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    ITジャーナリスト三上洋さんが、サイバー犯罪から身を守る術や情報流出対策などを解説します。

    「荷受け代行」アルバイトに注意せよ! 地域コミュニティーアプリに潜むワナ 

     「荷物を受け取って転送するだけ」――そんなうたい文句に誘われてアルバイトに応募したところ、後から請求書が届く被害が出ている。身分証明書などの写真を撮影され、勝手に契約されてしまう詐欺なので、十分に注意したい。(ITジャーナリスト・三上洋)

    「荷物を受け取るだけで数千円」のバイト募集

    • 荷受け代行詐欺の手口。SNSや実際に会って免許証の写真を入手して、勝手に名義を利用する(国民生活センター)
      荷受け代行詐欺の手口。SNSや実際に会って免許証の写真を入手して、勝手に名義を利用する(国民生活センター)

     「荷受け代行アルバイト」のトラブルが問題になっている。荷受け代行アルバイトとは「荷物を受け取って転送すると1件あたり数千円もらえる」アルバイトのことだ。

     昨年から問題になっていたが、新たに複数の被害が出ているため、東京都が5月26日に「荷受け代行アルバイトに注意!!~知らない間に自分名義で契約されたスマホやサプリの代金を請求された!~」と、サイトで注意を呼びかけている。

     東京都による相談事例は以下のような内容だ。

    荷受け代行アルバイトの詐欺相談事例(20歳代の女性)
    ・地域コミュニティーアプリのアルバイト募集に応募し、担当者と会った
    ・荷物を受け取って、回収に来た人に渡すと1回数千円のお金をもらえるとのこと
    ・住所氏名の確認のためと言われて免許証をカメラで撮影された
    ・その後、複数の携帯電話会社からスマートフォン、複数の通信販売会社から健康食品や化粧品が届いた
    ・自宅に荷物を回収に来た人に荷物を渡し、荷物の数に応じて5000円から1万5000円の報酬を受け取った
    ・2か月後に自分宛てに請求書が届いておかしいと気づいた。担当者に連絡が取れなくなった
    ・携帯電話会社7社、通信販売会社20社から請求されていて、総額100万円にもなる
    (「東京くらしWEB」より)

     募集が行われている「地域コミュニティーアプリ」とは、各地域に根ざした掲示板機能があるアプリをさす。直接会って不用品の交換や売買をしたり、趣味の仲間を集めたりすることができる。

     こうしたアプリで「荷物を受け取るだけのバイトです」「自宅でできる簡単な仕事です」などとしてアルバイトを募集していたようだ。応募者は担当者と実際に会って説明を受け、「本人確認のため」などの理由で免許証などの写真を撮影される。

     ここがもっとも危険なポイントだ。犯人グループは免許証の写真を利用し、勝手に様々な商品を申し込む。支払い名義は被害者のままで、商品だけを盗み取って転売する詐欺の手口である。

     東京都消費生活総合センターでは「コンビニや郵便局留めで荷物が受け取れる時代に、一般の人が、見ず知らずの個人に受取代行を頼むことはありません。アルバイトの応募者から入手した身分証明書を悪用し、スマートフォン等を購入するための手口です」と注意喚起している。

    荷受け代行詐欺で逮捕者も。被害額は1億円超の可能性

    • 昨年の荷受け代行詐欺では格安スマホ各社が利用されており各社が警告を出した(mineo)
      昨年の荷受け代行詐欺では格安スマホ各社が利用されており各社が警告を出した(mineo)

     この荷受け代行詐欺は、昨年から問題になっており、2016年7月に国民生活センターが注意喚起を出している。(「荷受代行」・「荷物転送」アルバイトにご注意!:国民生活センター)。

     また昨年10月には、神奈川県警が荷受け代行の詐欺グループを逮捕していたことも明らかになった。主婦らにアルバイトを持ちかけて、名義を勝手に使ってスマホをだまし取った疑いだ。報道によればスマホ数千台、約1億円に及ぶ被害の可能性があるという。

     この時は、主にツイッターやインスタグラムなどのSNSで募集し、その後にLINEなどで連絡を取って個人情報を送らせる手口だった。LINEで免許証の写真を送らせ、その名義で携帯電話会社と契約してスマホだけをだまし取る詐欺だった。

     被害はスマホに集中していたようで、格安スマホのmineoでも注意喚起をしていた(SNSを通じた「荷受代行」「荷物転送」アルバイトにご注意ください:mineo)。

     しかし今年5月の被害では、少し手口が変化している。

     まず募集をかけるのが地域コミュニティーアプリへと変わり、応募した人に実際に一度会って免許証を撮影している。荷受け代行詐欺のことが知れ渡ってしまったため、会うことで信用させる手口なのかもしれない。

     だまし取る商品もスマホだけでなく、健康食品や化粧品などが加わっているのも特徴だ。また、本人に請求書が届くことによって発覚していることから、自宅に請求書が届く形で携帯電話を契約している方法に変更されている可能性もうかがえる。

    「荷受け代行」にだまされるな。解約手数料などで負担が高額になることも

     国民生活センターと東京都はアドバイスとして、以下の3点を呼びかけている。

    ・名義貸しになり犯罪に加担することも
     「荷受け代行」や「荷物転送」のつもりが、免許証や保険証を使用されて、被害者の名義で契約されてしまう。契約されたスマホが犯罪に利用される可能性もある。
    ・詐欺でだまされたとはいえ名義人に支払い義務がある
     詐欺でだまされたとはいえ、被害者名義で契約した商品・サービスは、被害者に支払い義務がある。数千円のアルバイト代のために、高額な支払い義務が発生する可能性があるので手を出さない。
    ・免許証や保険証などを送らない、見せない
     運転免許証、健康保険証、銀行口座などの個人情報を安易に伝えない。勝手にスマホを契約されてしまった例では、解約のために手数料や端末代金として数万円から10万円以上を支払わなければならない状態になったこともある。

     繰り返すが「荷物転送」「荷受け代行」などのアルバイトには絶対に手を出さない。そして「自宅で誰でも簡単にもうけられるアルバイト」などは存在せず、詐欺の入り口だということを覚えておきたい。

    ★参考記事

    格安スマホの消費者問題とは?:サイバー護身術

    荷受け代行アルバイトに注意!!~知らない間に自分名義で契約されたスマホやサプリの代金を請求された!~:東京くらしWEB

    「荷受代行」・「荷物転送」アルバイトにご注意!:国民生活センター

    2017年06月05日 11時45分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    三上洋   (みかみ・よう
     セキュリティ、ネット活用、スマートフォンが専門のITジャーナリスト。最先端のIT事情をわかりやすく解き明かす。テレビ、週刊誌などで、ネット事件やケータイ関連の事件についての解説やコメントを求められることも多い。
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