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    ITジャーナリスト三上洋さんが、サイバー犯罪から身を守る術や情報流出対策などを解説します。

    自分のスマホで“盗撮”される!? 遠隔監視アプリから身を守るには

     スマートフォンの「遠隔監視アプリ」を悪用して、女性の行動を盗み見たとして飲食店員の男が逮捕された。女性のスマホに勝手にアプリをインストールし、盗撮・盗聴を行っていたようだ。(ITジャーナリスト・三上洋)

    機種変更後の古いスマホにアプリを設定

    • 遠隔監視アプリのテスト。iPhoneのカメラ映像・音声を、パソコンからリアルタイムで見ることができた
      遠隔監視アプリのテスト。iPhoneのカメラ映像・音声を、パソコンからリアルタイムで見ることができた

     報道によると、飲食店員の男(42)は、勤務先でアルバイトをしていた大学生の女性(20)のスマートフォンに、遠隔操作で動画を撮影したり送信したりできるアプリを入れて行動を監視したなどの容疑で6月8日、愛知県警に逮捕された。不正指令電磁的記録供用(いわゆるウイルス供用)とストーカー規制法違反の疑いだ。

     勤務先の更衣室で女性宅の鍵を盗み、3月上旬、女性宅に侵入。その際に女性が使っていなかった古いスマホを盗んだようだ。そのスマホに遠隔監視アプリを入れて、5月に再び女性宅に忍び込み、スマホを設置。5日間にわたり、動画で女性を監視したという。

     本件については、男はスマホを女性宅のリビングの机の下に隠していたが、使わなくなったスマホが充電されているのに女性が気づき、県警に相談したところ、試し撮りをする男が映っていたことから逮捕につながった――という報道もある。

     このような遠隔監視アプリの事件は度々起きている。昨年11月には全国で一斉摘発が行われ、スマホの位置情報やLINEのやり取りを閲覧できるAndroidアプリ「Androidアナライザー」を他人のスマホに入れたとして、全国の15道府県警が初めてソフト利用者を一斉摘発した。

     また2014年には、元交際相手の女性のスマホを遠隔操作して盗聴・盗撮などを行ったとして、広島県の男性が有罪判決を受けている。

    リアルタイムで映像・音声を遠隔チェック、音や振動で自動録音も

    • アプリの導入画面。スマホ側でカメラを有効にするとリアルタイム監視ができる
      アプリの導入画面。スマホ側でカメラを有効にするとリアルタイム監視ができる
    • Windowsでのアプリ画面。スマホのGPS位置情報から現在地の地図を表示することもできる
      Windowsでのアプリ画面。スマホのGPS位置情報から現在地の地図を表示することもできる

     報道によると、今回の事件では「TrackView」というアプリが悪用されたようだ。本来は自宅のセキュリティー用に販売されているもので、主に以下のような機能がある。

    ・位置情報を遠隔チェック:スマホを紛失した時などのため
    ・映像モニター:スマホカメラのリアルタイム映像・音声を外から見られる
    ・自動録画、録音機能:音や振動を検知した場合に自動で録画できる
    ・会話機能:子どもが留守番をしている時など、自宅のスマホと会話ができる

     単純に言うと「ホームセキュリティーをスマホで実現するもの」と考えればいいだろう。外出先からペットの様子を確認することもできる便利なものだ。しかし悪用されると、知らず知らずの間に盗撮されてしまう怖いアプリだ。

     筆者がこのアプリを試してみたところ、iPhoneでも不正改造(いわゆる「脱獄」)なしで利用できた。従来、iPhone用アプリは、アップル社の審査が厳しいため監視アプリはあったとしても不正改造が必要といわれることが多かったので驚きだ。

     今回の事件でiPhoneが使われたかどうかは分からないが、iPhoneにアプリを入れた状態で、パソコンから同じアプリ・同じアカウントで接続すると、カメラ映像と音声をリアルタイムで見聞きすることができた。インカメラ・アウトカメラを遠隔で切り替えることができ、かつ音声も聞こえた。

     ただし筆者の「実験」では、操作ロックのかかったスタンバイ状態では動作せず、またアプリを閉じると無効になった。そのため、誰かのことを盗聴・盗撮しようとした場合、その人が普段使っているスマホにアプリを忍び込ませても、スタンバイ状態にされるとアウトだ。またスマホの電池も消費するため、常にスマホを充電しておく必要がありそうだ。

     犯人がスマホを盗んだ後、改めて侵入して設置しているのは、この準備があったからだと思われる。

    使い終わった古いスマホに注意。セキュリティー対策を怠らない

     今回の事件のように、スマホを盗まれると遠隔監視される危険性が高まる。Androidでは、本人に気づかれにくい形で動く遠隔監視のアプリもある。改めてスマホの安全対策をまとめておこう。

    ●ストーカーや盗撮・盗聴を防ぐためのスマホ安全対策

    ・使い終わったスマホも操作ロックをかける
     機種変更後の古いスマホに注意。今回のような監視アプリを勝手に入れられることを防ぐために操作ロックをかけておく。暗証番号は誕生日や電話番号を避けて複雑なものに。
    ・機種変更後はバックアップを取って初期化を
     機種変更後の古いスマホは、盗み読みされないよう、バックアップを取った上で初期化を。
    ・親しい友人や家族であってもスマホを渡さない
     交際している異性がアプリを入れて監視していた事件も起きている。

     現在使っているスマホのセキュリティーには注意する人が多いが、使わなくなった古いスマホは見逃されがちだ。機種変更後の古いスマホ・携帯電話の管理は厳重にしたい。

    ★参考記事

    他人のスマホ、のぞき見した女性は3割…利用調査:サイバー護身術

    スマホ写真の位置情報やSNSへの位置投稿は危険:サイバー護身術

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    2017年06月16日 16時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    三上洋   (みかみ・よう
     セキュリティ、ネット活用、スマートフォンが専門のITジャーナリスト。最先端のIT事情をわかりやすく解き明かす。テレビ、週刊誌などで、ネット事件やケータイ関連の事件についての解説やコメントを求められることも多い。
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