まさか「豚インフルエンザ」とは、想定外の感染拡大感染が拡大して、世界的な大流行に発展することが懸念されている豚インフルエンザ。アジアの高病原性鳥インフルエンザを警戒していた各国政府にとっては、想定外の事態だ。 メキシコ政府はなぜ、感染拡大を防げなかったのか。そもそも豚インフルエンザとは、どんな病原体なのか。 ◆メキシコ対応遅れ◆ 「異常なインフルエンザの発生によって、今年に入り、全国で20人が死亡した」。メキシコ保健省がこう発表し、注意を呼びかけたのは4月22日だった。しかし、この時は、深刻なものではないとして具体的な対策は取らなかった。 メキシコでは例年2月末から3月初めにかけて、季節性インフルエンザが発生する。ところが今年は、首都メキシコ市を中心に4月以降も感染や死者が相次いで報告されていた。 コルドバ保健相によると、最初の症例が見つかったのは4月13日。メキシコは独自に正体を解明することができず、カナダの保健当局にウイルスの検査を依頼。結果の連絡を待つ間に、感染は約1000人(23日現在)に拡大した。 ◆急きょ「封じ込め作戦」◆ 23日午後になって、カナダの保健当局などからウイルスの分析結果が届くと、メキシコ政府は急きょ、メキシコ市と隣接するメキシコ州にある幼稚園から大学まですべての教育施設約3万校の休校を決める。 美術館や博物館などの公共施設も閉鎖し、感染者と接触する可能性を最小限にとどめる「封じ込め作戦」だ。コルドバ保健相は「10日以内には、感染の推移を見極められるだろう」と話しており、公共施設の閉鎖はしばらく続く見通しだ。 ただ、地元紙ウニベルサル(電子版)は、「カナダの男性がメキシコ旅行から帰国後、豚インフルエンザへの感染が判明した」と報じており、すでに感染は広範な地域に広がっている恐れもある。感染拡大が続けば、周辺国でメキシコへの渡航自粛などの措置が取られる可能性もある。 ◆病原体の正体◆ 日本人にとっても、豚インフルエンザなどというウイルスは聞き慣れない名前だ。新型インフルエンザは、野鳥や A型の表面には、「H」(16種類)と「N」(9種類)と呼ばれる2タイプのトゲがあり、それぞれの組み合わせで計144種類に分類される。人間が毎年のように感染するのは、Aソ連型(H1N1)とA香港型(H3N2)の2種類だ。 これに対し、各国政府が新型に変わるのを最も懸念していたのは、鳥や家禽でまず流行し、アジアを中心に2003年ごろから、人間への感染が増えている高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1型だった。人間は過去に感染したことがなく、免疫を持たないため、若者を中心に感染者の6割が死亡したためだ。 ◆日本上陸の可能性も◆ 今回の豚インフルエンザは、メキシコで犠牲者が広がる一方、米国では感染者の症状が軽症にとどまっている。米国のように症状が軽い場合、流行しても季節性のインフルエンザとして医療機関で扱われている可能性がある。 メキシコでは過去数週間にわたって流行が続いている可能性があり、「人間の往来が激しい現代では、日本にもすでに上陸している可能性がある」と指摘する専門家もいる。 メキシコと米国で確認された豚インフルエンザは、ともにH1N1型だった。人間の間で毎年流行するAソ連型と同じタイプだが、日本政府が新型用に準備しているワクチンはH5N1型ウイルスを基にしているため、H1N1型には効果がない可能性が高い。 国立感染症研究所は日本国内の実態把握を急ぐため、米疾病対策センター(CDC)などから、ウイルスの遺伝子を取り寄せる方針だ。国内のインフルエンザ感染者も調査し、侵入の有無を確認する態勢作りを急いでいる。(リオデジャネイロ・小寺以作、科学部・高田真之) (2009年4月26日13時19分 読売新聞)
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