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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    知の決闘(1)

    開成中・高 クイズ研究部

    知力 勇気 時の運。それが早押し。

     日本中にその名をはせる私立校の雄・開成――。あの超難関試験をくぐり抜けた“知の勇者”が集うこの学校には、これまた全国にその名をとどろかせる部活がある。

     開成クイズ研究部。過去、全国高等学校クイズ選手権を3連覇したこともある強豪であり、心の底から知のバトルに飢える男たちの集まりだ。

     期末テストが終わった12月中旬の放課後。中学校舎の教室に解放感にあふれた部員たちが1人また1人と集まってきた。

     教卓を中心に半円形に並べられた机の上には、すでに20個ほどの早押しボタンがきれいに並べられている。

     中高の生徒が所属するクイ研ではセッティングは早く来た部員が行うのが決まり。知のバトルに先輩・後輩といった序列は必要ないのだ。

     「んじゃまあ、やりますか、久しぶりに」。誰彼なしに声がかかった。

     問題を読み上げる「問い読み」の部員が教卓に腰掛ける。半円形に並ぶ机に座った解答者の部員は、ボタンの上に手をかぶせ、問い読みに向かってぐいと身を乗り出した。

     期末明けの初バトル。放課後の教室に緊張の糸がピンと張った。

    問題の傾向

     「問題。ずばり、1日w……」
     ピーン♪「8万6400秒」
     ピンポーン♪

     えっ? 何でそこでわかるのか? しょうがない。この知的バトルの魅力を知ってもらうためにも少し解説しよう。

     当たり前だが、クイズ問題のキモは「答え」だ。実は答えにはある程度、原則がある。

     単純なもので言えば、「昨日の僕の夕食は? 答え トンカツ」みたいに、一般人が知るわけもないプライベートなものはクイズにならない。「いまの日経平均株価は?」みたいな値が変動するのもダメ。

     特にポイントになるのが難しさの加減だ。「1日は何時間?」なんて誰でも知ってる問題はクイズとしてつまらないし、逆に「ケニアの今の外務大臣は?」なんて重箱の隅をつついたような問題は、答えを聞いても誰も共感しない。

     つまり、クイズは答えを聞いた時に、「へぇ」とか「なるほど」みたいな心の動きが生まれるように作られている。言い換えれば、問題文で読まれた言葉に関わる「へぇ」という何かが答えにくる、というわけだ。だから、僕たちは問題で出てきそうな言葉とその答えになりそうな言葉を結びつけて徹底的に記憶している。

    スリリング

     で、今回の問題。まず「ずばり」で問題文が短いことがわかる。ポイントは「1日w」。問い読みが「1日」の後にwの音を出したことで次に来るのは「は」であると判断。正解した部員は過去の経験則からここは「1日は何秒でしょう?」という問題だと推測し、解答した。

     もちろん推測が外れることはある。だけど「1日は」まで待てば、間違いなくほかの誰かに先を越される。知識、反射神経、勇気、そして運……そのすべてが問われるスリリングな知的バトル。それが早押しだ。

     あっ、申し遅れました。僕は高2の吉村。あだ名はよっしーで、開成クイ研のエースです。

     (登場人物はすべて仮名です。敬称略)

    2017年02月27日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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