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    ITジャーナリスト三上洋さんが、サイバー犯罪から身を守る術や情報流出対策などを解説します。

    ヤフーやグーグル広告に「アダルト相談詐欺」

     ワンクリック詐欺・架空請求を「解決します」と称して、被害者をさらにだます探偵会社・司法書士事務所が問題になっている。東京都は悪質な探偵会社に対して、是正勧告を出した。同様の広告が、今でもYahoo!JapanやGoogleに出ているのは問題だ。(ITジャーナリスト・三上洋)

    「訴訟になる」と不安をあおって契約させる探偵会社に是正勧告

    • 東京都によるリサーチソリューション社への是正勧告。アダルト詐欺への相談に対して「訴訟になるので早く動かないと」と不安をあおっていた(東京くらしWEB)
      東京都によるリサーチソリューション社への是正勧告。アダルト詐欺への相談に対して「訴訟になるので早く動かないと」と不安をあおっていた(東京くらしWEB)

     アダルトサイトの詐欺被害者に対し「解決できる」とだます「相談詐欺」の探偵会社が、東京都から是正勧告を受けた。以前の記事「詐欺被害者を二重にだますネット広告に注意!:サイバー護身術」で紹介した、ワンクリック詐欺・架空請求詐欺の被害者向け広告を出していた探偵会社だ。

     4月28日に東京都から是正勧告を受けたのは、東京都渋谷区の株式会社リサーチソリューション。この会社は「消費者トラブル調査相談センター」という名前でネット広告を出し、探偵の調査では解決できないにもかかわらず「当社が解決に向けて動きます」などと勧誘していた。東京都への相談は平成28年度だけで124件もあり、平均契約額は約5万7000円、最大は21万6000円にもなっている。このリサーチソリューション社の問題点をまとめておく。

    ●是正勧告を受けたリサーチソリューション社の問題点

    ・「被害は解決できる」と広告を出す

     探偵業務に関係のないことで広告を出し契約させている(東京都消費生活条例第25条「販売目的不明示」)

    ・「訴訟になるので早く動かないと」と不安をあおる

     「事業者から間違いなく請求がきます。支払わなければ訴訟になります」などと事実と異なることを告げ、不安をあおって契約させる(東京都消費生活条例第25条「不実告知」)

    ・「無料で相談にのる」と称して契約させる

     ネット広告で「無料相談」と宣伝しておいて、電話をかけさせて不安をあおって契約させる

     筆者が見る限り、ハッキリ言って詐欺だ。アダルト詐欺業者と交渉して解決すのは事実上不可能だし、探偵会社は代理人として交渉できない。そして「訴訟になる」と脅すのは、アダルト詐欺業者とまったく同じ脅し文句であり、非常に悪質だ。

     アダルト詐欺にだまされて動揺している被害者につけこむ、悪質な詐欺だと筆者は考えている。この是正勧告についてリサーチソリューション社は「真摯(しんし)に受け止め業務の改善を図る」と表明しており、サイトは閉鎖された模様だ。

    Yahoo!に今でも「相談詐欺」広告が多数

    • Yahoo!Japanで「ワンクリック詐欺」検索した例。トップに広告で「ワンクリック詐欺を解決します」などの広告が出ている
      Yahoo!Japanで「ワンクリック詐欺」検索した例。トップに広告で「ワンクリック詐欺を解決します」などの広告が出ている

     問題は今でも同様の広告が大手検索サイトに出ていることだ。ワンクリック詐欺・架空請求詐欺の「解決」をうたうネット広告が、大手検索サイト「Yahoo!Japan」に掲載されている。

     左の画像は、Yahoo!Japanで「ワンクリック詐欺」と検索した結果で、司法書士事務所と法律事務所が広告を出している。ある法律事務所は「詐欺業者からの督促を放置すると、個人情報の漏洩(ろうえい)や悪用流用の恐れがあるだけでなく、ウイルス感染やフィッシング詐欺の進行の恐れもあり危険です」とまったくの(うそ)を書いて不安をあおっている(請求や督促は放置するのがベストの対応である)。

     また、司法書士事務所の広告では「悪徳サイトによる被害を調査・解決いたします」としているが、解決は事実上不可能だ。相手は犯罪グループであり、犯罪グループと交渉して解決できるのなら、とっくに警察が検挙しているからだ。

    • ある司法書士事務所の広告。「悪徳サイトによる被害を調査・解決いたします」と宣伝している
      ある司法書士事務所の広告。「悪徳サイトによる被害を調査・解決いたします」と宣伝している

     「絶対に払わないでください。業者に連絡しないでください」と広告している司法書士事務所では、「費用を明確にしております」と3万円を表示している。そもそも国民生活センターであれば、相談は無料なのだからお金を払う意味はまったくない。

     そして、この司法書士事務所は
     「なお、公的機関である『消費者生活センター(消費者センター)』『国民生活センター』では原則として、相談・情報提供にとどまり、 代理人として直接相手方と交渉はおこなっていただけません」
     と書き、まるで司法書士事務所であれば直接、相手方(詐欺の犯罪グループ)と交渉ができるような表現をしている。

     以前の記事「詐欺被害者を二重にだますネット広告に注意!」でも書いたが、犯罪グループである詐欺業者と交渉し「解決する」「請求を止めさせる」ことは事実上不可能だ。不可能なことを宣伝して契約させるのは問題がある。

    探偵の広告は消えたが、司法書士・法律事務所の広告多数

     検索サイト上では2016年12月まで、探偵会社による「アダルト詐欺解決」の広告が出ていた。国民生活センターが2016年12月に注意喚起を出したことからか、探偵会社による広告はGoogle、Yahoo!Japanともに見当たらなくなっている。

     しかし司法書士事務所と法律事務所による広告は、今でもGoogleとYahoo!Japanに出ている。「安心安全にすぐ解決できます」「法律事務所だから安心」などという広告が、今でも表示されているのだ。

     ワンクリック詐欺・架空請求詐欺にだまされて払ってしまった人は、助けを求めてGoogleやYahoo!Japanで「ワンクリック詐欺」などと検索する。その際に「法律事務所だから安心」「無料で司法書士事務所が相談を受けます」などの広告を見たら、(わら)をもつかむ気持ちで相談してしまうかもしれない。実際には解決できないのに、解決できると言われて契約してしまう人もいるだろう。

     GoogleとYahoo!Japanは、このような詐欺まがい、もしくは不当表示の広告を載せていることになる。検索サイト側が率先して、これらの広告掲載をやめるように願いたい。

     ワンクリック詐欺・スマホでのアダルト詐欺・架空請求詐欺への対策は「完全に無視すること」であり、司法書士事務所や法律事務所に相談しても、何の解決にもならない。請求も止めることも不可能だ(業者が名前を変えて何度も請求してくるため)。

     相談はお金がまったくかからない消費者庁の消費者ホットラインへ。「188(いやや!)」に電話をかけ、地元の消費生活センターで相談しよう。また実害が出ている・繰り返しの請求が怖いなどの場合は、警察へ相談すること。地元の警察署の対応が遅れるようなら、都道府県警察のサイバー担当部署に相談するのがいいだろう。検索サイトの「解決します!」の広告にだまされないように注意したい。

    ●参考記事

    ・詐欺被害者を二重にだますネット広告に注意!:サイバー護身術

    ・アダルトサイトのワンクリック詐欺などの解決をうたう探偵事業者に是正勧告:東京くらしWEB

    ・「アダルトサイトとのトラブル解決」をうたう探偵業者にご注意!:国民生活センター

    2017年05月29日 11時52分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    三上洋   (みかみ・よう
     セキュリティ、ネット活用、スマートフォンが専門のITジャーナリスト。最先端のIT事情をわかりやすく解き明かす。テレビ、週刊誌などで、ネット事件やケータイ関連の事件についての解説やコメントを求められることも多い。
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