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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    タスキはつながった(5)

    東海大付属福岡高(福岡県) 陸上競技部

    こんな話です

     ケニア人留学生キムンゲ・サイモンの加入で急速に力を伸ばしてきた東海大福岡陸上競技部。いよいよ夢の(みやこ)大路(おおじ)をかけた全国高校駅伝の福岡県予選を迎えた。31連覇中の絶対王者・大牟田(おおむた)という高い壁をチームは越えることができるのか。

    ▽過去の連載

     タスキはつながった(1)(2)(3)(4)

    悲願の都大路。さらなる戦いへ

     2017年11月5日、快晴。ついに運命の時、全国高校駅伝福岡県予選がやってきた。

     気温16度、湿度55%、南東の風1.5m。32連覇がかかる絶対王者・大牟田(おおむた)に挑むには絶好のコンディションだ。

     午後1時、陸上競技場に号砲が響き、都大路行きをかけた戦いがスタートした。

    完璧な走り

     「いいか。1区は大牟田から40秒以内につけ、2区は粘る。3区でトップに立ったら、あとは逃げ切る」

     監督の田代が授けたプランは「中盤差しきり」作戦。チームにはスーパーエース・サイモンがいるが、大会ルールで外国人留学生は最長区間の1区(10km)は走れない。サイモンは2番目に長い3区(8.1km)を走り、ここで主導権を握る作戦だ。

     1区を任された3年の小田部(こたべ)には気負いはなかった。中盤から大牟田に遅れはしたが、その背中を視界に捉えながら淡々とペースを刻む。逆に他校はみな、3区のサイモンを警戒するあまり走りが硬い。

     トップと20秒、2位の大牟田と17秒差の3位で10kmを走りきった小田部。想像以上の完璧な走りに、中継所で待つ2年の中野に大声で伝えた。

     「都大路行くぞ!」

     中野も区間3位の力走でトップと33秒差で中継所へ。準エース区間の3区を任されたサイモンが待ち受ける。

     「頼んだ」「マカセロ」。一瞬のタスキリレーから、爆走が始まった。前を行く2校を3km過ぎで捉えると、並走すら許さず、一気に抜き去る。

     その後は“サイモン劇場”。全身バネのような走りで後続を引き離し、2位に40秒差、3位大牟田には1分近い差をつけ、3年の守田につないだ。最後は笑顔で「ヨロシク」ってね。

     ここからは「サイモンだけのチームじゃない」ことを証明する展開だった。

     守田と、続く5区の2年の川添が連続で区間賞を獲得。6区の2年の小林は堅実な走りでリードを守り、いよいよタスキはアンカーの3年、石松へ。

     すでに2位に1分以上、大牟田に1分40秒以上の差をつけていた東海大福岡。リードをしっかり守った石松が競技場に入ってきた瞬間、スタンドからどよめきと拍手がわいた。

     最後の直線。人さし指を天に向けて突き上げ、ゴール!! あっという間に歓喜の輪ができた。

     「都大路だっ!!」。主将の上別府(かみべっぷ)が叫んだ。サイモンと川添は笑顔でハイタッチをかわし、互いの健闘をたたえた。

    新たな目標

     12月24日、初の都大路は、チームに新たな目標というクリスマスプレゼントをくれた。

     最初からチーム全体がどことなく気負っていた。1区から出遅れ、見せ場は3区・サイモンの5人抜きだけ。38位という大惨敗だった。

     「ライネン、マタキタイネ」

     川添はレース後、サイモンが漏らした一言が忘れられない。初めて踏んだ都大路の舞台は、それぐらい“何か”が違った。

     復活をめざす絶対王者・大牟田、その先に待ち受ける全国の強豪たち……。乗り越えるべき壁はすごく高い。

     僕らはどこまで行けるのか。サイモンと一緒に、もっと上の世界を見てみたいと川添は思った。(敬称略、完)

     (文・吉田拓矢 写真・中司雅信、長沖真未、吉田拓矢)

    2018年03月02日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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