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    海洋が生み出す鉱物資源

    高知大総合研究センター・臼井朗特任教授

    • 高知大総合研究センター・臼井朗特任教授
      高知大総合研究センター・臼井朗特任教授

     海底のレアメタル(希少金属)の現状と課題をお伝えしたい。

     海底の鉱山を利用するというアイデアは、米国とロシアが50年前に戦略的に出してきたものだ。しかし、その構想は未だに実現していない。今までにどの国も、どの企業も水深が1000メートルを超える深海の海底で、海底の金属を商業的に採掘した例はない。

    • 図1
      図1

     まず、3つの事について話をしたい。一つ目は陸の資源の現状についてだ。陸上の資源が枯渇するといわれている中、海洋の資源に期待が集まってきているが、国内外の政府、民間企業の海洋資源の開発の取り組みはどうなっているのか。2番目は、海洋には実際にどういう資源があるのか。3番目は今後の開発をどう考えるか。このまま海洋開発にいくのかという点だ(図1)

     本当に陸の資源がなくなっているのか。私たちは金属を使って捨てているだけで、金属そのものがなくなるわけではない。ただ、質の良い鉱山とか鉱石がなくなった。掘れる鉱石が減っている。継続的な資源供給が必須で、フロンティアの拡大が必要になってくる。その中で一番わかりやすく、より身近なのは海洋だ。

     例えば、銅が約0・3%含まれているものも陸上では銅鉱石といっているが、海洋には銅が1%含まれる鉱石が大量にあるらしいことがわかってきた。特に日本の周辺には豊富に資源が眠っているということもいわれている。

     ただ、本当に採掘ができるほどのものなのかという疑問もある。一種のバブルではないかという危惧もある。継続的に実態調査と科学研究を続けるべきではないかというのが、今回の講演のメッセージだ。海洋資源は、陸の資源よりも優れているのかどうかはまだ断言できない。

     陸の資源が予想外に使われ枯渇してきていること、掘削や潜水の技術が向上してきたことで、急に海が見直されてきた。そして、国連のもとで、海底の鉱物資源の鉱業規則がきまり、規則が満たされれば鉱区が認められるようになった。いろんな国が鉱区を申請して認められている。

     日本もハワイの東側の7万5000平方キロ・メートルと、南鳥島の排他的経済水域(EEZ)の外側の二つの鉱区が認められている。また日本は、4年前に大陸棚の延伸が認められ、日本の経済水域が広がった。資源調査を中心とした海底の探査を進めなければならないというムードが高まってきた。

     それでは、海底にはどんな資源があるのかについて話をしたい。

    • 図2
      図2

     ある程度の高い濃度と、トータルの埋蔵量、大きく環境を変えずに採掘できる可能性があることが海底資源の要件となる。水深200メートルより深い未開発資源で、こうした要件にあてはまるものとして、鉄やマンガンの塊といった堆積起源のものと、硫黄を主成分とする火山起源の硫化物がある。(図2)

     火山起源の硫化物には金や銀や銅が入っている。陸上の鉱山の多くは火山起源だ。これに匹敵するものが、陸の延長として海底にみられる。堆積起源の酸化物は、コバルト、ニッケル、白金、レアアースなどだ。それほど濃度が高くないが、規模としては非常に大きい。

    • 図3
      図3

     どのように分布しているかはだいたいわかっている。海底火山があるところ、プレート境界で激しい地質活動があるところの変動帯にそって、金や銀、銅を生み出す熱水起源の硫化物が存在する。堆積起源の酸化物は、変動しない海底に分布している。

     日本の周辺海域は、プレートが衝突し、地震を発生させ、火山が起きるなど激しく変動している。また、1億年を超える古くて安定した海底もある。この両方の海底があるのは世界的にも珍しい。そこにいろんな鉱物が分布していることがわかっている。

     潜水調査船で海底を観察した映像には、海底に丸いまりものような黒いマンガンのかたまりが分布している様子が見られた。2キロ、3キロ、10キロとこうした景色が広がっている。これが標準の海底の様子だ。(図3)

    • 図4
      図4

     海底鉱物の資源開発が、陸の資源開発と異なる点は、国際法のもとで開発しなければならないので、国として、国連として、人類としてプラスにならないものはだめだということがある。もう一つは、陸上の鉱山は「化石」だが、海底の鉱床は、深海の極限環境でいまも生成中であるということだ。(図4)

     陸上資源の枯渇が必至である中で、海底の資源を利用していくために必要なことは、極限環境の深海で資源を採掘する新しい技術開発と、深海への理解だ。

    • 図5
      図5

     陸上の資源開発は、少なくとも20~30年のスケールで計画が立てられる。開発の経験のない海底資源を開発するとなれば、それ以上のオーダーで検討しなければならない。様々な基礎研究と、海底の掘削や探査などの技術分野の開発、これが満たされたとしても開発を巡る環境影響も重要な問題と考えていかなければならない。この3者が一体となって研究を進めるべきだと思う。(図5)

     私たち研究者は、政策判断する人たちに正しい知見を提供する責任がある。また、若い人材養成、実態把握などの時間が必要だと思う。将来この分野に人が来ることを願っている。

    臼井朗(うすい・あきら)
     1973年東京大学工学部卒業。1979年東大工学系研究科博士課程修了。カリフォルニア大学スクリプス海洋研究所客員研究員、産業技術総合研究所海洋資源環境研究部門グループリーダー、高知大学理学部教授等を経て、2012年から現職。

     (※図は臼井特任教授提供)

    【質疑応答】

      日本の海底資源は有望というニュースを見るが、これについてどう思うか。

      期待が過大に膨らんでいるというのが正しい見方だと思う。もう少し細く長く地に足の付いた進め方をしないと、急激にしぼんでしまうのではないか。

      マンガン団塊はなぜ丸いのか。

     団塊は、マンガン団塊に特有な形状ではない。金平糖がそうだし、雪の結晶もそうだが、小さい核があって制約なくどこからでもモノが集まる環境ではそのような形になる。一番自然で、安定に成長する形が球状なので。

     ◇知の拠点セミナー 全国の国立大学が共同で利用する研究拠点の成果を一般向けに紹介する連続講座。毎月1回、東京・品川で開いている。日程や参加申し込みは、セミナーのホームページへ。

    2014年09月05日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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