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    ITジャーナリスト三上洋さんが、サイバー犯罪から身を守る術や情報流出対策などを解説します。

    DMM装う詐欺摘発…被害10億円以上か

     有名動画サイト・DMMを装った架空請求詐欺グループが逮捕された。「未納料金がある」としてショートメッセージや電話を使い架空請求する手口で、10億円以上の被害が出ていると思われる。(ITジャーナリスト・三上洋)

    2月15日に警視庁が5人逮捕、1月19日には埼玉県警が3人逮捕

    • DMMをかたったSMSの架空請求例(被害例を基に再現)
      DMMをかたったSMSの架空請求例(被害例を基に再現)

     2年ほど前から問題になっていた、有名動画サイト「DMM.com」(ディーエムエム)をかたった架空請求詐欺グループが摘発された。2月15日に警視庁が逮捕したのは東京都の5人で、DMMを装って電話をかけて現金をだまし取ろうとした疑いだ。逮捕された5人のうち、1人は容疑を認めているが、他の1人は「弁護士と相談してから話す」、残りの3人は否認しているという。

     警視庁によると、このグループは都内の40歳代の男性に対して、DMM.comの管理者をかたって「未納料金を払わないと裁判を起こす」と脅し、現金をだまし取ろうとした疑いがある。この手口での被害は2015年6月以降で約1300件あり、被害額は10億円以上になるとのことだ。

     警視庁が15日にグループの拠点となっている東京都調布市のマンションに踏み込んだところ、5人が部屋の中で電話をかけていた。この5人は、いわゆる「かけ子」と呼ばれる電話での脅し役だったと思われる。

     これとは別に埼玉県警でも1月19日までに、DMMを装った架空請求詐欺の容疑で3人を逮捕している。容疑は埼玉県の40歳代の男性の携帯電話に「有料動画の未納料金がある」などと(うそ)のメッセージを送り、5万円分の電子マネーの番号を聞き出した疑いだ。

     このグループは東京都中央区のマンションを拠点にしており、埼玉県警は他に指示役がいると見て捜査している。

     DMM.comは動画配信の大手サイトで、特にアダルト動画では日本最大のサイトだ。有名であるがゆえに、名前をかたった詐欺が以前から起きていた。

     この詐欺の特徴は、携帯電話番号に直接送ることができるSMS(ショート・メッセージ・サービス)を使うこと。通常のメールであれば迷惑メールフィルターなどでブロックできるが、SMSは一般的にはフィルターがないためそのまま表示される。通常のメールに比べて受信件数が少ないため、架空請求のSMSが来ると目立つ。そのため驚いて払ってしまう人がいるようだ。

    消費者庁が「DMM」「ヤフー」をかたる詐欺を注意喚起

     DMMをかたる詐欺については、消費者庁が昨年1月に注意喚起を出している(PDF文書:SMSを用いて有料動画サイトの未払料金名目等で金銭を支払わせようとする「株式会社DMM.com をかたる事業者」に関する注意喚起:消費者庁)。パターンは以下の通りだ。

    ●DMMをかたった架空請求詐欺のパターン

    • DMMをかたってコンビニでギフトカードを買わせる手口(消費者庁による)
      DMMをかたってコンビニでギフトカードを買わせる手口(消費者庁による)
    • ヤフーの動画サイトをかたった架空請求詐欺の手口(消費者庁による)
      ヤフーの動画サイトをかたった架空請求詐欺の手口(消費者庁による)

    1:SMSで「DMM」をかたるメッセージが届く。「有料動画の閲覧履歴があり、電話をしないと法的処置に移行する」などの脅し

    2:不安を感じて電話をすると「大手通販サイトのギフトカードをコンビニで買って番号を伝えろ」と指示してくる

    3:被害者がコンビニでギフトカードを購入

    4:電話で番号を伝えてしまう

     コンビニで電子マネーを買わせるのは、ここ数年多い手口だ。銀行振り込みよりも検挙される可能性が低いためだろう。筆者が被害例を聞いた範囲では、Amazonのギフトカードを買わせるパターンが目立つ。Amazonギフトカードは他の電子マネーに比べて換金しやすいのかもしれない。

     犯人の狙いは、電話をかけさせることにある。電話で「あなたの電話番号がブラックリストに載って使えなくなる」「裁判を起こす」などとして脅すためだ。

     消費者庁が紹介している被害例では、一度払ってしまうと、さらに架空請求が来るとのこと。上記の手口でだまされた後で、「電子事業協会の担当者」を名乗る電話がかかってきて。「他にも4つのサイトに登録されていて212万円の延滞金が発生している。海外サイトは厄介なので、とりあえず104万円を支払ったほうがよい。電子事業協会がサイト運営会社と交渉してみるので、104万円を当協会の銀行口座に振り込んでください」と言われたとのこと。一度払ってしまうと「詐欺のカモ」と思われて、さらに架空請求で脅されてしまうのだ。

     DMMだけでなく「ヤフー(Yahoo!)」をかたったSMSの詐欺もある。消費者庁では昨年12月に、ヤフーの名前を使った架空請求詐欺の注意喚起を出した(PDF文書:SMSを用いて有料動画の未払料金の名目で金銭を支払わせようとする「ヤフー株式会社をかたる事業者」に関する注意喚起:消費者庁)

     ヤフーの動画サービス「GYAO(ギャオ!)」の有料動画閲覧履歴があるとして、高額な料金を請求する手口だ。内容はDMMでの詐欺とほぼ同じで、コンビニで電子マネーを買わせて支払わせようとする。こちらにも注意したい。

    新手口「保険で戻る」「過払い金で戻る」にだまされるな

     最近の被害例では、高額な料金を払わせるために「保険」「過払い金」などの言葉でだますパターンがある。

     「あなたには有料サイトの未払金がありますが、保険を適用できます。保険料を払えば、全額返金されますよ」として、保険料をだまし取る手口だ。このやり方は巧妙で「保険でお金を取り戻すには、いったん全額を払わないと契約が有効にならないんです」として、高額な架空料金を払わせようとする。被害者は「戻ってくるならば、いったん払うしかないか」と思って、高額な料金を払ってしまう。これで数百万円を取られた被害例がある。

     この変形バージョンもある。CMでよく流れている「過払い金」という言葉を使う手口だ。「弁護士がついていますので、有料動画の料金を払ったあとに『過払い金』として戻ってきます」として、架空の料金を払わせようとする。「過払い金で戻る」ということを信じて、払ってしまう被害者がいるようだ。「過払い金」「保険」などの言葉にだまされないようにしたい。

     改めて対策をまとめておこう。

    ●SMSなどを使った高額請求への対策

    1:SMS・メール・メッセージを使った後払い請求は詐欺を疑え

     DMMは前払い式であり、ヤフーも事前登録が必須だ。つまり後払いで高額請求されることはない。SMS・メール・メッセージだけで後から請求が来た場合は詐欺を疑おう。

    2:「身に覚えがあっても」払ってはいけない

     犯人は「アダルト動画を見たことのある人」を狙っている。「あの時見たやつかな?」「前に間違ってクリックしたな」と思わせて請求してくるのだ。身に覚えがあっても、後からの高額請求は詐欺だと思うこと

    3:不安になったら「188(いやや!)」で相談を

     不安を感じたら、消費者ホットライン「188(いやや!)」に電話を。最寄りの消費生活センターの番号を教えてくれるので、そこで相談しよう。

     平成28年の架空請求詐欺被害額は、158億円を超えている(警察庁統計による)。1日で4000万円以上の被害が出ており、多くの人が今もだまされている状況だ。脅しに屈せず、架空の高額請求は無視しよう。

    ★参考記事
    ・詐欺被害者を二重にだますネット広告に注意!:サイバー護身術
    ・「解約」の罠にご注意~アダルト詐欺相談が5年連続1位:サイバー護身術
    ・ネット詐欺 狙われるシニア ~アダルト関係など相談急増~:サイバー護身術

    2017年02月17日 12時16分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    三上洋   (みかみ・よう
     セキュリティ、ネット活用、スマートフォンが専門のITジャーナリスト。最先端のIT事情をわかりやすく解き明かす筆力には定評がある。テレビ、週刊誌などで、ネット事件やケータイ関連の事件についての解説やコメントを求められることも多い
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