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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    知の決闘(5)

    開成中・高 クイズ研究部

    こんな話です 高校クイズ界に名をはせる開成クイズ研究部。高校2年のよっしーこと吉村はライバルの長崎と共に、引退前の最後の大仕事――開成で開かれるクイズ大会「開成例会」の準備に追われていた。

    ▽過去の連載

    知の決闘(1)(2)(3)(4)

    次は学生王者。行くぞ、ライバル。

     冬の足音が聞こえ始めた2016年11月20日、僕、吉村に、ついにその日がやってきた。

     開成で開かれるクイズ大会「開成例会2016」。関東のクイズ研究部が加盟する関東クイズ連合(KQA)の公式戦で、うちの高2は毎年、この大会を最後に部を引退する。

     おっ。じゃあ、今回は、僕とライバル・長崎の最終決戦か、と思った君!!

     ブ、ブーッ。不正解。

     KQAの例会ではホスト校の生徒は出場できない。僕と長崎の最後の仕事、それは究極のクイズ大会を主催することだ。

    早押しのみ

     大会1か月前、僕らはとてつもない決断を下した。

     「次回の例会は早押しクイズのみとする――」

     クイズ大会では、まずペーパークイズで出場者をふるいにかけ、その後、早押しクイズに移るのが常識。最初から早押しにすると、使用する問題数が膨れあがるからだが、僕も長崎もクイズの醍醐(だいご)味である早押しを出場者全員に楽しんでもらいたかった。

     そんなわけで、僕らは“クイズファクトリー”と化した。約100人の出場者が16組に分かれて争う1回戦から、決勝まで合わせると必要な問題は1400。クイズ界では問題集に載っているものをそのまま使うのは「借問」と呼ばれるご法度だ。教科書、辞書、百科事典などとにらめっこしながら、ひたすら問題を作り続けた。出来上がった問題も作成者以外の部員が、答えが正しいか、大会直前まで裏付け作業が進められた。

     長崎が問題を読み上げる「問い読み」、僕が審判役の「正誤判定」を務めた開成例会は、早稲田高校の2年生の優勝で幕を閉じた。ペーパーの予選がない分、最初は力の差が如実に表れたけど、早押しで一喜一憂する参加者らの姿を見て、うん、苦労して良かった、と思った。

    伝統の儀式

     その日の夜、がらーんとした小講堂で引退式が始まった。

     高2の最後のあいさつを下級生が正座して聞く伝統の儀式。最終盤に回ってきた長崎と僕の言葉は、部員60人の胸に響いた。

     「楽しむには良きライバルを作ることが大切で、僕は吉村らに支えられてやってこれた」と長崎。続く僕も「モチベーションが下がった時、一番助けになったのが長崎。絶対に負けたくないと貪欲になれた」と本音を初めて打ち明けた。

     2人のあいさつに感動の拍手が送られた引退式はその後、部長の島による25分間の大演説で幕を閉じたのだった。

     ピーン♪ ピンポーン♪

     放課後の教室に響く、早押しの電子音。

     いや、感動的な引退式の後で申し訳ない。実は年が明けた今も、僕と長崎は相変わらず部活に参加している。3月に開かれる学生クイズ王を決める大会「abc」に出場するためだ。

     大学生以下で争う学生クイズ界最高峰のこの大会で僕は昨年、決勝で敗れ去った。開成クイ研のエースとして、やっぱり負けたままでは終われない。そして、それは長崎もきっと同じ思いだろう。

     脳と心を揺さぶる知の決闘。一度でも会心のウィニングアンサーを決めた“知の勇者”は、その底知れぬ快感から決して逃れることはできないのだ。

     (登場人物はすべて仮名です。敬称略、完)(文・吉田拓矢 写真・伊藤紘二)

    2017年03月03日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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