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Road to TOKYO

アジア選手権のボルダリング、リードで藤井快選手が優勝、女子2選手も

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ボルダリング男子で表彰台を独占。1位の藤井快選手(中央)、2位の緒方良行選手(左)、3位の渡部桂太選手

女子リードも日本勢が圧勝。1位の尾上彩選手(中央)、2位の野口啓代選手(左)、3位の小武芽生選手

 9月18~21日にイラン・テヘランで行われた「IFSCクライミングアジア選手権 テヘラン大会」で、藤井快(こころ)選手が男子ボルダリング、同リードで2冠を達成。女子もリードで尾上彩選手、ボルダリングで野口啓代(あきよ)選手が優勝するなど、好成績を上げた。スピード種目ではいずれも下位となった。

日本人選手の主な成績は以下の通り(敬称略)

  • ボルダリング
    <男子>
    1位:藤井快、2位:緒方良行、3位:渡部桂太、4位:楢崎智亜
    <女子>
    1位:野口啓代、2位:尾上彩
  • リード
    <男子>
    1位:藤井快、3位:緒方良行
    <女子>
    1位:尾上彩、2位:野口啓代、3位:小武芽生
  • スピード
    <男子>
    19位:楢崎智亜
    <女子>
    22位:野口啓代

2017年8~9月 世界ユース選手権@オーストリア・インスブルック 日本勢は参加国トップの金8、銀9、銅7の計24のメダルを獲得

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ボルダリング女子ユースBで優勝した伊藤ふたば選手(中央)、2位の谷井菜月選手(左)、3位の菊地咲希選手(右)

リード女子ユースBで、優勝した森秋彩選手(中央)、2位の谷井菜月選手(左)、3位の伊藤ふたば選手

コンバインド女子ユースBで優勝した谷井菜月選手(中央)、2位の森秋彩選手(左)、3位の伊藤ふたば選手

リード男子ジュニアで優勝した緒方良行選手(中央)と2位の楢﨑明智選手

 2020年東京オリンピックの追加競技に決まったスポーツクライミングで、14~19歳の若手選手らが競う「IFSC世界ユース選手権」が8月30日~9月10日まで、オーストリア・インスブルックで開催された。日本勢は素晴らしい活躍を見せ、参加国中トップの金8個、銀9個、銅7個の合計24個のメダルを獲得した。2020年東京オリンピックに向け、トップアスリートの卵たちの飛躍に期待が持てそうだ。

 メダル獲得ランキングの国別2位はアメリカの14個(金5、銀3、銅6)、3位はロシアの15個(金4、銀7、銅4)。

 今大会には世界55か国・地域から1172人が参加し、日本代表選手は20人だった。選手らはジュニア(1998年、99年生まれ)、ユースA(2000年、01年生まれ)、ユースB(2002年、03年生まれ)に分かれ、リード、ボルダリング、スピード、コンバインド(前3種目の複合)の各種目に挑んだ。

 日本勢の中でも女子ユースBは、ボルダリング、リード、コンバインドの3種目で日本勢が表彰台を独占した。残念ながらスピード種目でメダルを獲得できなかったが、東京オリンピック方式のコンバインドで男女とも好成績を上げたのは将来に向けていい兆しといえそうだ。

日本選手の1~3位の結果は以下の通り(敬称略)

  • ボルダリング
    <男子ユースA>
    2位:土肥 圭太、3位:田嶋 瑞貴
    <男子ジュニア>
    1位:緒方良行、2位:楢﨑 明智
    <男子ユースB>
    1位:川又玲瑛、3位:抜井亮瑛
    <女子ユースB>
    1位:伊藤ふたば、2位:谷井菜月、3位:菊地 咲希
  • リード
    <男子ユースB>
    3位:西田秀聖
    <女子ユースB>
    1位:森秋彩、2位:谷井菜月、3位:伊藤ふたば
    <男子ユースA>
    1位:田中修太
    <男子ジュニア>
    1位:緒方良行、2位:楢﨑明智
    <女子ジュニア>
    2位:田嶋あいか
  • コンバインド
    <男子ユースB>
    2位:川又玲瑛、3位:西田秀聖
    <女子ユースB>
    1位:谷井菜月、2位:森秋彩、3位:伊藤ふたば
    <男子ジュニア>
    1位:楢﨑明智、2位:緒方良行

競技紹介・みどころ

競技紹介

楢崎智亜選手

 1989年に初めて正式な国際大会(ワールドカップ)が開催され、世界選手権が91年にスタートした、まだ歴史の浅い競技。自然の岩場を登るロッククライミングのうち、道具に頼らず自分の手足だけを使って挑むフリークライミングがルーツだ(落下時に安全を確保するためのロープなどは装着する)。

 国際スポーツクライミング連盟(IFSC)認定の公式種目は、「ボルダリング」「リード」「スピード」の三つ。岩場に模した人工的な壁を、突起物(ホールド)を手掛かりに登り、ボルダリングは課題達成度(登り切った回数)、リードは到達した高さ、スピードは時間をそれぞれ競う。

 東京オリンピックでは、1人の選手が3種目すべてを行い、総合成績で競う「複合競技(コンバインド)」の形で開催される。2016年の世界選手権男子ボルダリングで楢崎とも選手が日本人初の優勝をするなど、日本選手はボルダリングやリードでは世界でもトップクラスの活躍を見せている。一方、スピードは国内競技施設の整備が遅れるなど、日本選手があまり得意としない。スピードを強化し、総合力を向上させることが期待されている。そして、今後は五輪競技方式の「コンバインド」種目がより注目されていくことになるだろう。

 日本山岳・スポーツクライミング協会(JMSCA)によると、スポーツクライミングの競技人口はボルダリングを中心にここ数年で急増し、愛好者推計60万人。ジムは2017年3月時点で全国476か所に及ぶという。

※東京大会のルールや試合形式の詳細は未定(2017年8月現在)。

みどころ

1 「ボルダリング」~体を使ったチェス

2017年5月に、東京・八王子で開催された「IFSCクライミング・ワールドカップ」

野口啓代(あきよ)選手

 高さ5メートル以下の壁にホールド(突起物)を設け、最大12手程度の複数のコース(課題と呼ばれる)を制限時間内にいくつ登れたかを競う。個人戦。ゴールホールドを両手で触り安定した姿勢を取れば「完登」。ロープやハーネスは装着せず、地面には落下時の衝撃吸収マットが敷かれている。両手両足を置く場所や姿勢を考えながら動く頭脳プレーだ。「体を使ったチェス」とも言われる。

 予選と準決勝までは、「5分間の競技」と「5分間の休憩」を交互に繰り返す「ベルトコンベア方式」が一般的。決勝は、1課題に対して全選手が「4分間の競技」を終えた時点で次の課題に移る「ワールドカップ決勝方式」のことが多い。どんな課題かは試合当日に初めて知る。他の選手のトライを見ることはできない。

上位に入るには、少ないトライ数で登ることも重要
ボーナスが勝敗を分けることも

※ボーナス(ポイント)…各ルート中に設定されているボーナスホールドを保持した時につくポイントのこと

スコア表の見方

2 「リード」~持久力と戦略が勝敗を左右

リードの壁(2017年4月、東京都昭島市のモリパークアウトドアヴィレッジで)

森秋彩(あい)選手

 高さ12メートル超の壁につくられた最長60手程度のルート(コース)を、制限時間でどの高さまで登れたか(到達高度)を競う。個人戦。

 選手はロープとつながったハーネスを装着し、途中の支点にロープをかけて安全を確保しつつ登り、最後の支点にロープをかけると「完登」となる。

 最も長い距離を登る種目のため、「持久力」が勝敗を分ける。最初から最後まで全力で登り続けられる距離ではないため、最小限の力で重力に打ち勝ち、自身の高度を上げていく「テクニック」や無駄な動きを省き、長い距離の中でも自身の動きをいかにコントロールしていくかなどの「戦略性」も問われる。

 墜落、時間切れ、反則の場合、その時点での高度が到達高度になる。ルートには、下から順番にホールドに番号がふられており、何番目まで到達できたかの数字がスコアとなる。基本的に他の選手のトライを見ることはできないが、予選ではあらかじめ実際にもしくはビデオでデモンストレーションを見ることができる。

勝つためには、一手でも先に到達すること
カウントバックにより準決勝での順位で勝敗が決まることも

※カウントバック…前ラウンドでの順位が高い選手を優先する仕組み

スコア表の見方

3 「スピード」~高さ15メートルの世界記録は5秒台

高さ15メートルのスピード種目の壁。ボルダリング、リードと合わせ3種目の壁すべてを常設した施設は国内で初めてという(2017年4月、東京都昭島市のモリパークアウトドアヴィレッジで)

 高さ15メートルまたは10メートルの壁で、あらかじめホールドの配置が周知されているコースをどれだけ速く登るかを競う。ロープの支点は終了地点付近のみで確保するトップロープスタイルで、選手はこのロープとつながったハーネスを装着して登る。並んだ2人が競う、1対1の戦い。

 選手たちは、同じルートで何度もトレーニングを行い、動きを体にしみこませている。2人のクライマーが隣り合わせで登り勝ち抜き方式で競うため、対戦相手からのプレッシャーをはねのけ、どれだけ自分の登りに集中してベストタイムを出すか、という心理戦でもある。

 2017年7月現在の世界記録(15メートル壁=4、5階建のビルに相当)は、男子が5秒48(レザー・アリプアシェナ選手、イラン)、女子が7秒32(ユリヤ・カプリナ選手、ロシア)。10メートルの壁は現在、国際大会では使用されていない。

2020×You

世界の頂へグイグイ

伊藤ふたばさん

プロフィル

2002年4月生まれ、盛岡市出身。16年のボルダリング・ジャパンカップで4位に入ると、17年の同カップを14歳9か月で史上最年少優勝。リードの日本選手権では4位に入った。盛岡市立松園中3年。1メートル60、44キロ(2017年7月時点)。

 すらりと長い手足を存分に使い、難しい課題をクリアする姿は、ボルダリングのワールドカップ(W杯)で4度総合優勝に輝いた野口啓代(あきよ)(茨城県連盟)を連想させる。「啓代ちゃんみたいな動きがしたいなと練習していたら、似たような動きになった」と笑顔を見せる。

 一躍注目を浴びたのが、その野口を上回り、最年少優勝を果たした今年1月のボルダリング・ジャパンカップだ。長身で軽量という恵まれた体格に高い柔軟性が合わさり、年上の世代と同等に戦うだけの実力を持つ。

 スポーツクライミングと出会ったのは、小学3年の頃。父・崇文さんと一緒に自宅近くの施設に行ったのがきっかけ。元々、ジャングルジムで遊ぶなど高い所が大好きだったこともあり、「やっていくうちに、登れた時の達成感がすごく楽しい」と夢中になった。

 クライミング少女が狙うのはもちろん東京五輪。ボルダリングに加え、到達高度を争う「リード」、速さを競う「スピード」の3種目の複合で行われる難しさはある。それでも、「追加種目に決まった時は実感が湧かなかったけど、出るからにはメダルを取りたい」。伸び盛りの15歳が狙うのは、世界の頂だ。(上田真央)