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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    ショットは心の鏡(4)

    共立女子第二中・高(東京) ゴルフ部

    こんな話です 共立女子第二中・高ゴルフ部に昨春、すご腕の新入生が入部した。中学生の時に全米女子オープンに出場した山口すず()だ。高2のアミは彼女の入部を楽しみにしていた。

    ▽過去の連載(1)(2)(3)

    見せない汗。任せた私の「次」。

     プロ並みの腕前の子がうちの高校に!! そんな話がゴルフ部に舞い込んだのは昨春のことだ。

     山口すず夏――。神奈川県出身で2015年、兵庫県で行われた全米女子オープン日本地区最終予選で2位に入り、日本人史上最年少の14歳で本大会に出場した注目の選手という。

     全米女子と言えば、世界中から一流が集まるメジャー大会の一つ。ネットで読んだインタビュー記事でも「東京五輪に出場して金メダルを取りたい」と話すなどスケールが違う。

     「うまい子のスイングを間近で見られるなんて、幸せだよね」。同級生のレイの言葉に、アミはうなずいた。

    多忙

     ところが、期待とは裏腹に、新学期が始まっても、アミがすず夏の“生スイング”を(おが)む機会はなかなか訪れなかった。

     とにかく忙しいのだ。彼女。放課後にはほぼ毎日、外部のゴルフスクールでレッスンがあるし、週末は試合で遠征。昨年は鹿児島や福島、静岡、果てはハワイにまで行ったらしい。

     学校の練習場には、レッスン前に顔を出してくれるけど、ほとんどの時間は、自分のためじゃなく、中学生へのアドバイスに使っている。部員への連絡係とか裏方もやってくれるから、全米女子出場のトップアマというのも実感がわかない。

     ただ、実力は一級品。昨夏の関東大会では、彼女の活躍で共立女子第二高は団体3位に。冬の関東大会では個人戦で優勝を果たしている。う~ん、彼女の強さの秘密って何?

    努力

     それは(こご)えるほど冷え込んだ2月下旬のことだった。

     「卒業生を送る会」のダンス練習で朝7時過ぎに登校したアミは、体育館地下のジムから物音がするのに気付いた。

     そっとのぞき込むと、そこには一心不乱に自転車をこぐすず夏の姿があった。鬼のような形相の彼女の体からは湯気が立ちのぼり、荒い息づかいは早朝の空気を切り裂くように激しいピッチを刻んでいた。

     そういえば聞いたことがあった。すず夏は毎朝6時に登校し、トレーニングしてるって。

     何で今まで気づかなかったんだろう。すず夏はずっと、こんなにもすぐそばで、こんなにも必死に頑張ってたんだ。

     1か月後の3月30日、アミは家のパソコン画面をのぞき込み、一人ガッツポーズをした。

     春の全国大会の結果を伝えるサイト。一番上の「山口すず夏」の名はこれまで以上に燦然(さんぜん)と輝いて見えた。

     「アミ先輩。私、初心者の子たちに教えましょうか?」

     「うん、お願い」

     新学期が始まり、高2になったすず夏は相変わらず後輩の面倒を見てくれている。

     「クラブをボールに当てようと考えすぎないで。まずは、正しいフォームをつくろうね」

     いや、相変わらず、というのはちょっと違うかも。なにせ彼女は「全国1位」。新入部員たちの目の輝きったら、半端(はんぱ)ない。後輩たちにはこれからも第一線で戦う彼女の背中をしっかりと追い続けてほしいと思う。

     ゴルフ部の代替わりは6月下旬。すず夏(ひき)いるゴルフ部はどんなチームに生まれ変わるのかな。OGとして、いやゴルフ大好き女子として見守り続けたい。アミはそう思っている。

    (高校生の登場人物は山口すず夏さん以外は仮名です。敬称略、完)

    文・播磨由紀子 写真・播磨由紀子、米田育広

    2017年08月03日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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