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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    Action!(2)

    米子高専(鳥取県) 放送部

    こんな話です

     米子高専放送部は2016年、高校生向けの映画コンクール「eiga worldcup」の自由部門で最優秀作品賞を受賞した実力校。部長で3年の河本らは2連覇を目指し、次の作品づくりに精を出していた。

    ▽過去の連載

     Action!(1)

    意見対立。主演女優は目で、口で、語る

     1年生部員の長谷川(タイチ役)が、部長の河本(かわもと)(ユウタ役)を豪快に海に投げ入れる。新作映画の衝撃的な冒頭シーン、実は「フィクションの中のフィクション」という位置づけだ。脚本はこう続く。

     ザッパーン……

     〈その時タイチは無我夢中だった。つづく〉

     まなみ『って、また続くんかい!』

     場面は文芸部の女子2人が頭を悩ます図書室に切り替わる。

     まなみ『起承転結でいうとこの“結”が大事じゃん!』

     恵梨香『続きって……書けなくない?』

     引退を目前に控えながら、なぜか小説を最後まで仕上げられない文芸部員・恵梨香。彼女こそ新作「夢見る乙女のcontinue」の主役だ。

     恵梨香役は、昨年のeiga worldcupで、最優秀女子演技賞に輝いた2年の升田(ますだ)が務める。審査員の一人だった女優の川島(かわしま)海荷(うみか)さんに、「自然な演技がいい」と高く評価されたほどの実力者なのだが……。

    妥協できない

     脚本には実は、別案があった。イケメンの長谷川が別の放送コンテストで女装を披露して話題になったことから、米子高専放送部にはこの夏、空前の“女装ブーム”が到来。河本は今回もそのお笑い要素を脚本に取り入れようとしていた。

     が、猛反発したのは升田だ。

     「やりすぎじゃないですか?」

     「いいじゃん、ネット配信している設定にしよう! ユーチューバーみたいなさ。アハハ」

     「いや、キモい」

     「………」

     この会話をきっかけに、河本と升田は半日も言い合いを続けた。「まあまあ」と部員がなだめる中、2人はにらみ合って火花を散らしたのだった。

     高専生なのに「数学も理科も嫌い」と断言する升田は、人には簡単に流されない。この学校に入ったのは、中3の時、放送部の先輩の映画を見て感動したから。映画作りでは妥協できないタチなのだ。

     だけど、それはこっちも同じだ。河本は、譲らない主演女優を見てむっつりとした。

    確かな演技力

     必死のアピールもむなしく、結局、女装チューバー案はお蔵入りに。「夢見る乙女~」の撮影で、河本は升田をとらえるカメラ兼監督に回っていた。

     「はい本番、用意……スタート!」

     続きを書こうとひとりパソコンに向かう恵梨香。そこに意中のモテモテ男子・泰斗(タイチ役と同じ長谷川)が現れ、顔と顔が触れそうな距離まで近づく。

     泰斗『よく見たらお前、カワイイね』

     恵梨香『……!!』

     驚きと、戸惑い。セリフはない。だが升田の目からはしっかりと感情が受け取れた。「さすがだ」。河本は確かな演技力を再認識せざるを得なかった。

     「なんだかんだいって、河本監督(、、)が仕切らない現場って考えられないかも」

     撮影が終わってから、升田は周囲にこう語ったという。モテ男子なら「意外とカワイイとこあんじゃん」とほめておくのが正解か。

     河本は可笑(おか)しくなって、首を横に振った。いやいや、彼女とのバトルに終わりなんかない。物語にはたまには“結”なんかなくたって、いいのだ。

    2018年01月23日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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