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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    瞬速の心技体(2)

    大阪市立白鷺中 テコンドー部

    こんな話です

     大阪市立白鷺中(通称・白中)には、全国の公立中で唯一のテコンドー部がある。2年でキャプテンのハヤオは、入学時の部活見学で、テコンドー部が直面する重大な問題を知って衝撃(しょうげき)を受けた。

    ▽過去の連載

    瞬速の心技体(1)

    牛乳、牛乳、ササミ。肉体改造2年計画。

     白中(シラチュー)テコンドー部と顧問の舟戸(ふなと)(りょう)先生との間に残された時間は2か月。その理由を説明するには、僕が入学した2年前の春にさかのぼらねばならない。

    廃部承知の上

     バシッ、バシッ、バチーン!!

     体育館に響き渡る乾いた音。ムチのようにしなり、ミットを捉える長い足。

     これを一目ぼれって言うんだろう。入学直後に行われた部活見学で、僕はてテコンドー部の演武(えんぶ)に心をわしづかみにされた。

     「一緒に強くなりましょう」。演武が終わり、張りのある声で、舟戸先生が壇上(だんじょう)から新入生に呼びかけた。何でも元全日本選手権準優勝の“本物”らしい。「えぇ、もちろんです!」と僕は心の中で敬礼した。

     と、その瞬間だった。

     

     「来年度で廃部しますが…」

     

     なるほど、ハイブすか。

     え? はっ、はは廃部っ!?!?

     

     「私のこの学校での任期は、あと2年。だから面倒を見られるのはそこまでで……」

     話を続ける先生。大阪市の公立中の先生は、初任地に最長6年しかいられない。白中が初任地だった先生は当時、勤続5年目だったのだ。

     テコンドーは危険と隣り合わせのスポーツ。しっかりとした指導者抜きでは活動を続けるのは確かに難しい。部がなくなるから、来年は後輩も入らない。

     一瞬、考え直そうと思ったが、先生の最後の言葉は僕の迷いを完全に断ち切った。

     「それでも一緒に全国をめざそう!!」

    「最短」で強く

     この時、入部を決めた1年生は、僕を含む5人。みんな初心者だけど、小学校時代のスポーツ経験を比べてみると……

     マサト・ユウキ → 空手

     ハルキ・マコタ → キックボクシング

     ハヤオ → ドッジボール

     ぼ、僕だけ格闘技経験なし。大丈夫か? こ、こいつらめっちゃ強いんちゃうか……?

     でも、僕の不安を取り除いてくれたのも先生だった。「強くなるための最短距離を行けばいい」。そう言ってくれたのだ。

     打撃で勝負するテコンドーでは、“リーチの長さ”が大きく勝敗を左右する。簡単に言えば、身長が高く、足が長ければ長いほど有利ってワケだ。試合はボクシングのように体重別の階級で行われるので、どの階級でも強い選手は身長の割に体重が軽い細身の体形をしている。

     先生によると、理想は「身長―体重で110以上、できれば120」。当時、身長1メートル53、体重48キロのずんぐり体形だった僕に先生はまず肉体改造を課した。

     「練習後は牛乳を飲め。夜は炭水化物を控え、鳥のササミなどのたんぱく質をとれ」

     それからは牛乳、牛乳、トリ肉の生活。先生も部員のために、牛乳を用意してくれるなど協力してくれた。

     するとどうだろう。身長はぐんぐん伸びたではないですか……。成長期真っ(さか)りということもあり、僕は約2年で1メートル70、51キロというテコンドー体形を手にしたのだった。先生の式に当てはめると「119」。部内一の数値で同級生にも簡単には負けなくなった。

     先生、これが「最短距離」ということですよね。

     (中学生の登場人物はすべて仮名です。敬称略)

    2017年03月31日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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