文字サイズ
    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    陽気なダンサー(2)

    好間 ( よしま ) 高(福島県) フラダンス部

    こんな話です

     “東北のハワイ”と呼ばれる福島県いわき市。こののどかな街にある好間高校のフラダンス部で現在、部長を務める2年生の花は、ある先輩の笑顔のとりこになり、入部を決意した。

    ▽過去の連載

     陽気なダンサー(1)

    かわいすぎる先輩に憧れて

     いわきの人たちってどんな困難も笑顔で乗り越える底力があるのかな。花は、地元・福島県いわき市のフラダンスの歴史を考えるたびに、そう感じる。

     半世紀余り前、衰退(すいたい)した石炭業に代わり、ハワイをテーマにしたレジャー産業で街は復活。このサクセスストーリーを描いた映画「フラガール」が2006年に大ヒットし、いわきは「フラガールの街」として全国にその名が知れ渡った。

     2011年には街の新たな名物を目指して、高校生のフラダンス日本一を決める「フラガールズ甲子園(フラ甲)」が始まった。東日本大震災の影響で、開催時期が当初予定していた3月下旬から夏に延期されたけど、そもそも開催できたこと自体、奇跡に近い。そして、「フラ甲」は今、いわきの復興を象徴する夏の風物詩になっている。

    「フラ甲」で発見

     15年の夏、中3の花は受験勉強もそこそこに、家でフラ甲のネット生中継を眺めていた。バレー部を引退したばかりでどうも生活にハリがない。

     メイクをバッチリ決め、ステージで優雅に舞う女子高生たち。「楽しそうでいいよなぁ」。思わずため息が出た。

     と、その時、花の目に突如(とつじょ)、ひときわ輝きを放つダンサーの姿が飛び込んで来た。地元・好間高校でセンターをはるその人の笑顔は、どこまでもピュアで自然体。まるでダイヤのように輝いていた。

     「この人と踊ってみたい」。花はそう思った。

    タフで明るい

     好間高校に入学し、知った。その人――3年のマナ先輩はどんな困難も笑顔で乗り越えるタフで底抜けに明るい人だった。

     4月に開かれたフラ部の見学。何でもこの年、愛好会から部への昇格を果たしたらしく、先輩たちは気合十分。で、その中心にいたのがマナ先輩だ。体育館の隅の鏡張りのステージの上で開口一番、「マナです♪ よろしくね! まずマナが踊るからぁ、みんなも同じように踊ってね♪」

     !! か、かわいすぎる。しかも、妙に元気だ。

     見学者の驚きをよそにマナ先輩はCDプレーヤーをちょちょいと操作、陽気なハワイアンソングにあわせ、あでやかに舞い始めた。鏡越しに見えるその笑顔はネット中継で見たそのまま。指先まで神経が行き届いたその所作は、思わず見惚(みほ)れるぐらい美しかった。

     5曲ほど見本を見せてくれたマナ先輩はくるりと振り返り、13年に誕生したフラチーム「Uilani O’lapa」の由来を説明してくれた。

     「Uilani O’lapaはハワイ語で『陽気なダンサー』という意味があります。震災でつらい思いをしている人たちに笑顔を届けたい、という思いで設立されました」

     一転して真面目な表情で語るマナ先輩。花も「震災」という言葉にギュッと身を硬くした。

     「だから――」

     だから――? 

     「私たちはぁ、いつも笑顔と元気を大切にしています。今日もみんなと踊れてホントに楽しい♪ みんなでフラ甲の優勝めざそうね☆」

     !! か、かわいすぎる。花ら1年生はその日、アッという間にマナ先輩のファンになった。

     だけど、後で聞いた。うちのチームは創設メンバーが卒業した後、マナ先輩だけになったんだって。それでも、彼女は一人、フラを続けた。みんなに笑顔を届けるために。(高校生の登場人物はすべて仮名です)

    2018年05月15日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    おすすめ
    PR
    今週のPICK UP