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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    知の決闘(3)

    開成中・高 クイズ研究部

    こんな話です 超名門私立・開成中学・高校のクイズ研究部のよっしーこと吉村(高2)。中1のときに参加した夏合宿をきっかけに、ますますクイズにのめり込み、クイズ王を目指す道のりを加速させていく。

    ▽過去の連載

    知の決闘(1)(2)

    「死の合宿」突破。現れたライバル。

     究極の知のバトルに憧れ、開成クイズ研究部に入った新入生が最初に直面する試練が夏合宿だ。

     己の頭脳と精神を極限まで追い込む“死のプログラム”は、あの超難関試験をくぐり抜けてきた秀才らをも容赦なくふるい落としていく。僕、吉村にとって最初の夏もそうだった。

     「うわぁ、ちょーすげぇ」

     2012年夏、合宿所となる河口湖畔のリゾートホテルに到着した僕らはバスを降りるなり、思わず歓声を上げた。

     目の前に広がる雄大な富士山、マイナスイオンが半端なさそうな新鮮な空気、そして、満天の星が心と体を癒やす展望露天風呂――。ここで4泊5日!! お、おとなのリゾートだ。先輩たちが()()()()()()と言っていたのも(うなず)ける。

     ……と、思えたのは、せいぜい最初の30分。先輩たちは到着するなり、富士山も見えないホテル内の会議室に早押しボタンをセッティング。

     そこから始まったのだ。朝から未明まで、3度の飯と風呂以外はひたすら早押しという“クイズ千本ノック”が……。

    エンドレス

     先輩たちが用意していたのは、クイズ業界用語で「企画」と呼ばれるミニクイズ大会だ。

     方式は様々。7問正解で勝ち抜け、3問間違いで失格の「7○3×(ナナマルサンバツ)」、5分間で獲得ポイントの高いものが勝つ「タイムレースクイズ」、問題文が100文字以上の「長文」、100文字未満の「短文」……。

     合宿中、約50人の部員は、予選・決勝まで合わせると1本あたり半日はかかる企画を10本以上こなした。

     4泊5日じゃ、計算が合わないと思うかもしれない。答えは至ってシンプル。このミニクイズ大会、未明どころか徹夜で続けられる日もあるのだ。

     さすがに徹夜で開かれる企画は自由参加だけど、朝から晩まで早押しボタンを押しまくり、それでもまだ戦いたいと思えるかどうかは、クイズ王になれるかどうかの分かれ道でもある。

    エース候補

     過酷な合宿を終え、1年生部員は25人から15人に減った。開成クイ研に「さぼり」という概念はない。勉強したい人、遊びたい人は来なくていい。開成中・高では「生徒の5%に彼女がいる」とされているが、そんな彼女とデートをしてもいい。

     でも、僕のクイズ熱は合宿後、さらに燃え上がった。週4回の部活でこれでもかというぐらい早押しボタンを押し、家ではクイズ問題集をひたすら読み込む「自主練習」を1日5時間こなした。

     迎えた9月。いよいよクイズ王を目指す僕の最初の勝負がやってきた。クイ研の中1部員だけで争う部内のクイズ大会「中1・オブ・ザ・イヤー」だ。

     早押しクイズを勝ち抜き、最後に残った2人が一対一で決着をつけるこの大会。僕が決勝で対戦したのは、将来のエース候補と目される長崎だった。

     僕と同様、合宿で頭角を現してきた長崎の武器は圧倒的に強い分野を持つ「深い知識量」。対する僕の武器はクイズ問題集を読み込んで得た苦手分野の少ない「広い知識量」。竜虎相まみえるような対決は予想通り、一進一退の攻防となった。

     次々と正解を重ねていく僕と長崎。この日は最後の最後、0コンマ何秒の押しの差で僕が優勝したけど、僕はその時、確信した。「長崎は僕のライバルになる」って。

     (登場人物はすべて仮名です。敬称略)

    2017年03月01日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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