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    「地球深部の理解はどこまで進んでいるのか」

    愛媛大地球深部ダイナミクス研究センター 土屋卓久教授

     地震や火山活動などの地殻変動が起きるたびに、「地球は生きている」と言われる。今年は日本の火山活動が活発で、最近では九州で噴火があった。火山活動は災害をもたらす一方で、箱根の温泉のように私たちの役に立つこともある。

     日本は最も地殻変動と密接に暮らしている国の一つだが、なぜ地殻変動が活発なのか。世界の地震の分布を見ると、均等に起こっていないことが分かる。震源の9割は帯状の部分に集中している。これは地球を覆う岩盤のプレート同士が接したり、プレートが新しく生み出されたりする所だ。日本はそのような場所に位置しているので、日本に住む限り地震や火山からは逃れられない。プレートは水平方向に動くため、衝突する場所では力が蓄積し、ひずみがたまって地震が起きる。日本周辺では太平洋、ユーラシアなど四つのプレートがぶつかりあうため、地震や火山がよく起きる。

     100年前、ウェゲナーが大陸移動説を唱えた。当初は単なる空想と思われていたが、1960年頃、海の底が拡大し、新たな陸地が誕生している部分が見つかった。そうして「プレートテクトニクス」という概念が認められた。精密に観測すると、太平洋プレートは1年に5センチ・メートルほど東から西に動き、日本列島に衝突している。

     沈み込んだプレートはどこまでも深く沈むのか。途中で浮き上がるのか。あるいはある深さでとどまるのか。深いところでどうなっているのか。地下は直接見えないため、よく分かっていない。(図1)

     プレートの水平運動は、下のマントルの大規模な対流運動に引きずられて起きているというのが一般的な考え方になっている。マントルはどろどろに溶けた物質と思っている人も多いが、マントルは岩石の固体だ。岩石も対流運動をする。マントルの対流は非常にゆっくりで、1年あたり数センチ動く。

    • 図1
      図1
    • 図2
      図2

     こうした地球の深部がどうなっているのかについて話したい。中心まで半径約6400キロ・メートルの地球の内部構造は、同心円のような層構造になっている。(図2)

     表層の地殻は深さ数十キロで、その下にマントルと呼ばれる部分が2900キロ続き、上部と下部に分かれている。地殻もマントルも岩石でできている。さらにその下には、岩石より重い物が沈み、金属の鉄のかたまりの核がある。核も外核、内核に分かれている。中心までいくと、圧力は365万気圧、温度は5000~6000度に達する。

     こうした情報は地震波を解析することで得られる。地震が起きると縦波と横波が発生して地球を伝わり、発生から1時間で地球の裏側まで達する。表面だけでなく、内部も伝わり、マントルや核を通る。地震計に記録された波のデータを解析すると、マントルと核の境目がどこにあるのかなどが分かってくる。こういう方法で、100年前から60年前には地球の内部構造がだいたい分かっていた。

    • 図3
      図3

     深さとともに地震波の速度がどう変化するかを示すグラフを調べてみると、地震波は一定のスピードではないことが分かる。(図3)

     圧力がかかると物質は硬くなるが、硬いものほど波が伝わりやすい一方で、軟らかいと伝わりにくい。深くなるに従って速度が上がるが、ある場所で途端に速度が落ち、それからまた上がる。この地震の波の速度が突然変化する場所が、上部マントルと下部マントルの境界、外核と内核の境界だ。また、横波が外核に来ると伝わらなくなるため、外核は固体ではなく液体ということも分かる。

     だが、地震波を使って地球の内部構造を調べるのは、聴診器をあてて体の中を調べることと同じで、直接見ることが出来ないので限定的にしかわからない。たまに火山が噴火すると上部マントルの物質が採取できることがあるが、それより下にあるものは採取できない。物質を直接見ることができない以上、どうしても研究の進展は遅くなってしまう。

     地球内部は非常に温度が高く圧力が高いので、掘ることは難しい。ではどうやって、そのような状況下の物質を研究するか。二つの方法があり、一つは高温高圧実験と呼ばれる方法だ。硬い物質を押しつけあって、物質の間に高い圧力をかける。愛媛大には油圧のプレス装置の世界最大のものがあり、下部マントル最上部まで実現できる。

     さらに実験的な方法と並んで重要なのが理論計算で、コンピューターの中で地球内部を再現する。物質の基本原理をきちんと考え、原子と原子の結合の仕方を考慮して計算すれば、高精度で予測できる。実験と同程度、あるいはそれ以上に物質の性質を調べることができるようになったが、大がかりな計算が必要で、スーパーコンピューターが欠かせない。

     下部マントルの体積は地球全体の半分以上を占め、地球は下部マントルで出来ていると言っても良い。下部マントルがどういう物質でできているか、一つの手がかりは地震波の観測モデルだ。色々な物質を下部マントルと同じ圧力温度に上げたとき、波の速度がどうなるかを調べる。

    • 図4
      図4

     下部マントルはほぼ2種類の鉱物から構成されることが既に分かっているが、その組成が上部マントルと同じなのかどうかは、長く不明だった。2種類の鉱物は地表には存在しない物質で、ブリッジマナイトと呼ばれる鉱物と、フェロペリクレースという鉱物だ。私たちの研究グループが計算した結果、上部マントルと同じ化学組成の時、観測モデルを精度良く再現できた。この結果から、上部と下部のマントルは一体となって対流していることがわかる。一緒にぐるぐると動いて混合すれば組成が同じになるからだ。沈み込んだプレートは下部マントルまで落ちる可能性が高いということが、この研究結果から言える。(図4)

     次は、マントルと核の境界の謎に迫る。上部マントルの物質はかんらん石で、これが下部マントルに行くとブリッジマナイトとフェロペリクレースになる。マントルと核の境界は、岩石と鉄の境界だから私たちがイメージできない世界だ。深さ2900キロのマントル最深部の領域は不思議な性質があり、地震波の速度が場所によって速かったり遅かったりして、不均一性であることが分かってきた。

    • 図5
      図5

     これをよく見てみると、特に環太平洋の地下は地震の波が平均より速い。私たちがコンピューター上で、下部マントル最深部と同様に、ブリッジマナイトに100万気圧以上まで圧力をかけると、あるところで形を突然変えて、新たな構造をとることを見つけた。(図5)

     これは実験でも確かめられ、ブリッジマナイトが別のポスト・ペロブスカイトという物質に変わったのだ。こうした現象が速度の不均一性にかかわっていると考えられる。

     さらに深い外核の話をする。太陽は電磁波や放射線を出しているが、地球は幸い、磁場によって守られている。地球は太陽系の中ではけた外れに強い磁場を持っている。外核の金属の液体が対流することによって、電磁誘導の効果が起き、この磁場の強さが維持されている。外核は鉄ではあるものの、純粋な鉄ではなく、軽い元素を含んでいることが、以前から指摘されていた。

     ただ、どんな元素がどのくらい含まれているかは分からなかった。私たちが、宇宙に豊富に存在する酸素や硫黄、炭素が混ざったと仮定して計算した結果、最もうまく地震波の速度を再現できたのは酸素だった。通常、鉄の液体に酸素は溶けない。ただ、圧力を加えると溶解度は上昇する。地球誕生当時、マグマの海の底は圧力が高く、鉄に酸素が溶ける状況になっていたと考えられる。

     今後、さらに何を研究するのか。外核の次は内核だ。地震波を解析すると、赤道方向に伝わる波より、南北方向に伝わる波のほうが速い。さらに内核には、不均一な層構造があると考えられている。いずれも、理由はまだわかっていない。何とかこの謎に迫っていきたい。

    土屋卓久(つちや・たく)
     1995年大阪大理学部卒。2000年同大大学院理学研究科博士後期課程修了。ミネソタ大博士研究員などを経て、09年4月から現職。

    【質疑応答】

      内核と外核の境界はどうなっているのか

      外核は溶けている状態で、内核は凍った状態に変わる。水が氷に変わるようなことが液体の鉄で起きている。圧力がかかることによって起こる。

      海を掘削すれば、マントルまでたどり着くことはできないか

      現在、日本も含めた国際的なチームで行っている。海は大陸に比べて地殻が薄いので、到達できる可能性があるとみられているが、費用をどうするかが問題だ。実現するのはなかなか難しい。宇宙に行ける人類も、10キロ・メートルの穴を掘るのは難しいのというのが現状だ。

     

     ◇知の拠点セミナー 全国の国立大学が共同で利用する研究拠点の成果を一般向けに紹介する連続講座。毎月1回、東京・品川で開いている。日程や参加申し込みは、セミナーのホームページへ。

    2015年11月12日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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