文字サイズ
    ITジャーナリスト三上洋さんが、サイバー犯罪から身を守る術や情報流出対策などを解説します。

    DeNA報告書の重要ポイントを読み解く

     DeNAのキュレーションサイト問題について、第三者委員会の調査報告書が公開された。法律に触れる記事内容や、画像や文章の無断転用の件数などが報告されたほか、経営方針から記事作成の実態に至るまで、詳細な分析が行われている。(ITジャーナリスト・三上洋)

    277ページに渡る詳細なDeNA問題の調査報告書公開

    • 3月13日に行われたDeNAキュレーション事業に関する第三者委員会記者会見
      3月13日に行われたDeNAキュレーション事業に関する第三者委員会記者会見

     3月13日にDeNAのキュレーションサイト(まとめサイト)問題に関する調査報告書が公開され、第三者委員会とDeNAにより記者会見が行われた(経緯については以前の記事「DeNA「WELQ(ウェルク)」休止…まとめサイトの問題点と背景は」参照)。報告書は277ページにわたる膨大なもので、問題点・背景・各サイトの事情・経営方針に至るまで、様々な調査・指摘がまとめられている(第三者委員会調査報告書(要約版)公表のお知らせ:DeNA)

     まず法令上の問題として、大きく分けて3つの問題が指摘されている。

    ●DeNAが行っていたキュレーションサイト事業の法令上の問題点

    1:著作権侵害の可能性がある記事は最大で約2万件
     記事の内容で、著作権侵害(複製権・翻案権侵害)の可能性があるのは、全体の1.9~5.6%の範囲内だと推計した。おおむね7000~20000件の記事に問題があった可能性がある(サンプル調査のため、具体的な記事数はわからない)。

    2:画像では約75万個が著作権侵害の可能性
     10サイト約472万個の画像のうち、最大で約75万個が著作権侵害の可能性あり。

    3:10本の記事が薬機法などに違反の可能性
     内容に問題があると外部から指摘された記事19本のうち、10本が薬機法、医療法または健康増進法に違反している可能性がある。

     DeNAで問題になった10サイトには約37万7000件の記事があり、そのうち最大で約2万件の記事、最大で約74万個の画像に問題があったことがわかった。他のサイトの記事や画像を勝手に使う行為を、大規模に行っていたことになる。

     薬機法や医療法などに違反する記事は、主に外部から問題があると指摘された記事の検証だ。「肩こりの原因は霊」「日焼けには()れタオルが有効」など荒唐無稽の記事を作っていたことは法律的・倫理的にも問題があると指摘している。

    1か月に約2万件もの記事を公開。内容を軽視し金 ( もう ) け重視

    • 3月13日のDeNAによる記者会見。第三者委員会調査報告書を基にした会見だった
      3月13日のDeNAによる記者会見。第三者委員会調査報告書を基にした会見だった

     上場企業であるDeNAがなぜこんなことをしたのかについて、277ページの第三者委員会報告書が様々な角度から検討している。記者会見での内容も合わせ、筆者の視点で問題のポイントをまとめた。記者会見での質疑応答の内容も含んでいる。(PDF文書:第三者委員会調査報告書全文公開のお知らせ:DeNA)

    ●DeNA第三者委員会調査報告書から見る問題のポイント

    ・コピペや偽装を指示するかのようなマニュアル(p249、p180など
     サイトごとに記事作成マニュアルがあり、他のサイトの記事を参照しながらも、著作権侵害を逃れるための偽装指示があった。WELQを例に取ると「参考サイトに類似しない本文作成のコツ」として「複数サイトの意見を寄せ集めれば」という表記まである。コピペだとバレないための方法を伝授しているわけで悪質だ。

    ・1か月で2万件もの記事作成。担当編集は少数(p252)
     運営する10サイトで、2016年10月は約2万件、11月は約1万9000件の記事を公開していたが、各サイトの編集者は10人以下しかいなかった。編集担当者が目を通すことすら不可能な量だと言えるだろう。外部のディレクターに編集を委ねているため、チェック体制が甘くなった。

    ・検索サイト上位のための記事量産体制(p92移行の個別サイトの内容から)
     各サイトでは記事作成のためのシステムがあり、ライターはそのシステムを見て記事を作成していた。検索サイトで検索されやすいキーワード一覧を載せ、そこから記事を作成させている。つまり、検索サイトの上位に載るためだけに記事を作っており、内容は二の次三の次になっている。

    ・クラウドソーシング会社への丸投げ(p76)
     ネット上で仕事を仲介するクラウドソーシングを利用して、ライターに記事作成を依頼していたが、さらにクラウドソーシング運営会社に丸投げしていた実態もわかった。DeNAでのライター管理の事務負担が大きくなったため、記事作成全体をクラウドソーシング運営会社に委託。記事を量産するためだった。

    ・金儲け重視で守安社長が具体的な方針を指示(p74)
     キュレーション事業では守安社長が大きな運営方針を決めていた。指標としては、時価総額を上げるために「1日あたりの閲覧ユーザー数(DAU)」を設定。この閲覧数を達成するために検索サイトで上位に入るためのテクニック=SEO(Search Engine 0ptimize)を重視した。守安社長がGoogleでのSEOを指標とするようにと具体的に指示している。

    ・買収時にリスクがあることを検討せず。DeNA社で規模拡大(p59、p258)

     DeNAでは、キュレーション事業を行っていたiemo社、ペロリ社、FindTravel社を買収したことからキュレーション事業に本格的に取り組んだ。これらの3社は、著作権侵害などの問題がある記事を作成しており、そのリスクを十分に検討しないままで買収。買収後も改善はほぼ行われず、逆にDeNA社によって規模を拡大した実態が明らかになっている。

    • 調査報告書に掲載された記事作成のマニュアル。元サイトの記事内容を使いながらもコピペと思われないような偽装の方法が書かれている
      調査報告書に掲載された記事作成のマニュアル。元サイトの記事内容を使いながらもコピペと思われないような偽装の方法が書かれている

    ・著作権侵害の個別記事の調査は行わない(記者会見)
     第三者委員会の調査では、記事の件数が多いためにサンプリング調査に(とど)まっている。最大で2万件もの記事で著作権侵害の可能性があるわけだが、これについて記者会見で守安社長は「相談を受けたものは調査するが、それ以外は件数が多いために、これ以上の個別の調査は行わない」としている。サイトが閉鎖されているため、外部による調査も行えない。

    ・補償は能動的には行わない(記者会見)
     DeNAへの相談窓口には84件の申し出があり、これについては「補償を含めて真摯(しんし)に対応している」としている。しかし、それ以外の著作権侵害の記事については「DeNAから能動的に調査して補償することはしない(守安社長記者会見)」と記者会見で答えた。

     このようにDeNAのキュレーション事業については、多くの問題が含まれていた。しかも件数が多いために、すべての検証ができず、サイト自体が閉鎖されているために外部からの検証もできない状態だ。また今回の記者会見には、キュレーション事業のキーマンであったiemo社出身のA氏と、ペロリ社出身のB氏が記者会見に参加していない。報告書発表の前日に取締役を辞任しているためだ。そのため、キュレーション事業についての具体的な質疑応答はできなかった。

     報告書全体で見ると、守安社長の責任が大きいように感じる。コピペ記事量産、SEO重視で内容を軽視するなどの手法は、買収したiemo社・ペロリ社がやっていたもので、この2社の影響が大きいとされてきた。しかしながら報告書では、2社の姿勢を容認しながら、守安社長が数値目標を立て、さらに輪をかけて量産主義・SEO重視主義を実行したことが明らかにされている。DeNAという大企業が買収したことで、大規模かつシステマチックにコピペ記事量産・SEO至上主義に走ったわけだ。守安社長の責任がもっとも大きいと言わざるをえない。

    画像の「直リンク」問題

     今回の第三者委員会の調査報告書で、筆者が疑問に思っていることが一つある。それは画像の「(ちょく)リンク」の問題だ。直リンクとは、他のサイトの画像URLアドレスを使って、自分のサイトでそのまま表示すること。一般的な方法では自分のサイトにアップした画像を掲載(サーバー保存)するが、直リンクでは外部サイトにある画像をそのまま引っ張ってきて自分のページに載せる。この直リンクは、ネット上で忌み嫌われている行為だ。勝手に画像を使われた上に、サーバーの負担にもなるためだ。

     しかし、この直リンクについて、第三者委員会の報告書では「著作権法違反の可能性ありとは判断しなかった(p45)」としている。「著作権法での複製権や公衆送信権の問題は生じないという見解が有力」であるためだ。そのため著作権侵害とは別に、「直リンクは倫理的な問題はあり得る」として別の項目として分類した。

     直リンクで許諾が確認できなった可能性のある画像は約91万件もある。前述の通り、著作権侵害の疑いのある画像(直リンクではなく自社のサーバーに保存したもの)は約75万個であり、それよりも多いことになる。ネットで嫌われている直リンクが91万個もありながら、「倫理的な問題がある」という表現に留めているのは、筆者としては残念だ。

     もし、直リンクを容認すると、極端なことを言えば「ネット上にある画像は、すべて自分のサイトに掲載できる」ことになってしまう。他サイトのURLサイトさえ引っ張ってくればいいからだ。これは常識的に考えても許されない行為だ。キュレーションサイト大手のNaverまとめでも、画像の直リンクによる掲載が多数あって問題視されている。直リンクは著作権者の意思に反するのだから、キュレーションサイトでの利用をやめていただきたいと筆者は考えている。

    ★参考記事
    ・DeNA「WELQ(ウェルク)」休止…まとめサイトの問題点と背景は:サイバー護身術
    ・DeNAサイト休止、ネット検索の“盲点”とは:深読みチャンネル
    ・DeNA社 IR・投資家情報(第三者委員会調査報告書などを掲載)

    2017年03月14日 18時02分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    三上洋   (みかみ・よう
     セキュリティ、ネット活用、スマートフォンが専門のITジャーナリスト。最先端のIT事情をわかりやすく解き明かす。テレビ、週刊誌などで、ネット事件やケータイ関連の事件についての解説やコメントを求められることも多い。
    おすすめ
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP