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    経済

    「スナバ」県知事、小さくても勝てる法を語る

    メディア局編集部 田口栄一
    • 鳥取県のPR戦術を語る平井知事(10月20日、日本記者クラブで)
      鳥取県のPR戦術を語る平井知事(10月20日、日本記者クラブで)

     「スタバはないけど、日本一のスナバがある」と言って一躍有名になった鳥取県の平井伸治知事が、小さな県であることを逆手に取ったPR戦術の要諦を語った。

     平井知事は今年9月、『小さくても勝てる 「砂丘の国」のポジティブ戦略』(中公新書ラクレ)を出版。10月20日に都内で記者会見を開いた。

     鳥取県の人口は57万4000人(2015年10月現在)と、全国の都道府県で一番少ない。そのためか、チェーン店が全国展開する際は一番後回しにされるケースが多い。

     12年9月、お隣の島根県にスターバックスが進出。全国で唯一の空白県となった鳥取県に在京のテレビ局が取材を申し込んだ。満を持してインタビューに臨んだ平井知事だったが、「スタバはないけど、ドトールコーヒーなら3軒ある」などと言った部分は編集でカットされ、冒頭に引用した「スナバ」発言だけが残った。

     ところがこれが大受け。インターネット上で拡散した。14年4月には鳥取県内の居酒屋が「すなば珈琲」を開店、翌15年5月には本物のスターバックスが進出した。今や「すなば珈琲」は観光スポットになっている。

     有名チェーン店が進出していないのはなぜか。平井知事によると、「鳥取県は『とっておく県』ですから」。ものは考えよう。何事もプラスにとらえるのがポイントだ。

    • 「すなば珈琲」開店の際には平井知事も駆けつけた(2014年4月)
      「すなば珈琲」開店の際には平井知事も駆けつけた(2014年4月)

     セブン―イレブンがないことは、昨年まで話のネタに使っていた。「セブンはなくてもいい気分になれる」。ところが15年10月に本当に進出してきて、このせりふはお蔵入りに。

     今年10月には弁当チェーン「ほっともっと」が出店。「これでやっと『じもっと』だと歓迎いたしました」

     好調なのは口先だけではない。07年に初当選、現在3期目の平井知事は議会や県庁の改革を実行に移した。まず、議会で質問時間の制限をなくした。その代わり、原稿はなし。真剣勝負で答弁する。事務方は原稿を用意する必要がなくなり、職員の残業が減った。

     予算編成の査定は、知事査定1回のみに絞った。財政当局の職員は年末に自宅で紅白歌合戦を楽しんでいるという。浮いた人件費は子育て支援など独自の政策に回す。

     こうした改革は、規模が小さい県だからこそ機敏にできる。平井知事は「小さいからといってあきらめる必要はない。コミュニティーの中にいろんな知り合いがいて、意を通じ合うことができる。みんなで意思を束ねれば、どこにも負けない力になる」と語る。

     中央公論新社から出版された『小さくても勝てる 「砂丘の国」のポジティブ戦略』は、これまでの平井知事の取り組みをまとめたもの。平井知事は「中央公論がこれからは地方公論もやるということなので感謝しています」と語っている。地方のユニークな取り組みは、今後の自治体のあり方を考える上でヒントになりそうだ。

     記者会見翌日の10月21日、鳥取県は県中部を震源とする地震に見舞われた。建物などを中心に被害が出たが、平井知事は観光への影響を最小限に食い止めようと奔走している。名物のカニはこれからが本番。カニの水揚げ量と一世帯あたりのカニ消費量は鳥取県が日本一となっている。

     11月6日には、いよいよズワイガニ漁が解禁される。これを前に平井知事は「今年も鳥取県は『蟹取(かにとり)県』に改名しました。取れなくなれば鳥取に戻します」と宣言。鳥取県内では、対象の宿泊施設に泊まれば抽選で旬のカニが当たる「ウェルカニキャンペーン」も行われている(来年2月末まで)。

     平井知事は「鳥取にぜひ来てください。ウェルカニ」と言って、指ではさみを作った。

    • 『小さくても勝てる 「砂丘の国」のポジティブ戦略』平井伸治著(中公新書ラクレ)
      『小さくても勝てる 「砂丘の国」のポジティブ戦略』平井伸治著(中公新書ラクレ)

    2016年11月02日 12時11分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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