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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    タスキはつながった(3)

    東海大付属福岡高(福岡県) 陸上競技部

    こんな話です

     駅伝の無名校・東海大福岡にやってきたケニア人留学生キムンゲ・サイモンは、2016年の夏合宿で大けがを負い、戦線離脱する。1年生の川添をはじめ、チームは重苦しい雰囲気に包まれる中、全国高校駅伝の福岡県予選が迫ってきた。

    ▽過去の連載

     タスキはつながった(1)(2)

    ピンチ迎え チームは一丸

     2016年秋の陸上部は正直、どん底の雰囲気だったと川添は思う。

     チームの救世主になると期待されたケニアからの留学生キムンゲ・サイモンが夏合宿中に右足の骨を折る大けがを負ったからだ。

     2学期の始業式の日、松葉づえをついて登校したサイモンの姿は想像していた以上に痛々しかった。ついこの前までは「(みやこ)大路(おおじ)」に手が届くかもと思っていただけに、この心の落差って半端ない。みんながぽっきりと折れそうになる自分の心と戦っていた。

     いや、正確に言えばただ一人、3年の大保(だいほ)を除いては……。

    「元エース」奮起

     大保はサイモンが来るまでチームの絶対的エースであり精神的支柱だった。全国高校駅伝の福岡県予選でも1年で準エース区間の3区、2年では最長10kmのエース区間1区を走った。

     サイモンがはじめて部にやってきた時、最初はそのスピードに驚いていたけど、それはすぐにリスペクトに変わった。いつも誰よりも必死にサイモンの背中を追い、サイモンに圧倒されそうになる他の日本人部員を励まし続けた。

     2人で最高の走りを見せれば都大路――。自分への期待は誰よりも強かったはずだし、サイモンと挑む最後の県予選を誰よりも楽しみにしていたはずだ。

     だが、大保はサイモンが離脱した直後から毎日、部員に言い続けた。

     「俺たちはサイモンだけのチームか。サイモンに頼らない駅伝をしよう」

     たぶん、その言葉と、練習でチームを引っ張り続ける彼の背中がなければ、今の強い陸上部はなかったと川添は思う。

    過去最高3位

     2016年11月、チームはついに全国高校駅伝の福岡県予選の日を迎えた。優勝候補はもちろん県予選30連覇中の大牟田(おおむた)。都大路を勝ち取るにはこの絶対王者の高い壁を越えるしかない。

     レース前の円陣。松葉づえなしでようやく歩けるようになったサイモンも加わり、大保は部員を鼓舞した。

     「みんなの力で、都大路、行くぞ!」

     フルマラソンと同じ42.195kmを7人でタスキをつなぐ男子の高校駅伝。この日、東海大福岡は魂の走りを見せた。

     エース区間の1区。最後の駅伝にかける大保は序盤からトップ集団をぐいぐい引っ張った。ラストの直線では、サイモンばりの短距離選手のようなスパート。2位に13秒、王者・大牟田に1分以上の大差をつけ、タスキをつないだ。

     準エース区間の3区で首位を譲ったものの、チームはその後も粘りに粘り、創部以来、過去最高の3位でゴール。大会は大牟田の31連覇で終わったが、まさかの展開を演出したダークホースには惜しみない拍手が送られた。

     沿道で声をからしたサイモンにとっても、この試合は特別なものになったらしい。試合後は1年生としてただ一人、出場した川添らに興奮気味に声をかけた。

     「ライネンハ、カツゾ」

     サイモンが再び走れるようになったのは翌年の春。大保が後輩たちに都大路の夢を託し、学校を卒業した直後のことだった。(敬称略)

    2018年02月28日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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