新幹線開業から半世紀
そのネットワークは全国に広がった
そして2015年春、新しい「超特急」が北陸へ走り始める
その列車は「かがやき」と名付けられた
新しい新幹線に乗り込んで旅に出よう
長野を出て、新潟、富山、金沢へ
新しい出会いが待っているはずだ
東 京

長野

善光寺の門前町に交流の場を

カフェの前で「多くの人が集う場所にしたい」と話す寺久保さん

 長野市の古刹(こさつ)・善光寺の門前町にある路地「新小路(しんこじ)」。一歩足を踏み入れると、広い軒下の目立つ大きな屋根が見えてくる。半年前、事務所やアパート、カフェとして“再出発”した築44年の3階建てビルだ。寺久保尚哉さん(49)が、設計やデザインの専門家と一緒に、この再生を手がけた。

 5年前に郷里の県内で不動産会社を設立。「まちの再生を支援したい」と思った。

 2012年秋、新小路の両脇に立つビル4棟から事務所などが撤退し、売却されると聞いた。「県や市の支援を受けなくても、民間主導で建物を再生できるはず」と考え、翌年夏にこれらを購入。「SHINKOJIプロジェクト」を仕事仲間と結成し、どう生かすかの知恵を絞った。

 かつての社員食堂は、全7部屋のアパートに生まれ変わった。古いものを生かせば味も出る。厨房(ちゅうぼう)は共用の台所にし、近所の診療所で不要になった木製扉を各部屋に取り付けた。2014年3月に入居募集を始めると、問い合わせが相次いだ。

 温かみのある木製デッキが特徴のカフェも4月にオープン。共有して使える事務所「シェアオフィス」は、間仕切りをなくした。「起業家同士が気軽に、悩みなどを話し合える場にしたい」と思ったからだ。

 カフェ隣のホールでは6月、サッカーW杯ブラジル大会のパブリックビューイングが開かれ、日本代表の試合に多くのサポーターが声援を送った。8月には倉庫だった建物を改装し、創作活動や展示に使える「芸術・ものづくり棟」としてオープンさせた。

 路地には、一度は消えかけた明かりが再びともっている。「住民たちや観光客がここで交流できれば、きっと新たな文化が生まれる」。そう信じ、これからも活動を続けるつもりだ。

(2014/11/16 長野県版の記事より。年齢は掲載日のものです)

飯山

いいやま住んでみませんか?

豪雪地帯に立地する飯山駅(本社機より)

 長野県飯山市は2006年、「いいやま住んでみません課」(2015年4月から移住定住推進課に改称)を新設し、交流移住事業に取り組んできた。1~2泊で田舎暮らしを体験する「まなび塾」や「百姓塾」に加え、2週間~半年の長期滞在「お試し田舎暮らし体験プラン」へとステップアップする事業を用意してきた。2013年度までに東京や大阪などから111世帯、333人が移住している。同課は「新駅開業で、平日は東京、週末だけ飯山に住むなどの二地域居住も増える可能性がある」と期待を寄せる。

 観光面でも、豪雪地帯の自然を生かした森林セラピーや人間ドックを組み込んだ健康ツーリズムなど滞在型観光を提案。トレッキングやスキーなど、エコツーリズムの普及にも力を入れてきた。

 新駅には、野外活動の情報を提供し、スキー板や自転車を貸し出す「山岳高原アクティビティセンター」が設けられる。駅で降りた人の交通の便を確保しようと二次交通も充実させる。志賀高原や斑尾高原、妙高高原(新潟県)を結ぶ路線も新設される。

◆ ◇

 「和紙作りが好きで、移住先として興味を持ったのが飯山市。今は、ふるさとのような場所になりました」。さいたま市の50歳代女性は話す。

 飯山市は国内有数の豪雪地で、約350年前から冬の副業として「内山紙(うちやまがみ)」と呼ばれる和紙作りが盛んだ。

 女性は過去に、飯山市の農業体験に参加した。田植えに畦草(あぜくさ)刈り、収穫――。2014年は月に1度、会社員の夫と2人で汗を流し、アスパラやサツマイモなどの新鮮野菜を自宅に持ち帰った。

 「新幹線が開業すれば、首都圏から気軽に行き来できる。飯山で家が見つかれば、私だけ先に移り住み、和紙作りを楽しみたいと思います」。女性は思いを巡らせる。

(2014/8/29、10/16長野県版の記事を再編集しました)

上越妙高

ストックは竹1本

レルヒ像を前に一本づえスキーを披露するレルヒの会の会員ら

 日本にスキー技術を初めて伝えたオーストリア・ハンガリー帝国の軍人、レルヒ少佐(1869~1945)をたたえる「レルヒ少佐顕彰会」が、上越市大貫の金谷山で、毎年1月12日に行われている。

 顕彰会は、レルヒ少佐が1911年、同市で旧日本陸軍にスキーを最初に教えた日を記念したもの。

 金谷山のレルヒ像前では、レルヒ少佐の功績を伝えている「レルヒの会」の会員が、「一本づえスキー」を披露。男性はコートに帽子、女性は着物にはかま姿で、約2メートルの竹製のつえを巧みに操る。

 同会は「日本のスキー発祥の地であることを、北陸新幹線で訪れる人たちにも知ってもらい、スキー文化の発展につなげていきたい」と話している。

(2015/1/13 新潟県版の記事を再編集しました)

糸魚川

糸魚川 ヒスイの産地 古代から

「日本海に最も近い新幹線駅」をうたう糸魚川駅(本社機から)

 日本海に面した糸魚川市に、「糸魚川」という川はない。

 地名の由来には諸説あり、よく言われるのは糸魚(イトヨ)が市内を流れる川に多く生息していたからという説。このほか、市内を流れる姫川、海川がたびたび氾濫し、住民も旅人も歩いて渡るのに苦労したため「厭(いと)ひ川」となったという説、川を挟んで合戦が行われたことから「挑み川」という説などもある。

 糸魚川市は、日本列島を東西に分ける「フォッサマグナ」(大地溝帯)や火山の焼山など多くの地質資源があり、2009年には国内初の「世界ジオパーク(地質公園)」に認定された。

 ヒスイの産地でもあり、古代からヒスイ製品などの交易で栄えた。中世には日本海に沿って東日本と西日本を結ぶ加賀街道と、信濃へ通じる松本街道(塩の道)が交差し、海上を北前船が往来する交通の要衝だった。

 国内でも珍しい石の博物館「フォッサマグナミュージアム」の学芸員は、「国内の縄文、弥生、古墳時代の遺跡で見つかる勾玉(まがたま)などのヒスイ製品のほとんどは糸魚川産」と話す。古代人が河原や海岸で拾ったヒスイは地元で加工され、国内だけでなく朝鮮半島でも珍重されたといわれている。

 糸魚川市にある小滝川ヒスイ峡は54年に新潟県の天然記念物に、56年には国の天然記念物に指定された。

 北陸新幹線の開業で再び交通の要衝となり、「世界ジオパークのまち」に観光客を呼び込むことができるか、地元の期待は高まっている。

(2014年、地域版連載「地名の知」より)

黒部宇奈月温泉

散歩ツアー 宇奈月語る

黒部川のエピソードを紹介する坂井社長(中央)

 宿泊客との朝の散歩を日課にするホテルが宇奈月温泉の「グリーンホテル喜泉」(黒部市宇奈月町音沢)だ。ホテル自慢の「朝のさわやか散歩ツアー」を案内するのは、坂井泉社長(52)だ。

 黒部川右岸を走るバスがトンネルを抜けると、宇奈月ダムのエメラルドグリーンの湖面が広がる。「わあ、新緑がきれい」。宿泊客は歓声を上げ、次々とシャッターを押す。地元出身の坂井社長は人なつっこい笑みを浮かべながら、残雪と新緑のコントラストが美しい宇奈月ダムの湖畔や、黒部川支流・弥太蔵谷にかかる迫力満点のつり橋、冬季にダムの関係者が歩いて通るトンネルなどを巡り、宇奈月温泉の自然や歴史の魅力を解説していく。

 ダム周辺を散策した後は、「トロッコが一番きれいに見える」(坂井社長)という宇奈月駅対岸の旧山彦橋へ。真っ赤な新山彦橋を渡る始発のトロッコ電車に宿泊客が手を振ると、乗っていた工事関係者が手を振り返す。「ツアーを重ねるうちに手を振ってくれるようになったんです」と坂井社長は話す。約1時間のツアーを終えると、宿泊客は満足した表情で朝食へと向かう。

 坂井社長は「黒部峡谷の大自然や電源開発の歴史は宇奈月にしかない。地元の人が宇奈月の好きなところやエピソードを伝え、観光客とふれあうことで、『トロッコ・プラス・ワン』の付加価値を高めていきたい」と話している。

(2014/5/3 富山県版の記事より。年齢は掲載日のものです)

富山

「富山湾鮨」観光の目玉に

「富山湾鮨」仕掛け人の山下信夫さん

 春はホタルイカ、夏はノドグロ、冬はブリ――。 山下信夫さん(69)は、富山の海の幸にこだわった「富山湾鮨(ずし)」の仕掛け人として、「寿司正」(富山市一番町)ですしを握る。「富山の魚は甘みが強い。ほかとはひと味違うよ」と語る職人の表情は誇らしげだ。

 2011年、県内のすし店が富山湾のネタだけで勝負する統一ブランドをつくる企画を練り上げた。お客さんとのカウンター越しの会話で、「値段が高そうで店に入りにくい」と言われた経験から、値段は10貫で3000円程度にそろえた。

 当初は、県内のすし店で作る組合内でも、うまくいくのかと半信半疑の声が多かった。11年11月の企画開始時に参加したのは30店。言い出しっぺである自分も「富山湾だけにこだわると、マグロやイクラを入れられない時期がある」と不安を抱えながらのスタートだった。

 注文してくれたお客さんには、ネタを丁寧に説明することを心がけた。県外のイベントにも積極的に出張した。組合と県が懸命にPRを重ねるうちに、口コミが徐々に広まり、新聞やテレビで取り上げられるようにもなった。

 今では富山湾鮨の参加店は倍以上に。自分の店でも、富山湾鮨は注文が入らない日がないほどの人気メニューだ。首都圏から1人でやって来る若い女性客や、外国人客も珍しくない。

 最近では、富山湾鮨の切手が飛ぶように売れ、年賀はがきまで登場した。富山駅や富山空港にもすしオブジェが置かれ、名実ともに富山観光の目玉に成長した。

 初めて富山から上京したとき、約10時間かかった所要時間は、新幹線開業で最速2時間強に縮まる。「もっとたくさんの人に富山湾鮨を食べに来てほしいね」。富山湾の海の幸で、お客さんをもてなす準備は万全だ。

(2014/11/17 富山県版の記事より。年齢は掲載日のものです)

新高岡

新高岡駅 お鈴の響きでお出迎え

新高岡駅の発車メロディーを制作した太田豊さん

 高岡銅器の伝統仏具「お鈴(りん)」の音色を響かせる新高岡駅の発車メロディーを制作した太田豊さん(39)。15秒間の短いメロディーの音色に深みを付けるため、4拍子と6拍子の異なる拍子を同時に刻む「ポリリズム」を採用。新幹線の疾走感を表現する独特の作品を創り上げた。

 このメロディーは、高岡市太田の国泰寺に江戸時代から伝わる尺八の曲「とっぴき」をモチーフに、銅器の街の特産品を生かして録音。お鈴の甲高い金属音に、楽太鼓と弦楽四重奏で重低音を加え、「歴史と文化を継承する駅にふさわしい音」と評される。「街を象徴するサウンドスケープ(音風景)が採用され、高岡を訪れる方々を出迎える。本当にうれしい」と話す。

 「とっぴき」は地元でも知る人が少ない曲。祭りばやしの「トッピキピー」にまつわるともされる軽快で明るい音曲だが、お鈴で演奏すると余韻が長く、重層的な響きのため、いったん録音すると修正が効かない。「手ごわい楽器」という。

 本職は雅楽演奏家だ。横笛や琵琶を演奏し、歌謡や舞楽の左舞(さのまい)も披露する。高岡高校を卒業後、上京してジャズサックス奏者としてバンド演奏に参加。国内のロックフェスティバルなどに出演するなど、一時は洋楽にのめり込んだ。しかし、欧州に演奏旅行した際、曲を始める合図に横笛を短く吹いたところ、大歓声を浴び、「日本の笛にはすごい力がある」と実感した。

 その後、笛の稽古を本格的に積み重ね、23歳で東京芸大邦楽科に入学。「洋と和の音楽に親しんだからこそ、双方の間から見えるものがある」と独自の分野を歩んだ。

 たかおか音風景の会では、次の目標に「お鈴でオリンピック」を掲げ、5年後の東京オリンピックの開会式でお鈴を奏でる構想を練っている。

 「誰かのインスピレーションさえあれば、次第に具体化していくんです」。創作意欲は尽きない。

(2015/1/12 富山県版の記事より。年齢は掲載日のものです)

金沢

もてなし石川流~ゲストハウス「Pongyi」

習字を楽しんだ外国人宿泊者らと記念撮影する横川さん(前列左)

 金沢駅近くにある定員10人程度の小さなゲストハウス「Pongyi(ポンギー)」では時に、習字を初体験した外国人宿泊客とスタッフの笑い声が響く。

 作品を見せ合う度に和風にしつらえた室内が和む。客の顔が充実しているのは、思わぬ場所で日本文化に触れたからだけではない。シンガポールからの旅行者(25)は「スタッフが親しみやすく、とても温かい。家族みたいで居心地が良い」と話す。外国人だけでなく、日本人の利用も半数に上り、支持の高さをうかがわせる。

 代表の横川雅喜さん(52)は、宿全体にアンテナを張り、客がどこで何を求めているかを感じて対応する。

 「求めていること」と言っても、観光情報からだんらん、人生相談、休息など様々。把握するには、より繊細なアンテナが必要だ。

 習字や折り鶴作り、鍋や流しそうめんまで客が参加できる独自の催しが多いが、「押し売りはただのエゴ」と横川さん。ゲストハウスを選んだからといって客が交流を求めているとは限らない。

 心配りは、直接向き合う客にとどまらない。予約の電話などで、早朝に金沢に到着する客には、まちが動き出すまで滞在できる場所、天気予報が雨なら駅で長靴を借りられることなどをそっと教える。

 世界最大級の旅行口コミサイトの「外国人に人気の日本の宿泊施設2013」で有名ホテルや旅館に交じり12位に入った。「大切にしている心のつながりが世界にも通じてうれしい」と横川さん。宿のフェイスブックには宿泊客らの笑顔があふれている。

(2014/1/10 石川県版の記事より。年齢は掲載時のものです)

今回取り上げた新幹線写真の一部は、「よみうり報知写真館」で購入できます
[協力] JR東日本・JR西日本(運転席動画提供)
[編集] 東京本社・長野支局、新潟支局 北陸支社・富山支局、金沢支局 メディア局企画開発部
[デザイン] 東京本社メディア局企画開発部デザインチーム 株式会社ロフト  [イラストレーション] 荒木田美咲  [動画] 蓑輪潤、和多史朗
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