行っています。

     トレイルレースやイベントを開催する際の注意ですが、使用するトレイルの管理者(所有者)に許可をとる必要があります。許認可手続きをとらないで、ゲリラ的に開催されているトレイルレースもあると聞きますが、こういった違法行為がはびこると、トレイルランそのものが一切排除されてしまう危機があります。

    • 青木ヶ原樹海の中を清掃中
      青木ヶ原樹海の中を清掃中
    • 荒れ果てた登山道。急斜面の作業は大変(霜山で)
      荒れ果てた登山道。急斜面の作業は大変(霜山で)

     トレイルランナーが増えることで、いくつかの問題が生じてきていることは否めませんが、トレイルランのおかげで山がきれいになっているのも事実です。

     ウルトラトレイル・マウントフジが開催されている登山道は、この3年間で見違えるほどきれいになりました。

     30年以上前に捨てられたゴミや、人為的に誰かが運び込んだ産業廃棄物などがたくさんあったのですが、レースに参加する選手やスタッフ、そしてボランティアが懸命に拾いました。荒れ果てた登山道の整備もたくさん行いました。

    トレイルの整備・清掃…「山がきれいになった」と言ってもらおう

    • ウルトラトレイル・マウントフジのトレイル清掃で30年分のゴミを拾いました
      ウルトラトレイル・マウントフジのトレイル清掃で30年分のゴミを拾いました

     僕自身は毎夏、レースで使わせてもらっているトレイルの清掃イベントを開催しています。集まってくれたボランティアの皆さんとたくさんのゴミを拾い、微力ではありますが、少しずつ山や森がきれいになってきました。

     山には山のルールがあります。法律には書かれていないけど守らなければならないマナーが存在します。山のルールを遵守(じゅんしゅ)して、ハイカー、自然愛好家、林業など、山に関わる皆さんとの共通の財産である自然を、大切にしていかなければと強く思います。

     「トレイルランナーがこの山を走るようになって、山が以前よりきれいになった」

     こう言ってもらえるように頑張るのは、体力があるトレイルランナーの務めではないでしょうか。

    2015年03月13日 08時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    
    プロフィル
    福田六花 (ふくだ・りっか
     1965年2月24日、東京都生まれ。医師、ミュージシャン、ランナー。大学卒業後、外科医として勤務するうち、ストレスと暴飲暴食から93キロまで体重を増やす。31歳でランニングに夢中になり、30キロ以上のダイエットに成功。ランニングライフを極めるため、2002年に富士山麓の山梨県富士河口湖町に移住。現在は介護老人保健施設「はまなす」施設長(同町)をつとめ、マラソン、トレイルレースなど年間30レースに出場。レースのプロデュースや専門誌での連載などランニングの普及に力を注ぐ。フルマラソンのベストタイムは3時間06分01秒(2014別府大分マラソン)。 オフィシャルサイトはこちら。
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