文字サイズ
    ちょっと気になるニュース、インターネットやSNSで話題のトピックス……。世の中の「今」をお届けします。
    社会

    保育事故で長男を亡くした母親 13回忌に遺品の写真展

    読売新聞生活部 矢子奈穂

     12年前に保育事故で4歳の長男を亡くした女性がその遺品を撮影した写真展「20050810」が、東京都内で開かれている。息子の死後に大学で写真を学び、長い間触れられなかった洋服や靴などをカメラに収めた。

    「遺品一つ一つを見つめ、何百回もシャッターを切った」

    • 榎本さん(右)と侑人ちゃん(中央)、夫の高志さんの家族写真。亡くなる約5か月前に撮った(榎本さん提供)
      榎本さん(右)と侑人ちゃん(中央)、夫の高志さんの家族写真。亡くなる約5か月前に撮った(榎本さん提供)

     この女性は、埼玉県上尾市の榎本八千代さん(49)。長男の侑人ゆうとちゃんが2005年8月、通っていた同市の認可保育所で、本棚の中に入って熱中症になり、死亡した。

     突然の死を受け止められなかった榎本さんは、仕事を辞め、ほとんど何も手に着かないまま、数年を過ごした。「このままじゃいけない」と思い始めたのは、七回忌を終えた頃から。高校時代に美大を志したことを思い出し、14年に京都造形芸術大学通信教育部に入学。写真を専攻し、一から学んだ。

     3年生の時、写真家の石内都さんの写真集「ひろしま」に衝撃を受けた。被爆者たちの遺品が写っていた。自身も卒業制作で侑人ちゃんの遺品を撮ろうと決意した。

     16年春、息子の靴や洋服を手にとった。約10年ぶりのことだ。最後に着ていたTシャツは胸の部分が破かれていた。救急隊員が救命救急の措置を行った跡だ。胸が苦しくて、泣き崩れた。シャッターもうまく切れなかった。30点ほどの遺品の撮影に約1年かかった。

     榎本さんは「遺品一つ一つを見つめ、何百回もシャッターを切った。カメラを通して息子の死と初めて向き合えた」と語る。こうした心の整理の仕方があることを知ってほしいと、写真展の開催を決めた。

    • 侑人ちゃんが履いていた運動靴の写真(榎本さん撮影)
      侑人ちゃんが履いていた運動靴の写真(榎本さん撮影)
    • 侑人ちゃんが最後に着ていたTシャツの写真。胸の部分が切り裂かれている(榎本さん撮影)
      侑人ちゃんが最後に着ていたTシャツの写真。胸の部分が切り裂かれている(榎本さん撮影)

     個展のタイトルは侑人ちゃんの命日からとって「20050810」とした。通っていた保育所などの写真47点のほか、靴などの遺品や保育園の連絡帳も展示する。

     「いつまでも被害者の母親を引きずっていたくない。息子に『しっかりやっているね』と思われたい」と話している。

     写真展は、東京都中央区のギャラリー「ルーニィ・247ファインアーツ」で。13日まで。無料。問い合わせは同ギャラリー(03・6661・2276)へ。ギャラリーのホームページはこちら⇒http://www.roonee.jp/exhibition/room1-2/20170712145510

    榎本さんのコメント

    これらの写真は、息子の事故から11年を経て それでも処分ができなかった
    「遺品」と亡くなった保育所を撮影したものです。
    これは私の「喪失」への対峙でありながら
    「遺品」の私からの解放でもあり
    「遺品」からの私の残りの人生の解放でもあります。

    2017年08月09日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR情報
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP

    目力アップ♪

    疲れをほぐして、イキイキと!