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    ジュニア記者が、様々なニュースを取材して記事を掲載します。

    高齢者にICT広めたい

     「人生100年時代」と言われる今、米国ニューヨークの国連本部で演説えんぜつした80代の日本人女性がいます。アプリ開発者、若宮正子わかみやまさこさん(82)に取材しゅざいし、つねに前向きに学ぶ姿すがたに私たちも刺激しげきを受けました。

    80代のアプリ開発者・若宮さん 国連で演説

    • にこやかな表情で国連で演説する若宮さん(本人提供)
      にこやかな表情で国連で演説する若宮さん(本人提供)

     国連で2月に開かれた高齢者こうれいしゃとICT(情報通信技術じょうほうつうしんぎじゅつ)に関するイベントで、英語で基調講演きちょうこうえんを行うという大役をたした若宮さん。演説では、自身の経験けいけんを交えながら、「ICTは、ひとらしの高齢者の孤独感こどくかん解消かいしょうする手段しゅだんになる」などと語り、喝采かっさいびました。

     同世代の人々ひとびとのICT活用を推進すいしんするブロードバンドスクール協会きょうかいの役員をつとめるほか、政府せいふの「人生100年時代構想会議こうそうかいぎ有識者ゆうしきしゃメンバーでもある若宮さんですが、最初さいしょに国連からスピーチ要請ようせいの電子メールが送られてきた時は、「何かの冗談じょうだんかと思った」そう。要請は本物と分かったものの、渡航費用とこうひよう原則げんそく、自分持ち。出席しゅっせきすべきかなやみましたが、「高齢者の間にICTを広めたい、という私の考えを広く発信できるチャンスと思い」引き受けたといいます。英語に関して不安がなかったかとたずねると、「私のようななまりの強い英語を話す人は国連では当たり前ですし、私が話せば、あとにつづく人もやりやすいのでは」と、自然体しぜんたいでした。

     若宮さんには「応援団おうえんだん」ともいうべき支援しえんグループがあり、「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて渡航費用を集めてくださったり、演説に使うスライドを見栄みばく仕上げてくださったり……。現地げんちの空港には学生さんがボランティアでけつけ、宿泊先しゅくはくさきまでれていってくださいました」。多くの人の連携れんけいささえられた経験を、「一人一人ができることを集積しゅうせきすれば、大きな力になることを学びました」とり返りました。

    • 高齢者の生活にとってICTが持つ意義について力説する若宮さん
      高齢者の生活にとってICTが持つ意義について力説する若宮さん

     民泊仲介ちゅうかいサイトを介しての宿泊や、スマホアプリを使ったタクシー配車サービスの利用など、「現地の最新の様子が分かった」と目をかがやかせて話す様子は、のびやかでひたむき。多くの人が若宮さんを助けたくなる気持ちが分かりました。

     若宮さんとパソコンの出会いは、長年つとめた銀行を60さいで定年退職たいしょくしてから。「会社に行かなくなり、さびしくなって。だれかとおしゃべりしたかった」

     チャットを楽しむだけのつもりがやがて、計算ソフト、エクセルのマス目の色付けで日本の伝統模様でんとうもようなどを表現する「エクセルアート」を考案こうあん。国連での演説に用いたスライドにも使い、表示ひょうじ画面にはなえました。

    • 華やかな画面が特徴のゲームアプリ「hinadan」
      華やかな画面が特徴のゲームアプリ「hinadan」

     パソコン、スマートフォンにれるうちに、シニア世代が楽しめるゲームアプリが少ないと気づいた若宮さん。80歳をぎてからプログラミングを学び、iPhone向けゲームアプリ「hinadan(ひなだん)」を開発、2017年に発表しました。

     これは、ひな壇の正しい位置いちにひな人形をならべるもの。「スワイプが苦手など、高齢者のニーズに配慮はいりょして」作られています。これに目をめた米アップル社の最高経営責任者さいこうけいえいせきにんしゃ(CEO)に米国にまねかれ、意見交換こうかんも行いました。昨年さくねんれには英語版えいごばんもでき、利用者からは「親子まご3世代で楽しめる」などと好評こうひょうだそうです。

     今後の目標もくひょうについて若宮さんは「近未来の社会について、素人しろうとにも分かる本を書きたい」と話していました。また、私たち中高生世代へのメッセージとして、「人生100年時代、チャンスは2度、3度ある。受験などで大変でしょうが、ドローンから下界を見下ろすように、もっと物事をゆったり考えてもいいのでは」と話してくださいました。(高2・青柳孝信あおやぎたかのぶ、高1・大森康正こうせい、中3・山口万由子まゆこ、中2・西山寿奈じゅな、中1・柳田峰雄やなぎだねお記者、写真=伊藤紘二いとうこうじ

    2018年03月12日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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