文字サイズ
    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    青春 舞い込んだ(3)

    中京大付属中京高(愛知県) チアリーディング部

    こんな話です

     2年になり、初めてAチームへの“昇格”を果たしたサエ。しかし、夏の中部大会当日の朝、スタンツ(組み体操のような技)の練習で最悪の事故が起きる。

    ▽過去の連載

    青春 舞い込んだ(1)(2)

    仲間がくれた、立ち上がる力。

     高2の春、私は初めて上位16人で構成されるAチームに入った。

     Aチームは50人超のメンバー全員がめざす(あこが)れの存在。「新入り」の私は、みんなについていくのがやっとで、最初はずいぶんもがき悩んだ。それでも先輩や同級生に支えられて、少しはAチームになじんできたかも、って思えるようになったんだけど……。

     

     ドンッ!!

     体育館に鈍い音が響いたのは、夏の全国大会出場をかけた中部大会当日の朝。肩を押さえて顔をゆがめる3年の先輩を、私はぼう然と見つめていた。

     なぜ、こうなったか、わからない。下のベース3人が伸ばした手の先にトップが立つスタンツの練習で突如(とつじょ)、バランスが崩れた。2mぐらいの高さから落下する先輩を、私たちは必死にキャッチしようとしたが、受け止めきれなかった。

     トップに絶対危ない思いをさせないって誓ったのに……。先輩を搬送(はんそう)する救急車のサイレンに、私の胸は締め付けられた。

     その日、チームとしては、夏の全国大会出場は何とか決めることができたけど、先輩は鎖骨骨折と診断された。それは先輩にとって、最後の大会を欠場することを意味していた。

     私の中で何かが消えた。積極的に演技しようと思っても「また受け止められないんじゃないか」って不安がよぎる。「自分はAチームにふさわしくない」って気持ちも芽生えた。

     補欠に落ちたのも当然の結果だった。

    決意

     チームが夏の全国大会を終えた日の夜、思いもよらぬことが起きた。新チームの体制を決めるミーティングで、副キャプテンに選ばれたのだ。

     同じ2年には、Aチームのメンバーがごろごろいる。なのに、なぜ……。

     戸惑(とまど)う私に、ミーティングを終えた後、新キャプテンに選ばれたミチが言ってくれた。

     「みんなのことをしっかり見ていてくれているサエが、スピリッツには必要だよ」

     心が熱くなった。

     自分で選んだ部活だ。ミチのために、ケガをした先輩のために、みんなのために、私は何ができるのか。残り1年、本気でぶつかろうと思った。そう。自分にはまだやらなきゃいけないことがきっと、ある。

    復帰

     10月、私はAチーム復帰をかけ、冬の全国大会出場メンバーを選ぶトライアウトに臨んだ。

     コーチのぴちさん(下の名前が「桃」だから、みんなこう呼んでる)が鋭い目で見つめる。

     音楽に合わせて力強く舞うダンス、体を目いっぱい広げて躍動するジャンプ。体は熱く、心はクールに一つずつ大切にこなしていく。

     そして迎えた勝負のスタンツ。最後の技はトップの子を放り投げて、3人でキャッチするトスだ。「絶対に受け止める!!」。両腕で仲間の重みをしっかりと確かめた瞬間、私は心の中でガッツポーズした。

     そして、その日、私はAチームに返り咲いた。

     12月の全国大会では、会心のパフォーマンスで全国10位に。少し遠回りしたかもしれないけど、来年の夏は、もっと上の成績をめざそう。そう思った。

     だけど、それから半年後、再び試練が私を襲った。 

     (高校生の登場人物はすべて仮名です)

    2017年10月11日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    おすすめ
    PR
    今週のPICK UP
    宣伝部PR