国際化(5)技術外交、途上国ときずな![]() タイでの実験に向け水質浄化装置を準備する山本教授(右)
環境・防災…共同で研究「この装置は、水温が高い熱帯だと、性能が上がるはずなんです」。今月11日、日本とタイが、汚水処理技術の共同研究に取り組むプロジェクトが始まった。責任者を務める東京大環境安全研究センターの山本和夫教授は、日本の浄化装置を一日も早くタイで試したくて、うずうずしている。 微生物を使った排水処理を研究する山本さんは、発展途上国のために、安価で維持管理に手間がかからないシステムの開発に挑んでいる。タイもそんなシステムを欲する国の一つ。都市部を中心に急速に近代化が進み、生活排水や工場廃水などによる水質汚染が、深刻な問題になりつつある。 下水から汚泥を除き、トイレの洗浄に再利用する一方、汚泥を微生物に分解させてメタンガスを作り、燃料に使う。技術を適切に組み合わせれば、使用電力が既存システムの数分の一で済む。「日本の成果を活用しながら、熱帯に適した新しい水再生技術を生み出したい」。共同研究の相手、タイ・カセサート大のチャート・チェムシャイシー准教授の期待も大きい。 山本さんは、20年前からタイと交流を続け、チェムシャイシーさんのような研究者を受け入れてきた。帰国して政府職員になった留学生もいる。地元企業や政府も巻き込み、社会基盤となる技術を構築することが目標だ。 科学技術を外交強化に活用する「科学技術外交」。科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)は昨年、環境・エネルギー、防災、感染症などの研究を支援先の途上国と共同で行う事業をスタートさせた。昨年度は、山本教授の計画のほか、海面上昇で海に沈む恐れがあるツバルの国土保全、氷河湖の決壊と洪水が心配されるブータンでの災害対策など12件、今年度は21件の事業を選んだ。 これまでの政府開発援助(ODA)と違うのは、単に技術を提供するのではなく、両国の研究者が協力し、新技術を作り上げていく点。現地で研究者が育てば、科学技術のすそ野拡大にも役立つ。「双方にメリットがある関係を作り上げたい」と、JSTの井上孝太郎上席フェローは強調する。 今年3月にJSTが開いた科学技術外交のシンポジウムでも、「日本の経済力にかげりが見えてきた今、文化や科学技術をもっと活用していくべきだ」といった意見が相次いだ。 部分的な取り組みは始まったものの、科学技術外交はまだ手探りの段階だ。何をどう展開すればよいのか。省庁間の垣根を超え、議論を深めたい。科学立国の名に恥じない支援をするために。(おわり) ◇ この連載は、杉森純、吉田典之が担当しました。 (2009年5月17日 読売新聞)
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