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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    氷上走る知略(1)

    南富良野高(北海道) カーリング部

    「カー娘」の町。一投に重み。

     北海道のほぼ中央にある人口わずか2600人の南富良野(ふらの)町。高齢化と過疎化も進み、高倉健さん主演の映画「鉄道員(ぽっぽや)」のロケ地にもなったこの典型的な北国には今、町を挙げて応援するスポーツがある。

     「氷上のチェス」の異名を持つ、カーリングだ。

     「かいちょー。早く来い。置いてくぞ」

     放課後の校庭に山口修明(のぶあき)先生の声が響く。

     「今行きます!!」。ジャージー姿の俺は白い息をはきはき、先生と仲間5人が待つワゴン車の後部座席に滑り込んだ。

     向かったのは車で15分ほどのところの町立カーリング場「空知川(そらちがわ)スポーツリンクス」だ。

     えらくカッコイイ名前だけど、実物を見るとみんなきっと拍子抜けするだろう。町が製材所から買い取った木材置き場を改築した建物で、外観は正直、でっかい倉庫みたいな感じ。屋内もコート2つ以外はほぼ何もない、簡素な造りだからだ。

     「よし、整氷」

     到着すると、巨大なブラシで氷の表面を軽くはく。カーリングは、氷の上でストーンと呼ばれる石を滑らせ、約40メートル先の円を狙うスポーツ。氷の管理はとても重要な作業だ。

     さぁ、そろそろ準備が整ったかな? あっ、自己紹介がまだでしたね。俺は南富良野高校カーリング部部長の「かいちょー」です。ちょっとややこしいあだ名だけど、生徒会長もやってるんで、しょうがないんです。

    トリノ五輪

     うちの町でカーリング熱が急激に高まったのは、2006年のトリノ五輪がきっかけだ。町出身の目黒萌絵選手と寺田桜子選手が代表入りし、五輪でも大活躍。「カーリング娘」なんて呼ばれて、大人気になった。

     南富(なんぷ)の愛称で親しまれるうちの学校にカーリング部が出来たのも、両選手の五輪出場が決まった05年。町のはからいでリンクは無料で使えるし、遠征費用も町が負担してくれるから、中途半端な気持ちではこの部の部員はつとまらない。

    「次」を読む

     この日の練習は2チームに分かれての実戦練習。

     同じチームになったミッツーが最初の一投を放つ。

     ゴロゴロゴロ……。低い音を立てながら、ハウスと呼ばれる円に向かって進むストーン。司令塔役の「スキップ」を務める俺はその動きをチェックし、ブラシで氷をこする「スイーパー」役の2人に指示を出した。

     「イエーッス!!」

     これは「こすれ」という合図。氷をこすれば、ストーンはより滑りやすくなる。力を入れて素早くブラシを動かすので、見た目以上の重労働。気温1度でも汗がにじんでくるほどだ。

     次に出した「ウォー、ウォー」は「こするのやめ」の指示。数秒後、ミッツーのストーンは、ハウスのずいぶん手前ですっと止まった。

     もしかしていきなり大失敗? いえいえ、これも作戦。ミッツーのストーンは、相手がハウスを狙いにくくするガードになる大事な“布石”。

     カーリングは、ハウスの真ん中を狙う単純なゲームではない。相手の次の一手を予想しながら、いかにハウスの中心近くにストーンを残すか、という知恵比べなのだ。そしてそれは、氷上のチェスと呼ばれるゆえんでもある。

    (高校生の登場人物はすべて仮名です。敬称略)

    基本的なルール

     カーリングはストーンと呼ばれる重さ約20キロの石を、40メートルほど先にある円(ハウス)を狙って滑らせる競技。

     1チームは4人。相手チームと交互にストーンを放ち、1人2個ずつ両チーム合わせて計16個のストーンを投げ終えた段階で、円の中心に一番近いストーンを持つチームに得点が入る。円の中に残った石の中で、相手チームより中心に近い石の数が得点になる。

     試合ではこれを10回繰り返し、合計得点が多い方が勝ち。

    2017年06月12日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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