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    生活

    都心の高級旅館、「謎の立ち食いそば屋」を訪ねてみた

    メディア局編集部

     高層ビルが立ち並ぶ東京のビジネス街・大手町に今年7月オープンした「星のや東京」。18階建てのビルが丸ごと日本旅館に仕上げられており、1泊7万2000円(税、サービス料込み)からという値段ながら、「日本人のビジネスマン、ビジネスウーマン、外国人旅行客にご好評をいただいている」(星野リゾート広報)らしい。

     この高級旅館に「隠れ家的な立ち食いそば屋がある」との話を耳にした。高級旅館に立ち食いそば屋、意外な組み合わせに興味を持ち、訪ねてみることにした(といっても読売新聞社の向かいの建物なのだが)。

     まずは入り口を探す。この旅館、一般的な旅館やホテルなら一目で分かる、開放的なエントランスが見当たらない。建物の周囲を歩いてみると、「ご宿泊者様専用」と書かれたエントランスがあったが、ここからは入れない。

    • 「Minatoya2」の入り口。一見して立ち食いそば屋だとは分からない
      「Minatoya2」の入り口。一見して立ち食いそば屋だとは分からない

     迷った末、いったん引き返してみると、建物の南側の角に、何の表示もない入り口を見つけた。幸い扉は開いている。中をのぞいたら、サラリーマンやOLが何やら丼に入ったものを食べている。どうやら、ここが例のそば屋らしい。看板ものれんも出ていないので、気付かずに通り過ぎてしまっていた。

     恐る恐る店に入ろうとすると、女性店員に「まずは食券を…」と声を掛けられた。後ろを振り返ったところ、建物の支柱に黒い券売機が2台、据え付けられていた。頑丈な耐火金庫のようにも見えるその券売機には、「冷たい肉そば 1000円」と書かれた小さな押しボタンが一つ付いているだけ。メニューはこれだけのようだ。

     店に入って、カウンターに食券を置く。店の広さは約20平方メートル。照明を抑えた内装は黒が基調で、高級感が漂う。数人の客が立ったまま大きな長テーブルを囲むようにして、そばをすすっている。客の半数は女性だ。

     肉そばは数分で出てきた。豚バラ肉と白ネギ、刻みノリが山のように盛られ、今にもこぼれそう。山をかき分けて、そばを口にしてみると、コシの強さに驚く。生卵が付いていて、少々辛めのそばつゆに入れるとまろやかな味になり、食が進む。

    • 冷たい肉そば 1000円
      冷たい肉そば 1000円

     山盛りのそばをたいらげ、店を出る。おっと、肝心なことを聞き忘れるところだった。「お店は何と言う名前ですか」。女性店員に尋ねると、「『港屋2』といいます」という答えが返ってきた。外に出て周囲をあらためて見渡してみた。すると、扉から2メートルほど離れた壁に「Minatoya2」と小さく書かれた表札を発見した。

     ここは、東京・虎ノ門にある人気店「港屋」の2号店だった。

     それにしてもなぜ、都心の高級旅館に立ち食いそば屋なのか。「星のや東京」を運営する星野リゾート(本社・長野県軽井沢町)の広報担当者は「日本文化を発信している高級日本旅館として、立ち食いそば屋も素晴らしい日本文化であり、外国人ビジネスマンなどにぜひ立ち寄ってほしいと考えて、港屋さんを誘致した。店の内装や1杯1000円という値段など、ラグジュアリー感にはこだわっている。そばをズズッとすすりながら食べるのも日本の文化。大手町のビジネスマン、ビジネスウーマンの皆さんは、外国人ビジネスマンに手本を示していただければ」と説明する。

     静かな店内でそばをズズッとすすり上げるのは抵抗があったけれど、今度行った時は、堂々とすすり上げることにしよう。

    2016年10月07日 19時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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