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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    五七五の世界(3)

    所沢高(埼玉県) 文芸部

    こんな話です

     俳句甲子園での屈辱的な敗北からなかなか立ち直れなかったユリ。だが、一人の俳人との運命的な出会いが、再び彼女の俳句熱に火をつけた。

    ▽過去の連載

     五七五の世界(1)(2)

    運命の 出会いで再度 俳句熱

     屈辱(くつじょく)的な結果に終わった昨夏の俳句甲子園。

     「絶対このままでは終わらせない!!」。私は鼻息を荒くしていたけれど、一緒に出たサッカー部の男子4人はあれ以降、一度も姿を見せなかった。やっぱり最後の年はサッカーに専念したいらしい。

     文芸部の俳句チームは、私ひとりになった。

     初めて出た俳句甲子園は正直、ちょっと怖かった。

     我が子のように(いと)おしい作品の弱点を攻め立てられる恐怖。「違うのに」と思いながらも反論が出てこない(いら)立ち……。てか、そもそも私は俳句が好きなだけで、ディベートが好きなわけではない。

     「私、何をめざしてるんだろ」。弱気の虫が顔をのぞかせた。

    ため息の連続

     2年の夏休みが終わり、ひとりぼっちで俳句を詠み続ける私の気持ちは、ますますブルーになった。まわりが急に卒業後の進路を考える雰囲気になったのも大きい。

     ため息。ため息。ため息。なんか学生生活全般、身が入らないっすわ。

     そんな私をよーく見ていたのは、やっぱり文芸部の副顧問・山本純人先生だった。

     「お前、不良を目指すのならこんな不良になれ」と、1冊の本を渡された。それが、運命の出会いだった。


     太陽にぶん殴られてあつたけえ


     その本――北大路翼さんって俳人の句集「天使の(よだれ)」は、俳句なのに、お行儀の良さとか、美しい言葉遣いとかはほぼ皆無。誰にもこびず、自分の心をどストレートに詠んだ作品のオンパレードだった。

     「あつたけえ」って何!? 古文みたいに「あたたかし」って書かなくていいの? あっけにとられたけれど、太陽にぶん殴られるって言い方、実は切ない。何これ、俳句って、こんなこと書けるんだ。 

     こんな作品、私も詠みたい!! 消えかけていた俳句への情熱が一気によみがえった。

    憧れの人

     とまぁ、普通ならここから、仲間を集めて頑張る、って展開になるんだけど、私の場合はさらにスペシャルな出会いが待っていた。

     その年の冬、私があまりにも“北大路さんリスペクト”を強調するから、山本先生が「そんなに好きなら会いに行くか」と、本人に連絡をとってくれ、会いに行くことになったのだ。

     北大路さんは自分が経営する新宿のアートサロンで開かれた句会に私を招待してくれた。憧れの人を前に最初は緊張したけど、みんなすごくざっくばらんで優しくて、初めて会ったとは思えないぐらい、うち解けることができた。

     そして今年1月、意を決した私はひとり、北大路さんのアートサロンを訪ね、頭を下げた。

     「俳句甲子園に向けて俳句を指導してください!」

     突然の申し出に最初はきょとんとしていた北大路さん。でもすぐにいたずらっ子のような笑顔を見せて、言った。

     「いいよ。でも、メンバーをちゃんと、集めてくれるならね」

    (高校生の登場人物はすべて仮名です)

    2017年11月29日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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