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    ITジャーナリスト三上洋さんが、サイバー犯罪から身を守る術や情報流出対策などを解説します。

    詐欺被害者を二重にだますネット広告に注意!

     ワンクリック詐欺やアダルト詐欺サイト被害者を、さらにだますネット広告が問題になっている。探偵業者などが「無料相談」「返金可能」と広告を出しているものだ。国民生活センターに相談が多数寄せられている。(ITジャーナリスト・三上洋)

    「ワンクリック詐欺」でGoogle検索すると探偵業者や司法書士事務所の広告

    • Google検索で「ワンクリック詐欺」を検索したときの広告。探偵業者や司法書士事務所の広告が表示される
      Google検索で「ワンクリック詐欺」を検索したときの広告。探偵業者や司法書士事務所の広告が表示される

     画像は、Googleで「ワンクリック詐欺」で検索したときの結果表示だ。三つの広告が先頭に表示されており「無料相談で即日解決」「請求トラブル専門窓口」「消費者相談センター」などと書かれている。詐欺にだまされた人は、焦って電話してしまうかもしれない。

     しかしこの広告、実際は探偵業者や司法書士事務所のもので、国民生活センターとは何の関係もない。「調査料」「契約取り消しの交渉」などしてお金を取る探偵業者や司法書士事務所の広告なのである。

     このうち探偵業者による勧誘について、国民生活センターが注意喚起を出した。「『アダルトサイトとのトラブル解決』をうたう探偵業者にご注意!」として、多数の相談が寄せられているという注意喚起だ。相談の内容は、無料と聞いて電話したところ「アダルトサイト業者の調査」を数万円で依頼することになり、アダルトサイト業者からの返金もない、というもの。

     この問題は「相談詐欺」とも呼ばれており、詐欺の二次被害と言える。以前から問題になっていたが、2014年ごろから相談が急増。国民生活センターのまとめによれば、2015年度には4543件、2016年度はそれを上回るペースで相談が寄せられている(8か月間で4191件)。相談例を見てみよう。

    • 探偵業者のうちアダルト情報サイト関連の相談件数(国民生活センター)
      探偵業者のうちアダルト情報サイト関連の相談件数(国民生活センター)

    トラブル解決をうたう探偵業者に関する相談例

    ●「無料相談」「解決可能」のはずが、有料の企業調査だった

     ネット検索で出てきた「無料相談可能」という窓口に電話で相談したら、「支払いを止められる」「絶対に解決できる」と言われ、また「このままだと会社に嫌がらせがある」「裁判になる」とも言われて不安になり依頼することにした。料金は6万4000円で半額を支払った。4日後にビルの写真2枚と、業者の確認はとれなかったとの報告書が届いた。解決できると言われて契約したのに、説明と違うので返金して欲しい。

    ●「高額な請求がある」「個人情報が流出する」と言われ不安になり、焦って依頼した

     ネットで「消費生活センター」を調べ、電話で問い合せた。「そのままにしておくと信書などで請求が来る」「そのサイトには弁護士がついていて、10万~20万円を請求される」「サイトを閲覧したことでウイルスに感染しているので、個人情報が流出する」などと言われた。依頼料は5万4000円とのことで、焦っていたので依頼することにした。公的な消費生活センターに相談したつもりだったので、依頼料がかかるのはおかしいと思い、調べたら探偵業者であることが分かった。依頼を取り下げることができるか。

    ●「消費生活センターか」と尋ねたところ「公安委員会に届け出している」と言われた

     ネットで「消費者センター」を調べ、電話した。今までの経緯を話したところ「アダルトサイトからの請求には応じないように」「解決するには5万~7万円かかる」と言われた。お金がかかるのはおかしいと思い「消費生活センターですか」と尋ねると、「公安委員会に届け出をしているのでご安心ください」とのことだった。あやしいと思い電話を切ったが、先ほどの相談先に名前と電話番号を知られてしまっている。大丈夫だろうか。

     いずれも、ネット検索の結果から出る広告がきっかけとなっている。広告だと思わずに、探偵業者に電話してしまい、契約することになるパターンだ。冷静に考えればおかしいとわかるはずだが、アダルト詐欺にひっかかって動揺しているために冷静に判断できないのかもしれない。

    そもそもアダルト詐欺サイトの「返金」「請求を止める」は事実上不可能

     これらの探偵業者について、国民生活センターでは以下のような問題点を指摘している。

    ●トラブル解決をうたう探偵業者の問題点(国民生活センター)

    ・「調査」であることを説明せず、契約すれば請求が止まる、返金されると誤解させている
    ・調査の結果は、アダルトサイトのトラブルの解決に必ずしも役立つものではない
    ・自治体の消費生活センターに類似した名称を名乗り、連絡をさせている
    ・「訴えられる」「個人情報が漏れる」など消費者を不安にさせ、契約させている
    ・「警察と連携している」「個人情報を削除できる」など事実と異なる説明で信用させている
    ・キャンセルをすると、高額な解約料を請求する

     特に問題なのは、アダルト詐欺業者と同じ脅迫の手口を使っている点だ。「訴えられる」「個人情報が漏れる」「裁判を起こされる」などと言って契約させようとするが、これはアダルト詐欺業者とまったく同じ脅しの手口。悪質だと言えるだろう。

     また探偵業者が行うのは、単なる調査であり、解決や返金ができるものではない。これについて弁護士で東海大学実務法学研究科特任教授の落合洋司氏に話を聞いた。「弁護士等の資格なしで返金交渉をすることは弁護士法に違反する可能性がある。また『返金』『解決』ができないのに、それを広告でうたうことは景品表示法にも違反する可能性もあるだろう」とのことだ。

     そして根本的な問題として、アダルト詐欺業者に対して「返金」「請求を止める」「解決」するのは事実上不可能だということがある。アダルト詐欺業者は犯罪グループであり、犯罪グループからお金を取り戻すことは現実問題として不可能に近い。また請求を止めることも難しい。犯罪グループは名義を変えていくつものサイトから勝手に請求してくるからだ。

     根本的にできないことなのに、「返金交渉をする」「請求を止めさせる」と広告することは、詐欺に近い行為だと言えるだろう。

    司法書士による「アダルトサイト被害解決」も使わないこと

     国民生活センターの注意喚起にはないが、司法書士事務所による「アダルト詐欺サイトのトラブル解決」をうたう広告もある。司法書士が悪質業者との間に入って「解決する」との広告だ。相談は無料と書いているが、ウェブサイトの下に「着手金:1件につき0円~40,000円(税込)」との表記がある。

     筆者はこの司法書士事務所に電話をかけてみた。すると「業者に対して、契約を無効にする手続きをします。料金は4万円です」とのこと。司法書士にそんなことができるのか?と聞いたところ「代理権があるので大丈夫です」と回答してきた。

     これについて前出の落合洋司弁護士は「140万円以下であれば司法書士でも交渉はできる。しかし実際問題として、アダルト詐欺の犯罪グループと交渉し、無効にすることができるとは思えない。実効性のない仕事であり、それでお金を取ることは、社会通念上問題があるのではないか」と述べている。

     前述したように、アダルトサイト詐欺を「解決する」「請求を止めさせる」ことは事実上不可能だ。それをできるとうたう司法書士事務所は、筆者としては信用できない。司法書士事務所だからといって、信頼しないほうがいいだろう。

     改めてアダルト詐欺サイトの対策をまとめておく。

    アダルト詐欺サイトの対策

    ●相談は消費者ホットライン「188(イヤヤ)」から

     アダルトサイト・振り込め詐欺などで困ったら、3桁の電話番号「188(イヤヤと覚える)」に電話を。各都道府県の消費生活センターの電話番号を教えてくれるので、そこで相談しよう。公的な機関なので無料であり、調査料などを要求してくることはない。

    ●探偵業者・司法書士事務所の「アダルト詐欺解決」の広告は信用しない

     ネット広告を信用しない。「アダルトサイト被害解決」「返金可能」などの広告は一切無視すること。実際問題として返金や解決はできないので、着手金・調査料を取られるだけになってしまう。

    ●アダルト詐欺の請求は何があっても無視

     アダルト詐欺サイトの請求、メール、電話はすべて無視。「キャンセル手続」「誤クリックによる解除」などと書いてあっても、絶対にこちらから連絡しないこと。着信拒否などで無視し、怖い場合は「188」か警察に相談を

     この問題については、Googleの広告審査にも責任があるだろう。詐欺まがいの広告、実効性のない仕事の広告が出てしまっているのは、Googleの審査が甘いことが一因だ。広告の審査をきちんと行うことをGoogleに求めたい。

    参考記事
    「アダルトサイトとのトラブル解決」をうたう探偵業者にご注意!:国民生活センター
    「解約」の罠にご注意~アダルト詐欺相談が5年連続1位:サイバー護身術
    ネット詐欺 狙われるシニア ~アダルト関係など相談急増~:サイバー護身術

    2016年12月26日 11時05分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    三上洋   (みかみ・よう
     セキュリティ、ネット活用、スマートフォンが専門のITジャーナリスト。最先端のIT事情をわかりやすく解き明かす。テレビ、週刊誌などで、ネット事件やケータイ関連の事件についての解説やコメントを求められることも多い。
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