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    西方への憧れ感じる造形…3点並ぶ長坏 唯一の国産品

     奈良市の奈良国立博物館で13日まで開かれている「第69回正倉院展」(主催・奈良国立博物館、特別協力・読売新聞社)には、長楕円だえん形の杯「長坏ちょうはい」が3点並ぶ。ゆるやかな曲線を描くフォルムはいかにも異国風だが、うち1点は日本で作られたもの。当時の人々が抱いた、はるか西方への憧れを感じさせる逸品だ。(松浦彩)

     今回出展されている坏は、濃い緑色のガラス器「緑瑠璃十二曲長坏みどりるりのじゅうにきょくちょうはい」、霊力が宿るとされた白乳色の石材「ぎょく」を用いた「玉長坏ぎょくのちょうはい」、金メッキが施された「金銅八曲長坏こんどうのはっきょくちょうはい」。中国に移住したイラン系民族・ソグド人の墓からは、八曲長坏などを手に宴会を楽しむ様子を描いたレリーフが見つかっており、これらのデザインが西域からもたらされたことがうかがえるという。

     このうち、金銅八曲長坏は国内で作られたと考えられている。正倉院に伝わるほぼ同形の金銅八曲長坏に、蛍光エックス線分析調査を行ったところ、中国産の銅にはほとんど含まれないヒ素が含まれていることが確認されたからだ。

     金銅八曲長坏の高台や器の縁の形は、中国風に作られている。吉澤悟・同博物館列品室長は「ペルシャの影響を受けて中国で作られた器が日本に伝わり、それを工人が模したのではないか。文化の波及が見て取れる」と分析する。

     内側に細かい傷が付いているものもあるが、ソグド人のレリーフにあるように、三つの長坏が実際に宴会で用いられたかどうかまでは分からない。吉澤室長は「一族の繁栄など、大きな願いを込めて奉納され、宝物として大切にされたのではないか」と話している。

    2017年11月09日 10時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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