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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    ショットは心の鏡(3)

    共立女子第二中・高(東京) ゴルフ部

    こんな話です 昨年、先輩たちから選ばれ、部長になったアミは不安でいっぱいだった。自分よりうまい同級生はたくさんいるのに、なぜ部長に選ばれたのか、分からなかったからだ。

    ▽過去の連載

    ショットは心の鏡(1)(2)

    上達の喜び。誰よりも知ってる。

     「うわっ、何これ?」

     昨年7月、夏本番の太陽が照りつける学校のゴルフ練習場に()頓狂(とんきょう)な声が響いた。

     声の主は、部長に就任したばかりのアミ。同じ高2のサラとモモコと一緒に、普段ほとんど使わない“開かずの倉庫”に入ってみたら、思いも寄らぬものが出てきたのだ。

     バーベキューコンロ×2

     木炭が入った箱×1

     「これは、みんなで肉を焼くっきゃないよね」と一瞬でテンションMAXになったアミ。

     「え~。暑いし、イヤ」と渋る2人に「いやいやいやいや、絶対楽しいって!」と言葉をかぶせ、半ば強引に説得。すぐに顧問の池田孝先生にも伝えた。

     「みんな賛成しているので、いつかバーベキューパーティーをやりましょうっ!」

     食いしん坊でもないアミがバーベキューに執念を燃やしたのにはワケがある。

     ど~しても、分からないのだ。自分が部長になった理由が。

     半月前に先生と先輩から伝えられたが、高2の部員は13人もいる。自分よりうまい子だっているし、内心、部長になりたかった子もいるかもしれない。

     「私が選んだんだから、大丈夫」。前部長のノジマ先輩からもLINEが届いたが、肝心な「私を選んだ理由」はやっぱり分からない。

     不安で押しつぶされそうだったけど、とにかく自分ができることをするしかない。それからは、朝から晩まで、ゴルフ部のことが頭から離れなくなった。

    初心者

     アミが特に気になったのは、初心者のみんなのことだ。

     合宿に行けなくて悔しい思いをしたり、レベルの高い部員に圧倒されたり……。自身も中1の時、初心者だったから気持ちはよくわかる。でも、ゴルフの楽しさを知る前に、自分には無理、とあきらめてほしくない。

     そこで考えたのが、夏休みの練習改革。例年は夏合宿を除けば、部の練習日は5日ぐらいしかなかったんだけど、3倍の15日に増やしてもらった。もちろん参加を強制するわけではなく、来られる人にゴルフを楽しんでもらおうというのがその狙い。夏合宿に参加できなかった初心者の子がたくさん来てくれたのが、うれしかった。

     アミにとって最後になる軽井沢での夏合宿も部長として成長できるきっかけになった。

     慣れ親しんだコースでは、かつての緊張がうそのようにゴルフを楽しめた。2日連続でチップイン(グリーンの外から直接カップにボールを入れること)し、自己ベストも97に更新!!

     数え切れないほどボールをたたいた悲劇のコースデビューから5年。ほんとに、ちゃんと成長してこられたんだなぁ、と実感した。そして、その感動を一人でも多くの後輩に味わってもらえたら、とも。

    一体感

     夏休み最終日。いつものゴルフ練習場は、食欲を刺激する炭火の香りと肉をほお張る女子の歓声で満たされていた。以前、提案したバーベキューパーティーがついに実現したのだ。

     「肉、どんどん食べてぇ」

     「アミ先輩こそ、ちゃんと食べてます?」

     中1から高2まで、そして初心者から上級者まで。このパーティーではみんな一緒。

     アミは、ほんの少しだけ見えた気がした。

     部長として自分ができること。

    (高校生の登場人物はすべて仮名です。敬称略)

    2017年08月02日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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