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    ITジャーナリスト三上洋さんが、サイバー犯罪から身を守る術や情報流出対策などを解説します。

    ネット詐欺 狙われるシニア ~アダルト関係など相談急増~

     ネットを積極的に使う「アクティブシニア」が、ネット詐欺の被害に遭っている。高齢者のうち60歳代では、アダルト詐欺や光ファイバーなどのプロバイダー契約のトラブルが目立つ。家族が高齢者の口座やクレジットカード明細をチェックする必要がある。(ITジャーナリスト・三上洋)

    ネットを積極活用するシニアが詐欺被害に

    • 60歳代の商品・役務別の相談件数。左が2010年度、右が2015年度で、ネット関連の相談が大幅に増えている(国民生活センターによる)
      60歳代の商品・役務別の相談件数。左が2010年度、右が2015年度で、ネット関連の相談が大幅に増えている(国民生活センターによる)

     左の表は、全国の消費生活センターによせられた「60歳代」の相談を、商品別にまとめたものだ。2015年度の第1位は、なんと「アダルト情報サイト」で約1万4千件。5年前は約7千件だったから約2倍に増えている。

     その他にも第2位に「デジタルコンテンツ(全般)」、第4位に「光ファイバー」、第6位に「他のデジタルコンテンツ」、第8位に「携帯電話サービス」、第10位に「インターネット接続回線」が入っている。ネット関連のトラブルが上位を占めているのだ。5年前にはなかった傾向であり、この5年で一気にネット関連のトラブル相談が増えたことになる。

     これについて国民生活センターが、9月8日に「60歳以上の消費者トラブルの変化と実態-インターネット等も利用するアクティブシニアのトラブルが増加!-」という報告書を発表した。

     それによると、どの年代においてもアダルトサイトなどのデジタルコンテンツ、光ファイバー・携帯電話サービスなどの情報通信関連の相談が増えている。国民生活センターでは「これらの変化の背景には、通信端末やインターネットを使い、積極的に消費活動をしている『アクティブシニア』が増加していることが影響していると考えられます」と分析している。

    • 2015年度の年代別相談件数。団塊の世代が中心の60歳~70歳代で、ネット関連の相談が目立って多い(国民生活センターによる)
      2015年度の年代別相談件数。団塊の世代が中心の60歳~70歳代で、ネット関連の相談が目立って多い(国民生活センターによる)

     アクティブシニアとは、仕事をリタイアした後も、趣味や旅行・スポーツなどで元気に活動する高齢者のこと。ちょうど団塊の世代にあたり、インターネットを活用する人も多い世代だ。平成27年通信利用動向調査によると、60歳代で76.6%、70歳代で53.5%がインターネットを利用しており、60~79歳のインターネット利用は上昇傾向にある。

     これらアクティブシニアがスマートフォンやタブレットで、SNSやウェブサイトを利用する際にトラブルに遭っているのだ。今後はさらに高齢者のネット利用が増えるだろうから、国民生活センターでは「アクティブシニアの消費者トラブルは今後も増加していくことが予想されます」としている。

    「アダルト情報」「携帯電話契約」など深刻な相談が目立つ

    • 70歳代の商品・役務別の相談件数。左が2010年度、右が2015年度で、70歳代でもネット関連の相談が目立つ(国民生活センターによる)
      70歳代の商品・役務別の相談件数。左が2010年度、右が2015年度で、70歳代でもネット関連の相談が目立つ(国民生活センターによる)

     70歳以上でもインターネット関連の相談は増えている。左は70歳代の商品・役務別の相談件数だが、やはり「アダルト情報サイト」「デジタルコンテンツ(全般)」「光ファイバー」が上位に入っている。それに対して80歳代ではネット関連は減り、新聞や健康食品、修理サービス、金融商品など相談が多くなっている。

     今回のデータで注意すべき点がもう一つある。それは支払いにクレジットカードや電子マネー・プリペイドカードを使うトラブルが増えていることだ。クレジットカード利用者が増えていることから、高齢者を(だま)すためにクレジットカードやコンビニで購入できるプリペイドカードなどで決済させるパターンが多くなってきた。自分の親がクレジットカード利用で高額決済をしていないかチェックする必要がありそうだ。

     これら高齢者のネット関連相談の事例を、国民生活センターがまとめているので見てみよう。

    ●事例1:アダルトサイトから料金を請求され、ネット検索した探偵業者と契約したが断りたい

     アダルト詐欺サイトに騙され15万円を請求された。ネットで検索した「消費者相談センター」に相談したところ、「当社に約10万を支払ってもらえれば解決する」と言われた。依頼したところ、コンビニで契約書面を受け取るよう指示された。契約書面によると作業着手前は契約金額の20%、着手後は実稼働分と契約金額の50%を解約料として請求すると書かれている。どうしたらよいか。(60歳代、男性)

    ●事例2:フィーチャーフォンとタブレット端末を契約したが、無料通話ができなくなった。元に戻したい

     スマートフォンでSNSの無料通話サービスを使って、海外にいる娘と頻繁に連絡を取り合っていた。月額料金が高額だと思い、携帯会社の窓口に相談に行ったところ、スマートフォンを解約して、フィーチャーフォンとタブレット端末を契約して使い分ければ料金が安くなると言われてその通りにした。ところが、タブレット端末では以前利用していた SNSの無料通話サービスが使えず、娘と無料通話するという最大の目的が果たせない。事業者に説明を求めたが、説明が理解できず疲れてしまった。元の契約に戻したい。(60歳代、女性)

    ●事例3:インターネットで海外ホテルの予約やキャンセルを何度かしたら、クレジットカードに複数の請求がきてしまった

     インターネットで海外リゾートホテルの予約をした。3日前までのキャンセル料は不要と書いてあったと思う。その後、予約できた飛行機がこれより前の日程だったので、すぐにホテルの予約をキャンセルし、別の日程で同じホテルの予約をした。しかし、後日クレジットカード会社から来た明細書を確認したら、デポジットという名目でホテルから約2万円の請求があったので、このホテルを不審に思い、予約をキャンセルした。最終的には全く別のホテルを予約して利用したが、その後、クレジットカードに3回分(約9万円が2回と約8万円)の請求があるとわかった。英語で書かれていてよくわからないが、ホテルに関する請求だと思う。私はインターネット通販の経験もなく今回が初めてで、電子メールの設定もしていない。どういう理由で請求されているのかわからない。(70歳代、男性)

    ●事例4:知らない間に光回線の契約先が聞いたことのない事業者に変更されていた。元に戻してほしい

     ある日、電話機の調子が悪かったことなどが重なり、相談しようと契約先の通信事業者に電話したところ、通信事業者との光回線の契約が無くなっていたことがわかった。思い起こせば最近、自宅には見覚えのない通信事業者から請求書が届いており、覚えがないのでそのまま放っていたが、もしかしたら自分の知らないところで光回線の契約が変更されてしまったのかもしれない。思いあたるとすれば、数カ月前にどこかの事業者から複数回電話がかかってきて、インターネットに関する勧誘を受けたことだ。そのことが原因で契約が変更されてしまったのであれば元通りの契約に戻したい。どうしたらよいか。(80歳代、男性)

     いずれも深刻な事例だ。事例1はアダルト詐欺サイトがきっかけだが、最近問題になっている「相談詐欺」の被害に遭っている。ネットで検索すると「ワンクリック詐欺のお金を取り戻します・解決します」などと書かれた広告が多数みつかる。これらのほとんどは詐欺、もしくは詐欺的な契約だ。アダルト詐欺サイトからお金を取り戻すことは、現時点では事実上不可能であり、実際には着手金・相談料などという名目でお金を取ることが目的のサイトだ。

     事例2は携帯電話契約のトラブルだ。相談者側の知識の無さを利用し、無理な契約をさせている可能性が高い。

     事例3は相談者側に問題があるかもしれない。海外サイトの決済では英語が必須であり、クレームも英語で出す必要がある。メールの設定もしていない、という人が対処できるものではないだろう。

     事例4は最近問題になっているプロバイダー契約・光契約のトラブルだ。代理店が高齢者の知識の無さ・判断能力の低下を利用し、詐欺的な契約をさせている可能性がある。

    高齢者の銀行口座・クレカ明細をチェックし詐欺被害になっていないか確認

     このように高齢者のネット関連のトラブルは様々なパターンがあり、対策は一筋縄ではいかない。本人がどこまで知識があるのか、判断できるか、周りの家族がチェックできるかということが重要なポイントとなる。

    ●高齢者のネット関連トラブルへの対策(国民生活センターの呼びかけと筆者の注意点をまとめたもの)

    対策1:高額なアダルトサイト請求は無視し、消費生活センターに相談を

     アダルトサイトの「後払いの高額請求」は、詐欺と考えて構わない。身に覚えがあっても払わない・連絡しないこと。「キャンセルのため」と称して連絡させようとするが、絶対に連絡してはダメ。不安な場合は消費者ホットライン「188」で相談しよう。

    対策2:ネット通販は慎重に。契約内容や解約ルールを確認すること。わからない場合はネット通販は利用しない

     通信販売はクーリング・オフ制度がなく、あとでの解約ができないので注意。お試しのつもりが定期購入になっていたり、イメージと違う商品が来たりなどのトラブルもある。契約内容や解約ルールを慎重に確認すること。それができないのであればネット通販は利用しない。

    対策3:家族や地域が見守る

     消費生活センターへは、家族やホームヘルパー、地域包括支援センター等の職員からでも相談することができる。高齢者がトラブルや被害にあっているとわかったら、すぐに最寄りの消費生活センターに相談する。

     高齢の親がいる人は、ネット利用をどのぐらいしているのか確かめたほうがよい。その際に金銭的な被害にあっていないか、クレジットカードを利用しているかなどをチェックすること。特に光ファイバーなどのプロバイダー契約、携帯電話契約、PCサポート契約などに注意しよう。場合によっては自分の親のメールや郵送物、口座の状態、クレジットカードの明細を定期的に確認したほうがいいだろう。

    ●参考記事

    高齢者相談の2位に「アダルト情報サイト」の理由:サイバー護身術

    「免疫」ない? 女性・高齢者のアダルトサイト相談が増加

    60歳以上の消費者トラブルの変化と実態-インターネット等も利用するアクティブシニアのトラブルが増加!-:国民生活センター

    2016年09月23日 17時44分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    三上洋   (みかみ・よう
     セキュリティ、ネット活用、スマートフォンが専門のITジャーナリスト。最先端のIT事情をわかりやすく解き明かす筆力には定評がある。テレビ、週刊誌などで、ネット事件やケータイ関連の事件についての解説やコメントを求められることも多い
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