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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    青春 舞い込んだ(5)

    中京大付属中京高(愛知県) チアリーディング部

    こんな話です

    3年にとって、最後の全国大会。右ひざのケガで欠場を余儀なくされた副キャプテンのサエは、演技をする仲間の姿を見守りながら、この2年半を思い出していた。

    ▽過去の連載

    青春 舞い込んだ(1)(2)(3)(4)

    勝敗の先に気づいた「宝物」。

     8月19日、私たち3年にとって最後の全国大会の日がやってきた。朝、宿舎を出る前、私はAチームのメンバー16人に思いの(たけ)を伝えた。

     「思いっきり楽しむことだけを考えて! そこだけはやりきってほしい」

     ケガでスタンドから見守ることしかできない私がかけられる精いっぱいの言葉。私の分まで、この大舞台で演技できる喜びを味わってほしかった。 

    集大成の2分半

     「Go! スピリッツ」

     出番が来ると、会場の東京体育館は、スピリッツコールでいっぱいになった。

     登場したチームを会場全体で応援するのがチアの試合の流儀。この声援を受けると、何だか大舞台に立つスターになった気分で、アドレナリンがどっとわき出す。

     気迫と緊張とが入り交じる仲間の表情を見て、私も心臓の鼓動が高鳴る。さぁ、集大成の2分半の始まりだ。

     「Let’s Go!」

     音楽がスタートしたと同時に繰り出すのはあいさつ代わりの「バスケットトス」。3か所でトップの子を思い切り放り投げ、空中でくるっと1回転した3人が、ベースの子たちの腕の中に吸い込まれる。わき上がる歓声。OK! つかみは上々だ。

     仲間たちとの時間が、自然と頭に浮かぶ。

     恐怖心と戦いながら、(はげ)ましあって上達したタンブリング。誰かが新しい技ができるようになったら、みんなで自分のことのように喜びあったよね。

     たまたま練習を見てくれた他の学校の生徒が「感動した」って泣き出しちゃったこともあったっけ。驚いたけど、めちゃくちゃうれしかったな。

     どんな時も、絶対あきらめないみんなだから、練習時間が終わっても、納得いくまで2時間でも3時間でも居残りで練習した。そうやってここまでやってきたんだよね。

     濃密すぎる2分半はついにフィナーレの3段ピラミッドへ。

     「できる!」

     みんなに届くように、叫ぶ。上から下までみんなの体の軸が一つにそろって……決まった!!

     ずっと目指してきた完璧な演技。アリーナで喜びを爆発させる仲間の姿がじんわりかすんで見えた。

    魂懸けた2年半

     夜、宿舎でのミーティング。強豪ぞろいの全国大会で、残念ながら決勝に進むことはできなかったけど、キャプテンのミチは後輩たちにこう呼びかけた。

     「勝敗も大切だけど、それ以上に、仲間との演技を楽しむことを忘れないで。私たち9代目は、全国の舞台でそれをやりきれたって、誇りに思っているから。どうか、受け継いでほしい」

     胸が熱くなった。もし勝つことを目的にしていたら、私のチア生活はきっと、つらいことだらけだっただろう。でも、不思議なことに私は一度もチアをやめたいって思うことはなかった。

     互いに命を預け合えるほどの仲間。鍛え上げた体。熱いハート。競技のためだけじゃなく、自然にいつも出るようになっちゃった笑顔。チアがくれた宝物は、もっと他にもあって、後から気づくこともあるかもしれない。

     そう。みんなとの時間は私にとってスピリッツ――「魂」そのもの。いつまでもいつまでも私の中で熱く燃え続ける。(完)

     (高校生の登場人物はすべて仮名です)

    文・播磨由紀子、写真・栗原怜里、小林武仁、播磨由紀子

    2017年10月13日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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