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    ジュニア記者が様々な施設やスポットを訪問します。

    競技用義足への熱い思い

    開発・普及に取り組む人たち

     そくの人の「走りたい」というねがいにこたえる施設しせつ「ギソクの図書館」(東京都江東こうとう区)で開かれた公開ランニングイベントを取材しゅざいし、2020年の東京五輪ごりん・パラリンピックを視野しやに、競技きょうぎ用義足の開発・普及ふきゅうに取り組む人たちのあつい思いにれました。

    借りられる施設

    • 「競技用義足は高額で走る場所もない、などの問題を解消したかった」と、「ギソクの図書館」を作った理由を話すXiborgの遠藤さん
      「競技用義足は高額で走る場所もない、などの問題を解消したかった」と、「ギソクの図書館」を作った理由を話すXiborgの遠藤さん

     「こんにちは」「よろしくお願いします」。参加者さんかしゃたちが笑顔えがおであいさつしながら、次々つぎつぎに義足をけて、トラックに出ていきます。

     競技用義足をりることができる「ギソクの図書館」は、「新豊洲しんとよすBrilliaランニングスタジアム」という、60メートルトラックをそなえた全天候型施設ぜんてんこうがたしせつの中にあります。義足の開発を手がける会社「Xiborg(サイボーグ)」(東京都江東区)社長の遠藤謙えんどうけんさん(39)らが、インターネットで資金しきんつのり、やく1750万円を集めて、昨年さくねん10月にオープンしました。現在げんざい、約30本の競技用義足がならびます。

     もともとロボットを研究していた遠藤さんは、高校の後輩こうはい骨肉腫こつにくしゅで足を切断せつだんしたのをきっかけに義足開発に転じ、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でロボット義足を研究したそうです。この日は、その後輩の男性だんせい静岡しずおか県からけつけました。

    ランニング教室も

    • 義肢装具士の沖野さんの指導で歩行練習。沖野さんは陸上競技歴が長く、中級障害者スポーツ指導員などの資格も持つという
      義肢装具士の沖野さんの指導で歩行練習。沖野さんは陸上競技歴が長く、中級障害者スポーツ指導員などの資格も持つという
    • 「ギソクの図書館」の壁に展示された様々な競技用義足
      「ギソクの図書館」の壁に展示された様々な競技用義足

     参加者の多くは、やはり競技用義足の開発を手がける「オキノスポーツ義肢装具ぎしそうぐ」(オスポ、東京都台東たいとう区)代表で、義肢装具沖野敦郎おきのあつおさん(39)の手を借りて、義足の調整と装着を行いました。「ギソクの図書館」設立メンバーの沖野さんは、イベントと同時開催かいさいでランニング教室を開いており、参加者の中には女の子の姿すがたも。両親、妹と埼玉さいたま県からやって来た、小学5年生の松永琴寧まつながことねさんです。「水泳も大好き」という松永さんは、競技用義足について「はねるような感じで走りやすい」と話していました。

     2時間の教室では、しなってはねる義足をコントロールするため、体幹たいかんきたえることが重視されます。私たちも、沖野さんにさそわれてトレーニングに参加しました。メトロノームに合わせて歩いたり、ハードルをまたいだり、60メートル走などを行ううちに、息が上がってきました。おにごっこのようなゲームでは、みんなでり上がり、わらいがえませんでした。

     その様子を見守っていた松永さんの父親のひとしさんは、「スポーツは心を、人生をゆたかにしてくれる。こうした施設が全国に広まり、だれもがスポーツを楽しめるようになってほしいです」と話していました。

    パラリンピック視野

    • ランニング教室でゲームを楽しむ参加者たち。鬼(左手前)が列の最後尾の人をタッチしたらおしまい
      ランニング教室でゲームを楽しむ参加者たち。鬼(左手前)が列の最後尾の人をタッチしたらおしまい

     競技用義足はカーボンせいで、スキー板をり曲げたようなもの。板バネともばれます。「1本30万円くらいか、それ以上」する高価こうかなもので、使用するのは競技者などにかぎられていました。しかし「ギソクの図書館」なら、1回500円の義足使用りょうと、同程度ていどの施設利用料をはらえば、競技用義足を借りて、その場で走ることができます。

     沖野さんは、中学時代から陸上りくじょう競技をつづけ、大学で医療いりょう用ロボットについて学んでいた2000年、シドニー・パラリンピックで義足の競技者を見て感動。「障害しょうがいのある人も、ない人も一緒いっしょに走れるように」と、専門せんもん学校に通って義肢装具士の国家資格を取ったそうです。義肢装具士とは、病気などで手足をうしなった人や手足に機能障害きのうしょうがいがある人のため、医師いし処方しょほうもとづいて義手や義足を作る仕事です。

    • 100メートル11秒台の自己最高記録を持つ春田さん
      100メートル11秒台の自己最高記録を持つ春田さん

     沖野さんとともに参加者を指導しどうしたのは、ロンドン・パラリンピック出場経験けいけんもあるXiborg所属しょぞく短距離たんきょり走者、春田純はるたじゅんさん(39)。15さいのときに骨肉腫で左ひざから下を切断しました。大好きな陸上をあきらめなければならないのかと一時は絶望ぜつぼうし、「義足であることにコンプレックスを感じ、家にこもりがちでした」と話します。しかし、25歳で競技用義足に出会い、人生が変わりました。

     「子どもたちに、自分が経験したつらい思いをさせたくない。足を失っても走れるんだと知ってほしい」と熱く語る春田さん。「2020年のパラリンピックに向けて、競技用義足利用者のすそ野を広げたい。今がそのチャンス」と話す目に力がこもっていました。

     義足開発者、義足のアスリート、義肢装具士らが一丸となって、競技用義足の開発・普及に取り組む現場げんば熱気ねっきを強く感じました。

    【取材後記】人を笑顔にするすばらしさ

     ◆高2・青柳孝信あおやぎたかのぶ記者

     遠藤さんや沖野さんが身近なきっかけから今の仕事を始め、人を笑顔にし、新たな一歩をみ出すのをささえているのはすばらしいと思いました。

     ◆中3・山口万由子まゆこ記者

     健常者けんじょうしゃと義足歩行者とのかべがなくなり、今回のように一緒に楽しめる社会が実現じつげんするといいと思いました。

     ◆中2・浦田凜うらたりん記者

     義足の人は、ひざをのこしているかどうかによって、階段かいだんの上りやすさもちがうと聞きました。義足の人に何か手助けするさいに、こうした知識ちしきが役に立つとうれしいです。

     ◆中1・柳田峰雄やなぎだねお記者

     「ギソクの図書館」でトレーニングをんだ人が2020年パラリンピックで活躍かつやくするかもしれないと思うと、今から楽しみです。応援おうえんしたいです。

     (ジュニアプレス取材だん、写真=佐々木紀明ささきのりあき

    2018年03月02日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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