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電波望遠鏡ALMA計画、120億年の宇宙の歴史探る

南米チリで建設が進む電波望遠鏡ALMA(アルマ)の完成予想図(国立天文台提供)

 南米チリの標高5000メートルの高地で、宇宙からの電波を受信する電波望遠鏡の建設が進んでいる。日米欧の国際協力によるプロジェクト「ALMA計画」(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array=アルマ)だ。国立天文台でプロジェクトを率いてきた石黒正人教授が「東京テクノ・フォーラム21」(代表=老川祥一読売新聞東京本社社長・編集主幹)の研究交流会でALMAの意義や展望などを語った。

講演する国立天文台の石黒正人教授=岩波友紀撮影

 肉眼や光学望遠鏡では、太陽のように自ら光っている星や、月のように光を反射している星しか見えない。目に見える光の波長は0・001ミリ・メートル以下だ。

 これに対し電波望遠鏡では、宇宙から飛んでくる電波を捕らえて、目には見えないものを可視化する。ALMAは、可視光より500倍程度波長が長い0・3ミリ・メートルから9・6ミリ・メートルの電波を検出する。当面は0・3から3・0ミリ・メートルの範囲での観測となるが、見えないものが見えるようになる。

 石黒教授は国立天文台のALMA推進室長を務めた後、2007年11月から先月まで1年4か月間、チリに滞在し、ALMAの建設に携わった。

 建設の意義について石黒教授は「電波望遠鏡を使えば、星が輝き始める前にガスがたまっている様子や、暗黒星雲と呼ばれる星間分子の雲なども見える。星の形成や、惑星系の誕生の経緯の解明につながる」と指摘。「宇宙の歴史を120億年前までさかのぼれるようになる」と期待する。

 計画では、直径12メートルのパラボラアンテナ68台と、直径7メートルのパラボラアンテナ12台の計80台を高地に並べる。それぞれのアンテナは専用の運搬車に載せて移動でき、観測対象に合わせて最適な位置に設置することが可能だ。

 これらのアンテナの観測データを組み合わせてコンピューターで解析することで、あたかも直径18キロ・メートルの巨大なひとつのパラボラアンテナのような観測結果が得られる。

 解像度は「東京から約500キロ・メートル離れた大阪にある1円玉が見えるぐらい」だという。米航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関が宇宙に設置している「ハッブル宇宙望遠鏡」や、国立天文台がハワイに設置した「すばる望遠鏡」のような高性能の光学望遠鏡の10倍以上だ。

 昨年12月19日、ALMAの第一号のアンテナとして、日本のアンテナが設置され、今年1月22日には月からの電波を受信することに成功した。完成は2012年の予定だが、来年あたりから少しずつ観測成果が出始める予定だという。

 実は、これまでのALMA計画の推進には、紆余(うよ)曲折があった。構想が出てきたのは1983年。最初は日米協力で計画を進めていたが、90年ごろから欧州が参加。日米欧の国際協力プロジェクトになった。

 ところが、米欧がすぐに予算を用意できたのに対し、日本は小泉内閣の構造改革の余波で、大型研究予算がなかなか通らなかった。このため、2002年にまず米欧の予算で建設が始まり、日本は2年遅れの04年から本格的な予算が付いて、途中から合流する形になった。

 石黒教授は「日本だけが会議の場で決断できず、持ち帰って文部科学省を通じて財務省から予算をもらわないといけない。米欧はそれぞれ、毎年100億円ぐらいは自分たちの意思で自由に使える。この違いは大きい」と話す。

 「当時、海外の知り合いの研究者からは、結婚式場で花嫁を奪われたようなものだと言われた」と石黒教授。遅れて参加した日本は、今では米欧に追い付き、追い越した状況というが、ALMA計画の歴史からは、国際的な大型科学研究を滞りなく進める上での教訓が読み取れる。(中島達雄)

2009年3月30日12時15分  読売新聞)
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