熊本・有明から タコ 丸ごとステーキ
丸い頭に鉢巻きを締め、8本の足をくるりと巻いたマダコが、大皿に鎮座している。ナイフとフォークが添えられているから、どうやら自分で切って食べるらしい。
調理してくれた松本国雄さん(65)に勧められ、太い足におそるおそる刃先を入れたが、ぷりぷりと弾力があって、なかなか切れない。なんとか一口大にしてほおばると、甘辛い煮汁とタコの香りが、ふんわりと広がった。
有明海は古くから「宝の海」と呼ばれ、人々に豊かな恵みをもたらしてきた。天草上島の有明は、タコ漁が盛んで、大浦漁港近くで民宿「あさひ荘」を経営する松本さんは、「豊富なタコを使って、話題性のある名物を作りたい」と、18年前にこの料理を考案。ナイフとフォークで食べるので、「タコステーキ」と名付けた。
台所をのぞくと、大鍋に塩水と大根の輪切りを入れて沸かしていた。松本さんが、タコを足から静かに沈める。ひと煮立ちしたら上げ、しょうゆをベースにした煮汁の鍋に移す。10分ほど煮れば「タコステーキ」のできあがりだ。
意外にシンプルだが、松本さんは、この調理法を編み出すのに5年を費やした。「最初は皮がむけてしまったり、身が硬くなったり。大根と一緒に下ゆでするのがポイント」という。
確かに話題性は十分で、すぐに地元の民宿やホテルに広まった。2003年に有明町商工会が真空パックの商品を開発し、道の駅やネットで販売するようになると、全国的に知られるようになった。
商工会では、食品や雑貨などタコ関連の新商品を続々と開発。携帯ストラップは、英語の「オクトパス」にかけて、「置くとパス(合格)する」と受験生に人気で、年間500万円を売り上げる。
「タコの町」をさらにもり立てようと、商工会女性部が結成した「すいとっとダンサーズ」の演技をビデオで見せてもらった。40〜60代のメンバーが、タコの着ぐるみをかぶり、PRのために作られた巨大なタコの像「ありあけタコ入道」の周りを舞い踊る。赤城みずえ部長(50)は、「本当は恥ずかしかった」と言うが、どの人も輝くような笑顔。結成からしばらくは、式典、イベントへの参加依頼やマスコミの取材が引きも切らなかったという。
1963年に兵庫・明石のタコが寒波でほぼ壊滅した時、有明から卵を抱えたメスダコが運ばれて放流された。昔から味の良さは折り紙付きだ。
商工会の津崎勝志事務局長(64)は、「地形の関係で餌のカニが豊富。干満の差が大きく、潮の流れが速いため、筋肉が発達して身が締まる。天草のほかの地域と比べても、味は格別」と胸を張る。
タコ料理が食べられる道の駅は、休日ともなれば県外ナンバーの車でいっぱい。「宝の海」は、地域ににぎわいももたらしてくれた。
(飯田 祐子、写真も)
トラベル 有明

有明海に沿って走る国道324号は、「ありあけタコ街道」と名付けられ、夏には干しダコが翻る。大浦漁港近くのサンタマリア館=写真=では、隠れキリシタンの史料を展示。道の駅・有明には、物産販売所とレストランのほか、温泉なども。前方には白砂の「四郎ヶ浜ビーチ」が広がり、高さ3メートル、幅4・5メートルの写実的なタコの像「ありあけタコ入道」がそびえている。
スペイン風タコの前菜

材料(4人分)
ゆでタコ200g、タマネギ30g、ニンニク20g、パプリカ(赤)1個、オリーブ油大さじ2、塩・コショウ少々、パセリみじん切り小さじ2、レモン汁小さじ2
作り方
タコは熱湯をかけてから氷水に入れて冷やす。太い部分は2センチ幅に切ってから、薄切りにする。
タマネギ、ニンニクは皮をむいてみじん切りにする。
パプリカはヘタをとって3センチ角に切る。
フライパンにオリーブ油とタマネギ、ニンニクを入れ、香りが出るまで弱火でいためる。そこにパプリカを入れてサッといため、タコを加える。塩・コショウで味をつけ、パセリのみじん切りとレモン汁をかける。熱いうちに食べる。 パプリカは他の色でもよい。パプリカの代わりにシメジ、ブナシメジなどを使ってもおいしい。(江上料理学院指導)













