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    ITジャーナリスト三上洋さんが、サイバー犯罪から身を守る術や情報流出対策などを解説します。

    未成年のスマホ利用は1日3時間以上

     未成年のスマートフォン(スマホ)利用調査によると、1日の利用平均時間は3.2時間で、女子高校生に限ると6.1時間もスマホを使っていることがわかった。SNSや写真・動画アプリの利用者が増えている一方で、フィルタリングなど安全対策は遅れているようだ。(ITジャーナリスト・三上洋)

    スマホ所有率は小学校高学年「4分の1」中学生「半分」高校生「ほとんど」

    • 小学校高学年の携帯・スマートフォン所持者のうちのスマホ利用の割合。前年から大きく伸びて約60%がスマホを使っている(デジタルアーツ)
      小学校高学年の携帯・スマートフォン所持者のうちのスマホ利用の割合。前年から大きく伸びて約60%がスマホを使っている(デジタルアーツ)

     未成年者のスマートフォン利用率が増えている。内閣府調査によると、小学校高学年では27.0%、中学生で51.7%、高校生で94.8%となっている。スマホ利用率は毎年伸びており、今や小学校高学年で4分の1、中学生で半分、高校生はほとんどがスマホを使っていることになる(平成28年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報):内閣府)

     今まで小学校高学年では、親が子供向け携帯電話を持たせるパターンが多かったが、それもスマートフォンに代わりつつあるようだ。グラフは、小学校高学年の携帯・スマホ所有者のうち、スマホ使用者の推移グラフだ。昨年までの小学校高学年のスマホ使用者は4割前後だったが、今年は一気に20%以上増え、60.2%がスマホ使用者になった。小学生でも「初めて持つのはスマートフォン」になりつつある。

     この調査レポートを出したのは、フィルタリングソフトなどを販売しているセキュリティー企業・デジタルアーツだ。「未成年の携帯電話・スマートフォン利用実態調査」の10回目として、未成年のスマホ利用のデータをまとめている。

    • 携帯電話・スマートフォンの1日の平均利用時間。女子高校生は1日に6.1時間もスマホを使っている(デジタルアーツ)
      携帯電話・スマートフォンの1日の平均利用時間。女子高校生は1日に6.1時間もスマホを使っている(デジタルアーツ)

     それによると、未成年のスマートフォン利用時間も伸びている。未成年者のスマホ利用時間平均は1日3.2時間で、昨年より0.2時間増えた。特に高校生では女子が6.1時間もあるほか、男子でも4.8時間使っている。睡眠時間や授業・クラブの時間を除けば、ほとんどの時間でスマホを触っていると考えてもいいだろう。

     高校生はスマホにどっぷり浸かっているような状態であり、弊害も出てきている。「携帯電話/スマートフォンを使用してからの経験内容」として、以下のような問題がある。

    ●未成年者での携帯電話/スマートフォンを使用してからの経験内容(未成年全体)

    ・四六時中、使いすぎていると注意された 36.2%(前年比+6.1%)

    ・食事中もいじっていて注意された 23.0%(前年比+4.2%)

    ・寝落ちするまでいじっていた 23.0%(前年比+5.2%)

    ・寝不足で頭がぼーっとしていたり、注意力が散漫になった 16.3%(前年比+2.9%)

    ・学校の成績が落ちてきたと注意された 13.1%(前年比+4.7%)

     食事中や寝るときまで、スマホを使っている未成年者がいることになる。睡眠不足になる、学校の成績が落ちてきたなどの弊害を感じている人も多い。

    女子高校生は自撮りアプリに夢中。メルカリ利用者も増える

    • 使用頻度の高いアプリ。LINEが圧倒的に多く、2年前と比べて約12%も増えた(デジタルアーツ)
      使用頻度の高いアプリ。LINEが圧倒的に多く、2年前と比べて約12%も増えた(デジタルアーツ)

     未成年者がスマホで利用するアプリでは、LINEがダントツで強い。未成年者全体で73.9%が使っており、前年比で7.6%増えた。中学生の利用率は80%前後、高校生では95%前後もあり、「LINEのためにスマホを持つ」ような状況である。

     他のSNSではTwitterが35.8%で、前年比+3.3%の微増。Instagramは15.4%で、前年から変わらず。Facebookは13.4%で前年比-0.5%となっている。ただしInstagramは、女子高校生だけが極端に高く、全体の50.5%が利用している。女子高校生は、写真中心のInstagramを好んで使っているようだ。

     その傾向は写真アプリの利用率にも表れている。女子高校生が使っている写真アプリのランキングは以下の通りだ。

    ●女子高校生が使っている写真・動画の加工アプリ

    ・SNOW 58.3%(未成年全体16.0%)

    ・B612 47.6%(未成年全体10.2%)

    ・カメラ360 25.2%(未成年全体5.2%)

    ・PicsArt Photo Studio 22.3%(未成年全体4.2%)

    • ゲームや写真などで使用頻度の高いアプリ。女子高校生では自撮りのためのアプリの人気が高い(デジタルアーツ)
      ゲームや写真などで使用頻度の高いアプリ。女子高校生では自撮りのためのアプリの人気が高い(デジタルアーツ)

     改めてアプリの特徴をまとめておくと、「SNOW」は自撮りで動物の顔などを合成表示できるアプリ、「B612」は自撮り写真を美しく見せるアプリ、「カメラ360」は美肌フィルターで有名な自撮りアプリ、「PicsArt Photo Studio」は複数画像をまとめたり、文字を入れたりできる画像加工アプリだ。

     ほとんどが「自撮りを盛る(美しくする)」「自撮りを楽しむ・投稿する」ためのアプリなのである。女子高校生が自撮りに熱中していることがよくわかる。

     この結果は、SNSへの投稿内容にも表れている。

    ●SNS・動画アプリへの投稿内容

    ・プライベートで友達と一緒にいるときの写真・映像 女子高校生60.2% 未成年全体37.0%

    ・学校での自分や友達の写真・映像 女子高校生44.7% 未成年全体21.0%

    ・プライベートで自分ひとりの写真・映像 女子高校生11.7% 未成年全体16.2%

    ・芸能人・有名人の写真・映像 女子高校生34.0% 未成年全体11.9%

    ・閲覧のみで撮影・投稿していない 女子高校生23.3% 未成年全体46.4%

     女子高校生は友達と一緒にいるときの自撮りを、LINEやInstagramなどに積極的に投稿している。「閲覧のみで撮影・投稿していない」という人は、未成年全体でも半数以下であり、写真投稿は当たり前になってきている。

     利用アプリでは、もう一つ面白いデータがある。それはフリマアプリ「メルカリ」の利用者が増えていることだ。女子高校生では49.5%、男子高校生でも32.0%がメルカリを使っている。

     フリマアプリを入れて、実際に売買をしている高校生もいる。メルカリなどで「自分の使用していた品物などの物品を販売」している人の割合は、女子高校生で32.1%、男子高校生で10.5%いた。小遣い稼ぎに自分が持っているものをメルカリなどで販売している女子高校生が3分の1もいることになる。

    リスクへの意識はまだ低い

    • スマホのリスクについての話し合いの有無では、高校生になると家庭での話し合いが減る傾向にある(デジタルアーツ)
      スマホのリスクについての話し合いの有無では、高校生になると家庭での話し合いが減る傾向にある(デジタルアーツ)

     これらの実態に対して、スマホトラブルについての意識はまだ低いようだ。たとえば女子高校生について見ると、「自分が当事者になると思った事件」という質問では、「個人情報漏えい」「アカウント乗っ取り」などの不安を感じているが、昨年の調査よりも割合は低くなっている。

    ●自分が当事者になると思った事件(未成年全体)

    ・個人情報が漏洩する 25.6%

    ・アカウントを乗っ取られて悪用される 17.8%

    ・友達・知り合いの写真・動画をネットで勝手に投稿する 15.9%

    ・特にない 61.5%

     「特にない」と答えている人が60%以上もおり、スマホ利用でのリスクを知らないか、もしくは「自分には無縁」と思っている人が多い。スマホ利用でのトラブルへの意識がまだ低いと言えそうだ。

     リスクについて話し合う頻度については、学校で67.6%、家庭で73.9%が「スマホのリスクについて話し合った経験がある」と答えている。ある程度はスマホのリスクについての話し合いをしているわけだが、高校生になると家庭での頻度が落ちる傾向にあるようだ。

     中学生では、約8割が「スマホのリスクについて家庭で話し合ったことがある」と答えているのに対し、高校生は60%前後にガクンと落ちてしまう(男子高校生60.2%、女子高校生62.1%)。高校生になると親と話し合う機会が減ってしまうためだと思われるが、スマホ利用が圧倒的に増える高校生だからこそ、リスクについての話し合いが必要だろう。

    • デジタルアーツ経営企画部チーフエバンジェリストの工藤陽介氏
      デジタルアーツ経営企画部チーフエバンジェリストの工藤陽介氏

     これらの未成年のスマホ利用の状況について、デジタルアーツ株式会社のチーフエバンジェリスト・工藤陽介氏は、「大人は『SNSに写真は載せない』『スマホは夜○時まで』などダメなことを教えようとするが、それでは実際のスマホ利用に合っていない。そうではなく、『写真を載せるときは友達に相談する』『寝る前のSNSの時間を学習や読書に使おう』など、スマホを上手に使うことを前提に話し合ったほうがよい」とアドバイスしている。

     また現在の情報モラル教育では、被害に遭わない対策が中心になっているが、未成年が「加害者・犯罪者にならない」ための対策も必要だと述べた。サイバー犯罪の加害者にならない、著作権を侵害するような投稿をしないなど、加害・犯罪対策の教育が重要だと指摘している。

    ★参考記事
    未成年の携帯電話・スマートフォン利用実態調査第10回:デジタルアーツ
    ネット被害児童が過去最多 アプリ多様化が一因:サイバー護身術
    16歳少年が不正アクセス…多発する少年サイバー事件の背景:サイバー護身術

    2017年03月06日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    三上洋   (みかみ・よう
     セキュリティ、ネット活用、スマートフォンが専門のITジャーナリスト。最先端のIT事情をわかりやすく解き明かす筆力には定評がある。テレビ、週刊誌などで、ネット事件やケータイ関連の事件についての解説やコメントを求められることも多い
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