(3)ゴン、巨投の救世主昨季1勝…素質見抜いて獲得胴上げの瞬間から、次の優勝への布石は打たれていた。セ・リーグ優勝を決めた昨年10月10日。神宮の夜空に舞った原監督の頭にはある投手の印象が強烈に刻み込まれた。「(先発したヤクルトの)ゴンザレスはいい投手だ」。昨季はヤクルトで1勝ながら、今季は巨人の救世主となった右腕の物語が始まった。 実は指揮官以上に関心を持つ人物がいた。巨人国際部の中島国章参与だ。ヤクルト在籍時に入団を手がけた。「当初から日本でやれると考えていた。球持ちがよく、『コマンド』を持っていた」。コマンドは大リーグ用語で、制球力を生かした優れた投球術を指す。元同僚のラミレスも高く評価。現場とフロントの思惑は一致し、退団後に獲得に向けて本格的に動き出した。 だが障壁があった。4人の外国人枠だ。翌季はグライシンガーとクルーン、李承ヨプ(イスンヨプ)が当確で、後にアルフォンゾも加入。昨年12月、米シカゴで本人に会った中島氏は「外国人枠を伝え、慌てるなと話した」と振り返る。ゴンザレスは言う。「優勝のために巨人に来た。厳しい競争は知っていたが、家族もいて、野球するしかなかった」。07年に手術した右ひじも問題なく契約となった。 今季開幕は二軍。しかし地道に練習し、助言も積極的に取り入れた。ある日、小谷二軍投手コーチが、右投手はあまり使わない右打者への内角スライダーを取り入れるよう、指導した。すると次に投球を見た際、指導した通りに投げていたというのだ。「話を理解し、それを実践できる。野球の頭がすごくいい」と小谷コーチ。「今より良くなりたい。いいことは身に着けたい」という向上心と、謙虚に耳を傾ける姿勢のたまものだ。 不調のアルフォンゾに代わる形で一軍昇格、阪神戦で初先発したのは5月3日だ。7回4安打無失点。不調の内海が二軍落ちする時期だから、その存在はどれだけ大きかったか。6戦6勝。抜群の制球力で、41回1/3連続無四球もマークした。打球処理での身体能力の高さや、打撃で非凡な面も見せた。内海や高橋尚が苦しむ中、ローテの柱として3連戦初戦先発を務め続けた。降板後、ベンチ裏で仲間とコーラで乾杯する陽気な30歳。昨季1勝の男が、「自分でも予想できなかった」14勝1敗(26日現在)と13の貯金をたたき出した。 首脳陣、球団の周到な準備と本人の能力が、結実した。香田投手コーチの表現で締めくくりたい。「彼がいなかったらと思うと、ゾッとするよ」(清水暢和) ◆驚異の勝率 26日現在で14勝1敗のゴンザレスは、勝率9割3分3厘。2リーグ分立後の記録は1981年間柴(日本ハム)の10割(15勝0敗)。セでは66年堀内(巨人)の8割8分9厘(16勝2敗)が最高で、記録更新に期待がかかる。 (2009年9月27日 読売新聞)
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