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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    レンズ越しの古里(4)

    大船渡高 報道部

    こんな話です 東日本大震災の被災地・岩手県大船渡市の大船渡高校(通称・大高)の報道部は、部員が1年生5人だけという地味な部活。だけど、今年3月、締め切りギリギリになりながらも発行した学校新聞「卒業記念号」は僕、(いつき)らにとって、大きな自信となった。

    ▽過去の連載

    レンズ越しの古里(1)(2)(3)

    笑顔の春へ。刻んだ先輩の足跡。

     東北の冬は長い。僕らが暮らす大船渡市は岩手県内では比較的温暖だけど、11月になれば雪が降り、春を感じるのは桜の咲く4月上旬に入ってからだ。

     でも、僕ら報道部の1年生5人は今年、ちょっぴり熱い冬を過ごした。3月1日に開かれた卒業式に合わせ、僕らだけで、卒業記念新聞を作ったのだ。これが報道部の新たな一歩だと信じて。

     「大切なのは、インパクトがあって、卒業生の思い出になること。4ページのオールカラーだ!!」

     昨年11月の放課後。3年の引退後、部長に就任した賢は大船渡高校新聞「卒業記念号」の編集方針をビシッと宣言した。

     役割分担は、僕と歩美がカメラマン、賢と春太と大介が記者と決まる。よし、次は記事の内容について、と思ったところで……。

     「じゃあ、そういうことで」

     そう言い残し、記者役の3人がそそくさと部室を後にした。ええっ!?と思われるかもしれないが、実は彼ら、演劇部にも所属しているのだ。

     当初は「部員が少なくてまともに劇が出来ない」と請われて、照明係を手伝っていただけだが、最近は3人とも「役をもらえ、楽しくなってきた」なんていって、演劇熱が高まっている。

     「報道部にも来てくれよ」と声をかけつつ、僕は紅葉に(いろど)られた山や野鳥の撮影をしながら、ひたすらカメラの腕を磨く日々を送った。

    前日に完成

     恐れていた通り、新聞作りに着手できたのはそれから3か月後。卒業式を目前に控えた2月に入ってからだ。

     目玉企画は、全部の新部長に寄せてもらう「3年生に贈る言葉」。この()に及んではいちいちアポ入れする暇もない。僕ら5人は、23ある部の部長への“突撃インタビュー”にグラウンドへ、体育館へ、教室へと走り回った。

     「3年生から何を学びましたか?」「今後、どんな部にしたいですか?」「3年生に伝えたいことは?」。矢継(やつ)(ばや)に質問する賢ら記者の脇で、僕らカメラマンはインタビューの様子や練習風景をひたすら連写して撮りまくった。

     急ごしらえの新聞が完成したのは卒業式の前日。予定の半分の2ページしか作れなかったけど、新聞を手に思い出を語り合う3年生の笑顔を見れば、出来()えの良さはわかる。

     そりゃそうだ。1面には3年全5クラスの集合写真や学校行事の写真など、これまで撮りためていたものの中から厳選した42枚のカラー写真を大胆にレイアウト。2面には、かわいい部活の後輩からの熱いメッセージが並んでいるんだから。

     ここ大高で先輩たちが「生きた証し」をしっかりと残せたと思う。まぁ、元部長の池上さんには「なんだ、2ページだけか?」なんて小言は言われたけれど。

    復興へ決意

     卒業記念号を作り終えた僕らは今、誰もやったことがない新企画を検討している。

     それは賢たち3人が兼部する演劇部とコラボして、演劇の映像作品を作ること。テーマは大船渡の復興だ。被災というつらい冬を乗り越え、笑顔あふれる暖かい古里を取り戻す。作品を通じ、そんな決意を伝えたいと思っている。

    (登場人物はすべて仮名です。敬称略、完)(文・吉田拓矢 写真・三輪洋子)

    2017年04月28日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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