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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    五七五の世界(4)

    所沢高(埼玉県) 文芸部

    こんな話です

     最後の俳句甲子園で「天下取り」をめざすユリ。憧れの俳人・北大路翼さんの指導を受けながら、本格的に俳句作りに取り組むが……。

    ▽過去の連載

     五七五の世界(1)(2)(3)

    旅に出る 恩師の言葉 思い出す

     冬休み明けの放課後、私は同級生のノドカと一緒に、文芸部の山本純人先生をつかまえて、なし崩し的に作戦会議を始めた。

     議題は「誰を俳句甲子園のメンバーに誘うか」。

     「読書好きなら俳句も好きだろう。ユリ、後輩で探してみてくれ」

     「聞いてみる」

     「あと、マツリは授業でいい俳句作ってた。俺が声をかけるよりお前らが行った方が効果あると思うぞ」

     「じゃあ、ノドカ、一緒に行ってみようか」

     「分かった」

     紹介が遅れたけれど、ノドカっていうのは、私が誘い入れた記念すべきメンバー第1号。もともと短歌が趣味で、性格的にもウマがあったので、2学期の4か月間をかけて口説き落としたのだ。

    気合で勧誘

     山本先生情報をもとに、手分けして10人くらいに声をかけた私たち。でも、2年の3学期と言えば、そろそろ受験も意識し始める頃で、勧誘作業はホント難航した。なので、最後の方はほとんど気合という名の開き直り。山本先生が推薦したマツリの時なんかもそうだった。

     「あんまりキョーミないんだよねえ」

     申し訳なさそうに、ずばっと核心を突いてきたマツリ。ぐっ、…一瞬ひるんだが、私とノドカは必死に食い下がった。

     「どうしてもイヤ、っていうのじゃなかったらお願い!」

     「後悔しないし! たぶん」

     「たぶん、って」

     「いや、ごめん。でも、きっと楽しいって。たぶん」

     「もう…そんなに言うならやってみようかな」

     「うそ!? ほんといいの?」

     「じゃあ、断っていいの?」

     「それはだめ。ありがとう!」

     そんなこんなで1か月かけて5人のメンバーをそろえた俳句チーム。ほとんどが俳句初体験のメンバーだけど、大丈夫、私たちには、北大路翼さんという強い味方がいる。

     忙しくてなかなか学校に来られない北大路さんに、山本先生が毎日、メンバーの俳句を集めてメールで送ってくれた。

     「これじゃ俳句じゃなくて標語だよ」

     「これいいよ、今日イチだね」

     北大路さんの熱い指導の言葉が山本先生を通じて伝わってくる。くぅ~、なんて幸せな俳句生活。あとは本番に向けて、ひたすら俳句を作るのみ!! そう思っていたのだけど……。

    熱い励まし

     「残念ながら旅に出ることになりました」

     そんな奇妙な連絡が山本先生から入ったのは春休み中のこと。うわさでは聞いていた。でも、信じたくなくて、これまで本人にはあえて聞かないでいた。

     そう、異動だ。

     年度末で別の学校に行ってしまうという。なぜこのタイミング……。せめて夏の俳句甲子園、見守ってほしかったのに。

     4月の離任式で会った山本先生はすごく寂しそうな顔をしていた。「ユリは間違いなくこれまでの教え子の中でも一番俳句を作っている。ユリならやれる。後は任せた」。相変わらず熱い言葉で励ましてくれる山本先生に、私はうなずいた。

     俳句をつけているノートをぱらぱらと見返した。今見ると大した句じゃないのに、先生が褒めてくれたのばっかりだ。あー、こっから先はそれがないんだな。「大丈夫、ユリならやれる」。心の中で山本先生の声が聞こえる。そういえば、このノートも先生からもらったものだった。

     (高校生の登場人物はすべて仮名です)

    2017年11月30日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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