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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    ショットは心の鏡(2)

    共立女子第二中・高(東京) ゴルフ部

    こんな話です 中高合わせ53人の部員を率いる部長のアミ。ただ、入部した時はゴルフ初心者で初のコースデビューは散々なものだった。なぜ、止まったボールをまともに打てないのか。アミはまず、観察から始めた。

    ▽過去の連載

    ショットは心の鏡(1)

    スイング 緻密な動作の結晶。

     チラ見、のぞき見、そしてガン見……。悲劇のコースデビュー後、アミは考える人、ならぬ“見る人”になった。

     先輩たちの技を盗むためだ。止まっているボールを打つだけなのに、なぜこんなにも違うのか。それが知りたかった。

     まず気付いたのは、明らかにフォームが違う。

     どうもゴルフとは、腰が重要らしい。両手でクラブを振り回していたアミと違い、うまい先輩たちはみなスイングの時、腰をくるりと回転させている。クラブも振るというよりは、腰の回転についてくる感じ。

     くるっと回して、ビュン。

     何度も素振りを()り返し、イメージを固めた後は、打席でボールを使ったショット練習だ。

     くるっと回して、スパーン!!

     おっ? いい感じ。よし、もう1球。

     くるっと回して……スカッ!!

     見事な空振り。何で?

     「頭が完全に上がってるぞ」と苦笑しながら小林弘和コーチ。そう。ゴルフのスイングで重要なのは腰だけではない。

     一見、簡単そうなゴルフのスイングには、気をつけるポイントが山のようにある。腰の回転、頭の位置、体の軸、体重移動……。ほんの一瞬の動作だが、何か一つでも狂えば、ボールは意図しない方角へ飛んでいく。

     練習場ならまだいい。コースに出れば、どんな状況下でも最後まで自分のスイングと向き合い続けなければならない。

     「ゴルフで投げやりになっては絶対ダメ」。アミはあの日、祖父が言った言葉の意味をようやく理解できた気がした。

    平常心

     中2の夏、アミは念願かなって、上位20人が参加できる夏合宿のメンバーに入った。泊まるのは別荘地・軽井沢にある大学の寮。3泊4日、ひたすら近くのゴルフ場で練習する。

     最初のショット。胸の鼓動(こどう)を感じながらティーグラウンドへ。ティーにボールを載せる手もおぼつかない。

     「あはは、アミ。焦らないで大丈夫だよ」

     先輩の優しい声で我に返り、フーッと深呼吸。平常心、平常心……。こんなにガチガチでは、またあの日のようになる。

     まずはいつも通りに。高原の澄みきった空気のように頭の中をクリアにして、アミはゆっくりとスイングに入った。

    安定剤

     軽井沢の大自然を楽しむ余裕は全くなかったけど、初日は大きな収穫があった。

     それは「鼻歌」。コースでは、失敗して落ち込むこともあれば、周りが待ってるから急がなきゃって焦ることもある。そんな時、鼻歌をうたうと気持ちが軽くなり、スイングも安定することを発見したのだ。

     充実の1日を終え、部屋に戻ろうとしたその日の夕方。突然、寮内に悲鳴が響いた。

     「変な虫がたくさん出てるっ」

     1年の子が(ふる)えている。確かに小さな虫が(たたみ)に止まったり、ブンブン飛んだり……。アミもゾゾッと鳥肌が立った。

     すると、先輩が部屋に入ってきてアッという間に、パンパンパンッ!!

     「毎日たくさん出るから、倒すしかないんだよ。自然の中だしね」。平然と話す姿を見て思った。うん、何事にも動じない平常心って大事だ。

    (高校生の登場人物はすべて仮名です。敬称略)

    2017年08月01日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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