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(12)日本の印象変えた役者魂

 中国で最も有名な日本の若者といえば、間違いなく、卓球の福原愛(ANA)だろう。だが、中国ドラマで活躍している俳優の矢野浩二さん(36)=写真=の人気もなかなかのものだ。みなさんは、矢野さんをご存じだろうか?

 先日、その矢野さんと一緒に食事をする機会があった。その時の印象は、実に「好青年」そのものだった。

 矢野さんが、中国に本格的にかかわるようになったのは2001年5月から。それまで、日本で売れない俳優として過ごしてきたが、「役者人生を変えよう」と一念発起し、語学留学生として北京に向かった。だが、直面したのは冷え込むばかりの日中関係。出演者募集に応募したが、世相も反映し、回ってきたのは、洪水のように放送される抗日戦争ドラマの悪役だった。

 それまで、中国の抗日ドラマに出てくる日本人のイメージは残忍で好色。こうした紋切り型のネガティブな日本人像を、中国人俳優が演じることが多かった。そこに登場したのが、矢野さんだった。本物の日本人が演じる「日本兵」は、たとえ中国人脚本家が描いた日本人像であっても、視聴者に違った印象を与えた。悪魔でなく、血が通った同じ人間としての日本人。たとえ結果として残虐な行為に走ろうとも、内面に深い葛藤(かっとう)を抱えた人物像を、わずかに許されたアドリブの範囲内で、矢野さんは最大限に表現した。

 反響は大きかった。中国の若い女性たちは、「こんな格好いい鬼子(旧日本軍に対する蔑称(べっしょう))を今まで見たことがない」と称賛。こんな演技の積み重ねが、矢野さんの人気を高めていった。5月からは、矢野さんを主役に起用したドラマも撮影されることになった。「等待」(待つ)というこのテレビドラマは、日本軍人と中国人女性との恋愛劇だという。この作品の脚本を書いた李暁軍監督は「矢野さんの演技を通じて、日本の青年像を知ることができた。文化交流大使の役割を果たし、平和を愛する日本の姿を中国に伝えてほしい」と期待を込める。

 福原選手は、そのかわいらしさと健康的なイメージ、そして中国の国技ともいえる卓球の強さなどから人気を博しているが、日本のイメージアップへの貢献度という点では、矢野さんも引けを取らない。

 北京五輪では、大勢の日本人が中国を訪れるだろうが、矢野さんは「大切なのは平和。選手たちには、それをアピールしてほしい。そして、北京という舞台を楽しんでほしい」と目を輝かせた。(スポーツライター・肖金徳)(随時掲載)

2008年3月1日  読売新聞)
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