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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    驚きが隠し味(3)

    鎌ヶ谷高(千葉県) 料理研究部

    こんな話です

     オリジナルレシピの開発に精を出す鎌ヶ谷高校料理研究部。2年生にもなると包丁さばきが手慣れてくるが、中には包丁をほとんど使わない部員だっている。ひらめき重視のデザート担当・カオリだ。

    ▽過去の連載

     驚きが隠し味(1)(2)

    ひらめきと失敗 一番のスパイス

     玉ネギのみじん切りに、大根のかつらむき。料理と言えば、華麗(かれい)な包丁さばきを想像する人も多いだろうが、料研にはほとんど包丁を持たない部員もいる。

     2年生のカオリはその一人。入部するまで包丁を(にぎ)ったことすらない超初心者だった。

     う~む。

     3月の放課後。一口大に丸く焼き上がった抹茶のケーキを前に、カオリはうなった。半年後の文化祭で出すブッセのレシピを考えているのだ。

     テーマは「和」。無難なのは、生クリームとかを挟むことなのだけれど……。

     あっ! カオリの顔がぱっと変わったのを、相棒のアキは見逃さない。

     「冷蔵庫の賞味期限間近のあれ、いれちゃお☆」

     アキは一瞬たじろいだが、カオリのひらめきに後退の2文字はない。「う、うん、やってみよう」

     ペースト状にしたのは、乾燥しかけた梅干し。ほわっと角が立つ生クリームと合わせ、ケーキの間にそっと挟んだ。

     「抹茶のブッセ~梅香るクリーム~」の完成だ。でも、

     「ううっ」

     うめき声と共にみるみる青くなるアキの顔。甘く濃厚な生クリームに、梅干しの酸味と塩辛さが混ざり合い……

     「よし、分かった! 生クリームと梅干しの相性は最悪」

     いつもは、みんなに試食してもらうが、今回の作品は2人だけにとどめておくことにした。

     料理って、やってみないと分からない。プロじゃないからこそ、余計な先入観も決まりもない。そう。私たちって自由。失敗することだって自由なのだ。

    冷蔵庫一掃

     ひらめき重視の研究家・カオリがこよなく愛する料研の恒例行事が、テスト休みや長期休みの前に行われる「冷蔵庫一掃(いっそう)料理」だ。

     料研の食材費は毎月1人1000円の部費と焼き菓子の校内販売で(まかな)われているが、週に4日試作するとあって、“家計”はいつもギリギリ。食材を一片も無駄にはできない。

     というわけで、休み前には冷蔵庫に入っている食材をすべて使い切る実験、いや料理が行われるのだけど、「もったいない」という金科玉条(きんかぎょくじょう)のもと、カオリはあり得ない組み合わせを次々と試し、これまで数多くの“迷作”を生み出してきた。

     例えば、最近でいえば……。

     天かす+そうめん+マーガリン=ソーメンチャンプルー

     薄揚げ+大量のチーズ=ピザ

     鶏ひき肉+豆腐=ナゲット

     100点満点の味にはほど遠くても、まるで化学反応みたいに次々と未知の味が出現する。カオリにとって、ここで作り出す一品一品は大切な成長の(かて)というわけだ。

    めげない

     再び抹茶のブッセの研究。今度は生クリームに砕いた薄焼きせんべいを入れた。塩味はうまくなじんだんだけど、時間がたつとベちゃっとした食感に。う~ん、この日2度目の失敗だ。

     じゃあ次は甘納豆。おっ、これは生クリームとの相性抜群!!

     ご意見番のサツキも「明日の朝ご飯で食べてもいいかな」。おっ、これは合格ラインか、と思いきや「なんにも入れない方がおいしいけどね」とやっぱり辛口だ。

     でも、カオリはめげない。だって、ひらめきと失敗は究極のデザートに欠かせない一番のスパイスなのだから。(高校生の登場人物はすべて仮名です)

    2018年05月30日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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