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隕石に込められた宇宙の姿残された太陽系誕生時の「記録」
小惑星の分布の様子。黄色い点は、黄道面上の小惑星 を示しています。中心の太陽と惑星の軌道が書かれています=水星:Mercury、金星:Venus、地球:Earth、火星:Mars、木星:Jupiter、>:彗星、を表しています。(NASA提供)
地上に落ちた隕石の大部分は、火星と木星の間にある小惑星帯から地球に飛来したとされています。 このことは、隕石が落下した軌道を計算でたどったり、小惑星と隕石の成分が似ていることを間接的に調べたりすることから確かめられています。 小惑星帯には、岩石でできた小天体が無数に分布しています。発見されている小惑星のほとんどは火星と木星の間を回っているのですが、意外にも一部の小惑星は地球に接近する軌道をもっています。小惑星同士がぶつかった衝撃などで、その破片が隕石として地球に飛んでくるのかもしれませんが、詳しいことは分かっていません。 膨大な数の小惑星は、木星の大きな重力に邪魔されて1つの天体になれなかったと考えられています。しかし、1つの惑星になれなかったおかげで、私たちは小惑星のかけらである隕石の中に、太陽系初期の「記録」(鉱物や構造、成分など)を見つけ出すことができるようです。 1つになれた惑星では、その岩石にどのような変化が起きたのでしょうか。地球やその他の太陽系の惑星などは、天体の内部が高温になっており、一部は岩石が溶けてマグマとなっています。表面にある岩石も、かつては地中の深いところで溶けた後に、火山活動などによって地表に露出して冷えて固まったのです。 太陽系初期の「記録」も、最初は岩石の中に封じ込められていたのかもしれませんが、一度溶解して様々な物質が混ざり合ってしまったために、消えてしまったのです。その星が誕生したばかりの時にみられたであろう岩石中の痕跡すらも残っていません。
炭素質コンドライトのマーチソン隕石の一部。マーチソン隕石は1969年9月28日にオーストラリア・ビクトリア州のマーチソン村付近に落下した約100 kgの隕石です。その一部を研究に利用しています。(提供・横山哲也博士)
1つの大きな星になれなかった小惑星の場合、誕生以来、岩石が溶ける温度に達したことはないか、あったとしてもごく短期間だったようです。天体内部の温度は一般に大きな星ほど高くなります。小惑星は小さいため、岩石が溶ける温度にまで上がらなかったことが多いのです。このため、小惑星の岩石は、誕生した時そのままの姿を残しています。外見上は地球の岩石と似ていますが、隕石には太陽系初期の歴史が刻まれていると考えられるゆえんです。 ところで、隕石は、その成分によって、石質隕石、石鉄隕石、鉄隕石に分けられます。石質隕石は主に岩石からできた隕石、石鉄隕石は岩石と鉄からできた隕石、鉄隕石は主に鉄からできた隕石です。石質隕石は、主にコンドリュール(直径が数ミリ以下の岩石質の丸い粒)の有無によって、コンドライトとエコンドライトに分けられます。コンドリュールを含む隕石はコンドライト、含まない隕石はエコンドライトといわれます。 これまで地球に落下してきた隕石は、判明しているだけでも3万5000個以上あるとされています。そして、その8割以上はコンドライトが占めています。コンドライトは、他の種類に比べて古い隕石です。太陽系の誕生時に直径数百キロほどとなった小天体のかけらがコンドライトだとみられています。 天体が小さくて岩石は溶解しなかったため、小天体が作られた時の「記録」とともに、小天体ができる以前の「記録」も残っているのです。 コンドライト以外の隕石は、直径千キロメートルほどの小天体の破片とされています。このくらいの大きさになると、短い期間ですがその岩石は溶解されており、小天体が作られたときの「記録」は残っていますが、小天体ができる前の「記録」は失われています。 コンドライトには、コンドリュールの他に、カルシウムとアルミニウムを含む物質(CAI)が見られます。カルシウムとアルミニウムは融点が高いために、高温から温度が下がってきたときに最初に固体になる元素です。太陽系の誕生時には太陽周辺はかなりの高温に達していたと考えられています。このような条件下で最初に固まってできた物質、つまり最も古い物質がカルシウムとアルミニウムからなるCAIとされているのです。この最も古い物質と考えられるCAIは、近年の精密な年代測定から約45億6700万年前にできたことが分かり、太陽系もその頃にできたものと推測されています。 コンドリュールは、1500度以上の高温まで瞬間的に加熱されたのち、急激な温度低下で一気に固まってできた、とされています。その熱源については未だ議論の的ですが、できた時期は、CAIができてから約200万年後のようです。それらが、太陽から遠くて温度の低い領域に運ばれ、そこで生まれた天体の破片がコンドライトではないか、という説もあるようです。CAIやコンドリュールは、隕石に残る太陽系誕生時の「記録」の代表的なものと言えそうです。 太陽系誕生前に生まれた粒子もコンドライトには、プレソーラー粒子と呼ばれる、数ミクロン(1ミクロンは1/1000ミリ)以下の小さな粒子がごく微量ですが含まれていることがあります。実は、このプレソーラー粒子は太陽系誕生前にできた物質である、と研究者たちは考えているのです。その理由を、プレソーラー粒子の特徴から探ってみましょう。 プレソーラー粒子の物質の組成(同位体の組成)は随分と変わっています。2次イオン質量分析計という超高精度の測定機器を用いて、隕石の一部から得られた粉末を丹念に調べていくと、プレソーラー粒子が見つかることがあります。太陽系の惑星や他の隕石と比べて、同位体組成がまったく異なることが発見の手がかりとなります。 聞きなれない言葉ですが、同位体とは何でしょうか。例えば酸素(O)の場合、酸素原子の大部分は、陽子が8個と中性子が8個からできています。しかし、同じ酸素原子でも陽子は8個で中性子が9個、あるいは中性子が10個のものが、ごくわずかに存在しているのです。普通は陽子の数と中性子の数は同じなのですが、中性子の数が多いものをあわせて酸素原子の同位体と呼んでいます。そして、ある物質の組成を調べたときに、さまざまな同位体がどのような比率で含まれているのかを示すのが同位体組成となります。 太陽系のさまざまな物質に含まれる元素の同位体組成はほぼ一定です。つまり、ある物質の同位体組成が大きく異なるということは、その物質は太陽系以外の場所でできた可能性を示しています。これまでの研究から、プレソーラー粒子は、太陽系誕生前に存在していた恒星の超新星爆発で飛び散った星くずの一部ではないか、とみられています。 ここで、太陽系が誕生する前の様子を想像してみましょう。恒星の末期に放出された物質は、重力によって次第にあつまり、次世代の太陽系となる分子の雲になります。太陽系が誕生する以前に、ある別の恒星が超新星爆発を起すと、その恒星からもさまざまな物質(この中にプレソーラー粒子も含まれている)が放出され、やがて太陽系にも達して太陽系誕生時の材料になった、と考えられているのです。つまり、太陽系が誕生する前に存在していた恒星の星くず、それがプレソーラー粒子であり、プレソーラー粒子は約45億6000万年前とされる太陽系の誕生より前の「記録」といえるのです。 最近の研究では、数種類のプレソーラー粒子が発見されていて、複数の異なる同位体組成を持つことが明らかにされています。このことは、太陽系は、複数の恒星の超新星爆発などによって飛び散った物質が、誕生時の材料となった可能性を示しています。 中心にある太陽、地球のように岩石が多い惑星、木星のようにガスが多い惑星、小惑星、衛星など、太陽系のさまざまなタイプの天体がどのようにできたのか――。そんなことを含めた太陽系誕生の謎を解く上で、隕石の研究がとても重要な鍵を握っているようですね。隕石の中には、太陽系の進化や銀河系の進化といった宇宙で起きた壮大なできごとを知る手がかりがしっかりと記憶されているのです。 (2009年6月1日 読売新聞)
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