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    絵本「だるまちゃん」 新刊3冊

     絵本作家・加古里子かこさとしさん(91)による「だるまちゃん」シリーズの新刊しんかんが先月、3さつ同時刊行されました。長年あいされてきたシリーズは、加古さんのちみつ誠実せいじつな仕事にささえられてきたことが取材しゅざいで分かりました。

    作者の 加古 ( かこ ) 里子 ( さとし ) さん 被災地や沖縄思う

    • 「細かいところまで、すべてお一人で作られます」と、加古さんの絵本作りについて話す寺久保さん(奥)
      「細かいところまで、すべてお一人で作られます」と、加古さんの絵本作りについて話す寺久保さん(奥)

     「だるまちゃん」シリーズは、主人公のだるまちゃんと色々いろいろ友達ともだちとのかかわりをえがいています。「昨年さくねんまでに8冊刊行されましたが、複数ふくすう冊が同時に刊行されるのははじめて」と話すのは、新刊を担当たんとうした福音館ふくいんかん書店の編集者へんしゅうしゃ寺久保未園てらくぼみそのさん。3月に92歳になる加古さんは、だるまちゃんのお相手候補こうほのリストを持っていて、何年もかけてお話の構想こうそうっているそう。「それが、近年のできごとと重なって、じゅくすように3冊の絵本になったのです」

     新刊は「だるまちゃんとはやたちゃん」「だるまちゃんとかまどんちゃん」「だるまちゃんとキジムナちゃん」。東北地方の郷土玩具きょうどがんぐになった伝説でんせつの人物や、地元に伝わるカマド神がモチーフの2冊には、東日本大震災だいしんさい犠牲者ぎせいしゃへの鎮魂ちんこん慰霊いれいの思いや、原発事故じこへの警鐘けいしょうの気持ちがめられているそうです。また、沖縄おきなわに伝わる精霊せいれいをモチーフにした1冊には、「戦中戦後、今なおつづいている」沖縄の人々の苦労くろうに対する思いがせられています。

     大学の工学部で学んだ加古さん。卒業後、会社勤務きんむのかたわら川崎かわさき市で「セツルメント活動」という地域密着型ちいきみっちゃくがたのボランティア活動に加わります。そこで、自作の紙芝居かみしばいを子どもらに披露ひろうしているうち、絵本を出版しゅっぱんするように。

     だるまちゃんシリーズの原点とも言えるのは、ロシアの郷土玩具マトリョーシカが主人公のお話がったロシアの絵本雑誌ざっしでした。それを見た加古さんは、日本の子どもたちのために、日本に古くから伝わるものを題材にした絵本を作りたいと考え、1967年にシリーズ第1作「だるまちゃんとてんぐちゃん」を完成させたのです。

    • 「だるまちゃんとかまどんちゃん」のラフ(下)。上は完成した絵本。登場人物は別の紙に描かれており、動かしながら位置を決める
      「だるまちゃんとかまどんちゃん」のラフ(下)。上は完成した絵本。登場人物は別の紙に描かれており、動かしながら位置を決める

     科学絵本など、他にも多くの作品がある加古さん。だるまちゃんシリーズは、どんな位置いちづけなのでしょうか。「だるまちゃんは、父親のだるまどんに何かをねだったり、友達のものをほしがったりと、自然しぜんな子どもらしさがあります。加古さんが見てこられた真の子どもの姿すがたが描かれているのでは」と、寺久保さんが話してくれました。

     寺久保さんに、新刊のラフ(下書き)を見せてもらいました。「加古さんは紙をむだにしないように、裏紙うらがみを使っているんです」

     ラフには、文章の文字数や、倍率ばいりつで示された登場人物の大きさなど、数字で細かい指示しじが。加古さんのち密な仕事ぶりにおどろきました。

    「未来ひらく判断力を」

    • 加古里子さん
      加古里子さん

    加古さんに手紙で質問

     加古さんに手紙で質問し、回答をいただきました。

      だるまちゃんは、なぜうでと足があるのですか。

     加古 モデルがインドのおぼうさん(達磨大師だるまだいし)だからです。達磨大師の教えが日本に伝わり、郷土玩具としてのこったのは、日本の人がインドのお坊さんを尊敬愛好そんけいあいこうしたためと思われます。

      三つの新作は、震災で犠牲になった人への鎮魂の気持ちや沖縄の人の苦労を思って出されたそうですが。

     加古 数年前から書きためていたものがありました。東日本大震災後、何年かたちましたが、いろいろ進んでいないこともあり、今伝えたいことを伝えておかなければ、と一気に3冊仕上げました。

      大変長い間執筆しっぴつしてこられましたが、なぜ可能かのうだったのですか。やめようと思ったことはありませんか。

     加古 今の大人の政治せいじの様子がどうも敗戦はいせん以来考えていた、私の理想の考えに合わなくて、未来に生きる子どもさんたちにのぞみをたくしたいと思ったのです。

      絵本作家志望しぼうの子どもに伝えたいことは何ですか。

     加古 むやみに大人の指示にしたがうのでなく、各自の特性とくせいばし、自分の判断力で未来をひらいていってほしいです。

     (高1・木下きのした純一じゅんいち、マッキン愛奈あいな、中2・目時真羽めときまう、小6・水谷卓郎みずたにたくろう記者)

    2018年02月26日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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