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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    俺の噺を聴け(4)

    浦和高(埼玉県) 落語研究部

    こんな話です

     浦和高校落語研究部の名物寄席と言えば、地元さいたま市の定食屋で開かれる「浦高落研ライブ」。今年のライブで真打ちを務めることになった部長で3年の銀杏亭師弦は大一番に向け、夏にぴったりの古典落語をひそかに練習していた。

    ▽過去の連載

    俺の噺を聴け(1)(2)(3)

    おちゃめな女幽霊。全力の大トリ。

     エー、どうも。銀杏亭(いちょうてい)師弦(しげん)でございます。部活の惑星は1か月の連載ですが、笑っても笑っても、いや、泣いても笑っても、私どものお話も今回で最終回。

     夏の終わりってのは、切ないもんでございますねェ……。ただ、落語の終わりってのは、感傷じゃなく、爆笑に包まれなくちゃあなりません。

    古典

     

     前回、地元・さいたま市の定食屋「よしつね家」で開く校外寄席(よせ)の成り立ちをお話ししましたが、去る7月22日夕、この定食屋で第4回「浦高落研ライブ」が開かれました。

     この日、参加した部員は、各学年から1人ずつの計3人。お客さんは地元住民5人です。ライブの歴史を築いた「銀杏亭棋楽(きらく)」先輩も応援に駆け付けてくれ、この上ないアットホームな雰囲気で幕を開けました。

     まず、1年生の「銀杏亭(ブラック)(ドギー)」(デビュー戦)、2年生の「銀杏亭遊点(ゆうてん)が得意の演目で場を温めます。寄席で最後に登場する噺家(はなしか)を「真打(しんう)ち」といいますが、僭越(せんえつ)ながら今回は私、師弦がその大役を務めさせていただきました。

     「待ってましたっ!」と脇から盛り上げるのは「銀杏亭浄仏(じょうぶつ)」こと、顧問の長澤先生。

     テンテンテンテテ……。スピーカーから()囃子(ばやし)の太鼓の音が流れ、羽織姿の私は真っ赤な高座にひょいと上がりました。

     「エー、暑くなってまいりましたね。浦高じゃようやく今年からエアコンが導入されたんですが、冷気を逃すまいと教室のドアも窓も閉め切る。そこに男が42人。本当にクサい」

     お決まりの男子高ネタで、つかみはばっちり。お客さんの温かいまなざしは噺家冥利(みょうり)に尽きますが、夏といえば、やっぱり涼む怪談話。ってなワケで今回は古典落語「お菊の皿」を披露しました。

    休み

     

     お菊さんという幽霊が『いちま~い、にま~い』と皿を数える有名な怪談「番町皿屋敷」を基にしたこのお話。私が最も力を入れたのは、女幽霊らしい高い声です。そりゃもう相当、家で練習しましたよ。親が寝てから小声でね……(笑)。

     冗談はさておき、このお菊さん。「9枚目のお皿を数えるのを聞くと死ぬ」という怖い幽霊なんですが、世の中には物好きも多いもの。その美しさがたちまち評判となり、「一目見たい」という見物客が井戸にわんさか訪れるようになったんです。しまいにゃ、アイドルみたいに愛想を振りまく始末です。

     ところがある日、背筋が凍る恐ろしい出来事が起きます。

     お菊『7ま~い、8ま~い』

     と、普通はここで終わるんですが、そうじゃなかった。

     お菊『9ま~い、10ま~い』

     ええぇぇぇっ? 9枚目!! し、しかも、超えた!? お客さんたちは「えらいこっちゃ」と大騒ぎ。それでもお菊さんのカウントは続きます。

     お菊『17ま~い、18ま~い』

     見物人『おっ、お菊さん、どうして18枚も数えたんだい?』

     お菊『明日は休むから、いつもの倍、数えたんだよ』

     ……。まぁ、幽霊だって休みたいし、アイドルだって時には普通の女の子に戻りたい。気持ちはわかりますが、ありがた迷惑とはまさにこのことです。

     そんなこんなで、今年の落研ライブも無事終了。あっ、そうだ。私の噺で「18まい」の後にお客さんの笑いをかっさら・・った最後のオチを紹介するのを忘れてました。

    『おしまい』

     (完) 

    (文・増田知基 写真・増田知基、米山要)

    2017年09月14日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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