<速報> 自民が単独過半数、立憲民主は躍進
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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    隅っこの強豪(1)

    千葉敬愛高 ソフトボール部

    トンネルするけど 期待の「野人」。

     「パチーン!!」「パチーン!!」

     秋も深まる10月下旬の夕方。都心から電車で1時間の住宅街に、ボールがグラブをたたく音が響き渡った。

     すっかり日も落ちたグラウンドで約100人の球児が白球を追ううちの学校。地元の人たちも「野球部、今日も頑張ってるなぁ」なんていつも温かく見守ってくれてる。

     って、ちょ、ちょっと待ってほしい!! よ~く見ると、いません? 明らかに野球部と違う集団。そうそう。グラウンドの隅っこで練習してる15人。

     全国制覇8度を誇る千葉敬愛高校ソフトボール部――。そして俺は、その強豪ソフト部で急成長中の期待のど素人だ。

    手加減なし

     全国レベルのソフト部の練習は厳しく濃密だ。全体練習が3時間半、自主練が1時間。中でも俺が最も苦手なのが……

     「次、ノック行くよ~」

     き、来た。守備練習。

     「お願いしまーす!!」

     覚悟を決め、とりあえず大声を出す。

     カキ~ン。手加減なしの地をはうような打球。慌ててグラブを出したが、ほんのちょっとボールから目を離したのが運の尽き。ボールは無情にも股の間を抜けていった。そして、瞬時に飛び交うのはあのいじりだ。

     「へい、野人(やじん)!!」

     そう、俺のソフト部でのあだ名は「やじん」。なぜ本名の雅行にかすりもしない名前で呼ばれるようになったかと言うと、それは昨年6月、俺が入部した日にさかのぼる……。

     かつて野球少年だった俺。小学生時代は地元の軟式チームに入っていた。でも、中学では野球部に入る友達がおらず、卓球部に。高校でも何となく軽音部に入った。ギターをかき鳴らすと、ストレス発散できそうだし、「もてそう」というのが理由だった。

     その軽音部は2か月でやめた。日差しを浴びて汗を流す野球部を見て、「やっぱ、体を動かしたい」と思ったから。

     ただ、今さら部員80人の野球部に入るのは気まずい。もてたい気持ちも捨ててなかったので、坊主頭も避けたかった。

     で、浮上したのがソフト部。部員の海児(かいじ)に聞いたら「今からでも大丈夫」ということだったので、俺はその数日後、練習に参加する約束をした。

    肌着で登場

     よく晴れた暑い日だった。

     「な、ないっ」

     練習初日。俺は教室で焦りまくっていた。朝、カバンに入れたはずの練習着がなかったのだ。

     しかし、今さらドタキャンはない。俺は意を決し、ワイシャツの下に着ていたノースリーブの白の肌着で練習に参加することにした。でも……

     やっぱり、変? グラウンドで痛いほど感じる好奇な視線。そりゃそうだ。季節外れの新入部員が肌着姿で所在なげに立ってるんだから。

     そうしていると、先輩がニヤニヤしながら近づいてきた。

     「縄文人か、お前は!?」

     「じょ、じょうもんじん!?」

     俺の姿が、歴史の教科書に出てくる縄文人みたく見えたようだ。そのあだ名は、ちゃんとした練習着を着ていった翌日、改称された。

     「縄文人は長いから、野人にしよう」って。

     決して、もてそうではないけど、名門ソフト部の愛されキャラが誕生した瞬間だった。

     (高校生の登場人物はすべて仮名です。敬称略)

    ソフトボールとは

     日本がかつて五輪で金メダルを獲得したソフトボール。中高生の競技人口は、女子の方が圧倒的に多い。日本中体連、全国高体連の2015年度の調査でみると、その差がよくわかる。中学では、男子が121校(1898人)だけなのに、女子は約20倍の2415校(4万3232人)もある。高校の男子は315校(5568人)、女子は約5倍の1505校(2万2409人)。

    2016年12月16日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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