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    ITジャーナリスト三上洋さんが、サイバー犯罪から身を守る術や情報流出対策などを解説します。

    高齢者相談の2位に「アダルト情報サイト」の理由

     消費者白書によると、高齢者のアダルト情報サイト・インターネット通販などにおけるトラブル相談が大きく増えた。背景には「恥ずかしくて相談できない」「紛らわしい広告が多い」などの問題がある。(ITジャーナリスト・三上洋)

    65歳以上の消費者相談で「アダルト情報サイト」が第2位に

    • 高齢者に関する相談が多い商品・サービス(2015年版消費者白書)
      高齢者に関する相談が多い商品・サービス(2015年版消費者白書)

     2016年版の消費者白書が閣議決定された。2015年度における国民全体の消費者トラブルの状況がわかる白書だが、今年は高齢者のトラブル、特にインターネット関連が大きくクローズアップされている。

     その象徴的なデータが左の表だ。65歳以上の高齢者に関する相談の商品・サービスをまとめたものだが。2015年度はなんと「アダルト情報サイト」が第2位に入ってしまった。第5位だった2013年度に比べて約4000件も増加して1万2679件となっている。いかに高齢者のアダルト情報サイト相談が多いかわかる。

     また第3位には「デジタルコンテンツ(全般)」、第4位にも「光ファイバー」が入っており、インターネット関連のトラブルが高齢者に関する相談の上位を占めている。

     この他にも65歳以上の高齢者とネット関連の相談が増えているデータがある。たとえば購入方法ごとに分類した相談件数のデータでは、65歳以上で「インターネット通販」の相談件数が増えている。2015年の「高齢者の相談に占めるインターネット通販の割合」は13.4%で、2011年の4.7%から大きく増えた。以前は高齢者の相談は「訪問販売」や「電話勧誘販売」が多かったが、いずれも4年前と比べると減少しており、その代わりに「インターネット通販」の相談が増えている。

    • 販売購入形態別相談割合の推移。65歳以上の高齢者でも「インターネット通販」が増えている
      販売購入形態別相談割合の推移。65歳以上の高齢者でも「インターネット通販」が増えている

     また、消費者白書ではSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をきっかけとしたトラブルもまとめている。SNSの普及とともに相談件数は右肩上がりだが、その中でも高齢者に関する相談が急増している。2010年度と比べると60歳代は約13倍、70歳以上は約23倍になっており、SNSをきっかけとした高齢者のトラブル相談が増えていることがわかる(詳しくは後述)。

    背景には「免疫なし」「子供などに相談できない」「問題のある広告」

     このように65歳以上の高齢者の「アダルト情報サイト」「インターネット通販」「SNSきっかけの被害」など、ネット関連の消費者トラブルが増えていることがわかった。筆者が考えるに、背景には大きく四つのポイントがある。

    ★高齢者のネットトラブル増加の背景

    1:高齢者におけるネット利用者の増大とスマートフォン普及

     まずは当然ながら高齢者のネット利用者が増えていることがあるだろう。下の画像は「年齢層別インターネットの利用状況(総務省『通信利用動向調査』)」で、60代・70代ともに4年前よりも10%以上増えている。特にここ数年はスマートフォン利用者が増えており、ファーストインターネット(初めてネットを使う体験)がスマートフォンだという高齢者もいる。

    • 年齢層別インターネット利用状況(総務省「通信利用動向調査」を基にした消費者白書のグラフ)
      年齢層別インターネット利用状況(総務省「通信利用動向調査」を基にした消費者白書のグラフ)

    2:操作に不慣れで、ネット上の悪意に免疫がない

     ネットに慣れていないことや、スマートフォンの小さな画面での操作に慣れていないことも原因だ。小さな画面での操作に慣れていないため、誤って広告を押してしまうこともあるだろう。またアダルト情報サイトでは、突然表示される高額な架空請求に驚いてしまう高齢者からの相談もある。以前の記事にもまとめたが、ワンクリック詐欺や架空請求詐欺の存在を知らない=ネット上の悪意に免疫がないことが一つの原因になっている(参考記事:「免疫」ない? 女性・高齢者のアダルトサイト相談が増加:サイバー護身術

    3:友人や家族に相談できない

     65歳以上の人にとって「アダルト詐欺サイトに引っかかった」ことが恥ずかしくて、子供や孫などの家族に言えない場合が多い。「いい年をして」などと言われるのがイヤで、仕方なく払ってしまうこともあると想像できる。詐欺業者はそこにつけこんで脅しをかけてくる。

    4:成人向け広告の横行と、高齢者の情報リテラシー

     広告の問題もある。SNSでは広告がほぼ無審査のために、中には詐欺まがいの広告もある。また無料ブログやまとめサイト等ではアダルト広告が多く、中にはワンクリック詐欺・架空請求詐欺の広告も存在している。これらの広告を信じてしまい、間違ってクリックすることからネットトラブルにつながることも多いだろう。

     前述したようにSNSがきっかけの高齢者ネットトラブルも増えているが、そこでも広告の問題がありそうだ。消費者白書によれば「SNSからアダルト情報サイトへつながり会員登録されてしまった」「SNSに表示された広告をきっかけにダイエットサプリメントを試しに1回注文したところ、定期購入となっていた」「SNSで副業サイトの広告を見付け登録したが、報酬を受け取るためにポイント購入が必要と料金を請求された」と、SNSはきっかけの一つに過ぎない。SNSに出ている広告やリンクが原因なのだ。「どれが広告なのか」「広告は信じられるのか」「このリンクはクリックしていいのか?」といった判断を高齢者に求めるのは難しい。情報リテラシーの問題でもある。

    高齢者向けのネット教育と「188」の積極利用を

    • 2015年7月から始まっている消費者ホットライン「188」。「イヤヤ」と覚えよう
      2015年7月から始まっている消費者ホットライン「188」。「イヤヤ」と覚えよう

     これらの状況をふまえて、消費者白書では地域の消費者相談の体制を強化すること、地域ごとに警察や病院と連携してトラブルに巻き込まれている高齢者を早く発見するしくみ作りが必要だとまとめている。

     高齢者、及び高齢者がいる家庭向けのアドバイスとしては、まずは「188」を知ってもらうことがある。「188」は消費生活相談窓口の総合案内電話で、トラブルで困ったときは「188」に電話をすれば、相談先を教えてくれる。「イヤヤ(188)」と覚えて、いざという時に利用したい。

     次に必要なのは、高齢者向けのネット教育だろう。初めてスマートフォンやパソコンを使う人に向けて、情報リテラシー教育が必要になる。各携帯電話会社では「スマートフォン教室」などを行っているほか、自治体によってはネットの安全利用講座を実施しているところもある。使い方を教えるだけでなく「ネット上には悪意のあるサイトが多いこと」「信用できない広告があること」を理解してもらうことが大切だ。

     もう一つ、家族のサポートも欠かせない。パソコンやスマートフォンを初めて使う高齢者にはトラブルがあったらすぐ「188」に相談することを教え、困っている様子がないかチェックすることも必要だ。高齢者の家族がいる人は、ネットトラブルについて一度話し合ってほしい。

    参考記事

    消費者白書:消費者庁

    広告表示したら感染…ソフト最新化を急げ:サイバー護身術

    「免疫」ない? 女性・高齢者のアダルトサイト相談が増加:サイバー護身術

    2016年05月27日 17時38分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    三上洋   (みかみ・よう
     セキュリティ、ネット活用、スマートフォンが専門のITジャーナリスト。最先端のIT事情をわかりやすく解き明かす筆力には定評がある。テレビ、週刊誌などで、ネット事件やケータイ関連の事件についての解説やコメントを求められることも多い
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