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    ITジャーナリスト三上洋さんが、サイバー犯罪から身を守る術や情報流出対策などを解説します。

    格安スマホの消費者問題とは?

     MVNO=格安SIM(シム)が普及するにつれ、通信スピード表示や詐欺への悪用などいくつかの課題が明らかになってきた。(ITジャーナリスト・三上洋)

    MVNOのシェアは携帯電話全体の5.1%

    • 3月16日に行われたモバイルフォーラム2017(一般社団法人テレコムサービス協会主催)
      3月16日に行われたモバイルフォーラム2017(一般社団法人テレコムサービス協会主催)

     ドコモ・au・ソフトバンクの大手3社の回線を借り、格安でスマートフォンなどを使える「格安スマホ」の利用が広がっている。格安スマホ向けのSIMカード(携帯電話会社との契約データを入れたカード)契約数は、2016年9月で約762万回線。これは携帯電話全体の5.1%にあたるシェアだ。まだ少ないものの、料金の安さやテレビCMなどによって大きく伸びており、純増数は大手3社を超えている。

     格安スマホなどのSIMカードを出しているのが、MVNO=格安SIMと呼ばれる通信会社だ。MVNOが参加している業界団体が、3月16日に「モバイルフォーラム2017」を開催した(一般社団法人テレコムサービス協会主催)。

     このイベントで一つのテーマとなったのが消費者問題だ。大きく成長してきた格安スマホだが、消費者保護に関する問題がいくつか出ている。下はイベントで講演した三菱総合研究所の西角直樹氏によるスライドで、「MNO」(大手3社など回線を持っている携帯電話会社)とMVNOとの、消費者に対する義務の違いをまとめている。

    • イベントで講演した三菱総合研究所の西角直樹氏によるMNOとMVNOの消費者保護の比較
      イベントで講演した三菱総合研究所の西角直樹氏によるMNOとMVNOの消費者保護の比較

     たとえば青少年向けのフィルタリングでは、大手3社などのMNOは「青少年インターネット環境整備法」によって提供が義務付けられているのに対し、格安SIMのMVNOは任意となっている。また通信スピードの開示方法は、MNOでは総務省ガイドラインで方法が決められているものの、MVNOでは開示義務がない。MVNOは大手3社と比べると、総務省による義務付けが緩いと考えてもいいだろう。

     このMVNOの消費者問題について、テレコムサービス協会MVNO委員会・消費者問題分科会主査の木村孝氏が「MVNOを巡る消費者保護などの動向」として講演を行った。木村氏によれば「青少年フィルタリングは義務付けられてはいないものの、総務省から導入するようにと指導されており、各社とも取り組んでいる」と述べた。

     個人向けの格安SIMを提供しているMVNO12社に調査したところ、10社は何らかのフィルタリングを提供しているとのことだ。

    • MVNO15社の青少年フィルタリングの提供状況(テレコムサービス協会MVNO委員会・消費者問題分科会)
      MVNO15社の青少年フィルタリングの提供状況(テレコムサービス協会MVNO委員会・消費者問題分科会)

     ただしフィルタリングの方法は9社がアプリ型、2社がネットワーク型だった(法人向け専用のサービスを含む)。

     アプリ型が主流だが、これではフィルタリングは不十分だ。アプリ型では、別のアプリを使うなどの方法で、フィルタリングなしでネットを自由に見られることが多いためだ。

     本格的なフィルタリングにはネットワーク型が必要だが、MVNOでは2社に限られており、まだ取り組みが足りないと言えるだろう。

    スピード計測サイトで高速なのに、動画再生に制限をかけるMVNOも

     MVNOで大きな問題となっているのが「見かけの通信スピード」の話だ。MVNOでは会社によって実質的な通信スピードが異なるため、ネット記事や雑誌で通信スピードの比較記事がよく出ている。

     今回のフォーラムで講演を行ったジャーナリストの石川温氏によると「一般のサイトやスピードテストサイトではかなり高速な結果を出すが、動画になるとまったくスピードが出ない会社がある。動画に制限をかけているとしか思えない」として、動画に制限をかけているMVNOがあると指摘している。スピードテストでは高速に見えるが、YouTubeなどの動画になると急にスピードが落ちる会社があるのだ。これでは比較記事のために見かけのスピードだけを上げている、と指摘されても仕方がないだろう。

     このMVNOの実効速度の問題については、総務省の電気通信サービス向上推進協議会の実効速度適正化委員会で昨年からスピード計測方法のルールなどの検討が行われている。業界団体のテレコムサービス協会MVNO委員会でも、「MVNOの実効速度に関するタスクフォース」を設置して、これに対応していく予定とのことだ。

     ユーザーにとってわかりやすい比較ができるように、実使用に見合った通信スピードの評価ルールを決めてほしいものだ。

     これとは別に詐欺でのMVNO利用が増えていることが社会的問題になっている。詐欺で使われている携帯電話回線のうち、MVNOが占める割合が急増しているのだ。警視庁によれば昨年1月から10月までの特殊詐欺とみられる電話で、番号を特定した762件のうち、もっとも多いのはソフトバンクの385回線(約51%)だったが、次に多いのがMVNOで239回線(約31%)だった。前年の50倍に急増している。

    • MVNOが詐欺のツールとして利用されている実態がある(テレコムサービス協会MVNO委員会・消費者問題分科会)
      MVNOが詐欺のツールとして利用されている実態がある(テレコムサービス協会MVNO委員会・消費者問題分科会)

     オレオレ詐欺やアダルトサイト詐欺(架空請求・ワンクリック詐欺など)で、MVNOの携帯電話が多く使われていることになる。MVNOは実店舗が少なく、多くがネット上の契約のため、本人確認が甘くなっていることが理由だろう。運転免許証や健康保険証を偽造してネット契約している可能性が高い。犯罪のツールとしてMVNOが悪用されている実態があるので、今すぐ対策を講じる必要があるだろう。

     総務省では2017年1月に「MVNO事業者の提供するスマートフォン等における特殊詐欺利用の対策について(依頼)」という文書を出して、本人確認の強化を依頼している。テレコムサービス協会MVNO委員会では、警察庁などと情報交換を実施しているとのことだが、犯罪悪用の防止に努めていただきたい。

     MVNOは政府による規制緩和によって参入業者が増え、ユーザー数も右肩上がりだ。総務省でも、接続料の値下げ・SIMロック解除義務化などによって、MVNO・MNOによる競争を加速させようとしている。

     しかし急激に成長したこともあり、ここで紹介したようにフィルタリング導入の遅れ・実効スピード・詐欺悪用などの問題が出てきている。ユーザーが安心して使える環境を整えること、犯罪に悪用されない対策をしっかり進めていく必要がある。

    ★参考記事

    有料サイトかたる架空請求詐欺に注意!:サイバー護身術

    スマホで「ウイルス感染警告」の広告はニセモノ:サイバー護身術

    テレコムサービス協会MVNO委員会

    2017年03月17日 18時42分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    三上洋   (みかみ・よう
     セキュリティ、ネット活用、スマートフォンが専門のITジャーナリスト。最先端のIT事情をわかりやすく解き明かす筆力には定評がある。テレビ、週刊誌などで、ネット事件やケータイ関連の事件についての解説やコメントを求められることも多い
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