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(7)ひたちなか海浜鉄道湊線 「昭和」へのタイムマシン瓦屋根の駅舎 沿線は田園燃料とほこりが混じったような、かすかなにおいがする車内。歩くと、木の床が柔らかいコツコツという音を立てる。車両は「キハ2004」。1960年代まで、北海道で炭鉱鉄道として走っていたディーゼルカーだ。 水戸市の東隣、茨城県ひたちなか市内を走る「ひたちなか海浜鉄道湊(みなと)線」。JR常磐線の勝田駅から出発した1両編成の車両は、30分弱で終点の阿字ヶ浦駅に到着した。キキーッという小さなブレーキ音とともに車両は止まり、ドアが開いた。3人の乗客が降りた。 ホームには少しさびた駅名表示板のほかには何もない。小さな駅舎の事務所はカーテンが閉まったままだ。無人駅だ。駅から10分ほど歩けば海水浴場だそうだが、季節はまだ早い。静かな住宅街。乗ってきた車両はぽつんと次の発車を待ち続けている。 ひたちなか海浜鉄道湊線では、「キハ2004」以外にも「キハ222」「キハ205」など昭和30〜40年代に製造された貴重な車両が現役で走る。それらの車体は旧・国鉄時代に用いられた「青とクリーム」「クリーム色に赤い線」などの色合いに再塗装され、郷愁を求めて訪れる旅行者も多いのだそうだ。 駅舎や車窓も旅情を誘う。 例えば、同線の中核となる那珂湊(なかみなと)駅の駅舎は1913年(大正2年)の建築。瓦屋根や木製の柱、近隣の観光地を表示した、古めかしい字体の看板なども残っている。モノクロのニュース映像で目にする、昭和の日本にタイムスリップしたかのようだ。 車窓からは、広々した関東平野の田園風景を存分に味わった。住宅街を走っていたかと思うと次の瞬間、一面に広がる水田やサツマイモ畑が目に飛び込んでくる。途中にある中根駅はバス停と見間違えそうな小さな無人駅。乗車時間の半分ぐらいは遮るものがない緑の地平を走る。 湊線は、利用者減で廃止の危機にあった私鉄線が2008年4月、地元の熱意で第3セクター方式の鉄道会社として生まれ変わった路線だ。再出発の際、公募で社長となった吉田千秋さんは富山県内のローカル線を再生した手腕を持つ。その吉田さんが胸を張る。「奇をてらったアピールはしない。車両、駅、沿線風景という鉄道路線そのものに魅力と価値があるのが湊線。全国的にも珍しいのです」 輸送力や採算性などが時代に合わず、廃止されるローカル線は多い。だが、湊線のような味わいが残せるなら、時代に取り残されるのも悪くない。低いエンジン音を木の床の下に聞きながら、また乗りに来ようと思った。(上原三和、写真も) ◇ ![]() 〈ひたちなか海浜鉄道湊線〉勝田―阿字ヶ浦の14・3キロを結ぶ非電化のローカル線。前身は、海産物の輸送を目的に作られた1913年開業の湊鉄道。勝田―阿字ヶ浦の運賃は570円。土日祝日に利用可能な「湊線1日フリーきっぷ」は800円。問い合わせは那珂湊駅(029・262・2361)へ。
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